Monitoring the Expression Pattern of 1300 Arabidopsis Genes under Drought and Cold Stresses by Using a Full-Length cDNA Microarray The Plant Cell, Vol.13, 61-72, January 2001 Motoaki Seki, Mari Narusaka, Hiroshi Abe, Mie Kasuga, Kazuko Yamaguchi-Shinozaki, Piero Carninci, Yoshihide Hayashizaki, and Kazuo Shinozaki Introduction 環境ストレスについて 植物の成長は環境ストレスに影響を受ける。 →植物はこれらのストレスに応答し、適応している。 その中でも乾燥・水不足は、植物の成長・作物 の生産に最も厳しい制限要因となる。 →乾燥ストレスは様々な生化学反応や 生理学反応を誘導する。 例えば、光合成には水が必要であり、また気孔が閉じることにより、 ガス交換が妨げられるため、水不足は光合成能力を制限する要因となる。 Introduction 環境ストレスに対する応答 タンパク質は色々な機能を持っており、状況に 応じて合成され、機能している。→何が関わっているのか? ストレス誘導性の遺伝子が転写されることで、 それに対応するタンパク質が合成され、 ストレス耐性が向上する。 この研究では、新たなストレス誘導性の遺伝子 を同定することを目的とした。 Introduction 研究の背景 プロジェクトによって、多くの生物の塩基配列な どが決定されている。 シロイヌナズナでは2000年の終わりに、全塩基 配列が決定された。 今後は、これらのデータベースをもとに機能解析 を行うことが重要である。 Introduction マイクロアレイについて 近年、遺伝子発現の解 析にとって便利な方法と して注目されている。 大多数の遺伝子発現の 比較解析ができる。 (右図を参照) Introduction 目的とした遺伝子 乾燥誘導性遺伝子 (drought-inducible gene) 低温誘導性遺伝子 (cold-inducible gene) DREB1Aの標的遺伝子 (target gene of DREB1A ) DREB1A・・・DRE結合性タンパク質1A。低温に誘導される。 標的遺伝子・・・ある遺伝子によって発現調節を受ける遺伝子。 Method 植物材料とストレス処理 シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana) 22℃、3週間、発芽培地上で生育。 乾燥処理 温度22℃、湿度60%、薄暗い 低温処理 温度22℃→4℃、薄暗い それぞれの処理は2時間、10時間行った。 Method トランスジェニック(遺伝子導入)植物 生育条件は先程と同様 DREB1A遺伝子を過剰発現させた。 (22℃、3週間、発芽倍地上で生育) →つまり、その標的遺伝子の発現量も多くなっていると考えられる。 Method マイクロアレイ解析の流れ (Figure 2) それぞれのRNAを抽出 抽出したRNAを蛍光標識でラベリング (未処理をCy5〈緑〉、処理をCy3〈赤〉) ハイブリダイゼーション ラベリングして得られたプローブをチップ上にスポットしてある cDNA(PCRの生成物)とハイブリダイゼーションをさせる。 チップをスキャナで取り込み、蛍光の パターンを見て、発現量を解析する。 スキャニング後の解析の例 • • • • 赤→処理したほうが発現量が多い。 黄→処理と未処理で発現量に変化はない。 緑→未処理のほうが発現量が多い。 黒→処理、未処理ともに発現していない。 (Figure 1) Method RNAゲルブロット解析 Northern blot 法を用いて、 抽出した全RNAの一部を解析。 →マイクロアレイの正確性を評価するため。 調べたい遺伝子に結合する相補的な配列を持ったDNAあるいは RNAプローブ液(今回はPCRで生成されたcDNA)を加えてハイブリ ダイゼーションを行うことにより、特定のRNAを検出する方法。 Result & Discussion マイクロアレイの正確性(RNAゲルブロット解析) (Figure 3) マイクロアレイのデータは、 RNAゲルブロット解析に おいても妥当性が認めら れた。 マイクロアレイで新たに確認された 6つのDREB1A標的遺伝子の発現は、 乾燥・低温に誘導されており、無ストレス 処理のトランスジェニック植物においても、 過剰に発現していた。 Result & Discussion マイクロアレイで確認された遺伝子の数 (Table 1) 遺伝子の種類 確認された数 そのうち 新しいもの 以前に報告さ れているもの 乾燥誘導性遺伝子 (drought-inducible gene) 44 30 14 低温誘導性遺伝子 (cold-inducible gene) 19 10 9 DREB1Aの標的遺伝子 (target gene of DREB1A ) 12 6 6 →今回のマイクロアレイが、ストレス誘導性の遺伝子を見つけるのに、 適切に機能していることを示している。 遺伝子の発現特性による グループ分け (Figure 4, Table 2) グループに分けられなかった遺伝子―21 Result & Discussion 新たに確認された遺伝子の同定 (Table 2) 相同性検索(BLAST)を利用して、 新しく確認された遺伝子の同定を行った。 遺伝子 相同性検索の結果 FL6-55(乾燥) LEA 76 type I protein (X91919) FL2-56(乾燥) glycine-rich protein 3 short isoform (GRP3S; AF104330) FL5-3J4(乾燥) Borrelia burgdorferi heat shock protein dnaJ (M96847) FL5-2D23(乾燥) T20517 EST FL5-90(低温) β-amylase (AJ250341) Result & Discussion DREB1A標的遺伝子について (Table 3) 多くの遺伝子はDRE、 もしくはCCGAC配列を 持っている。 →これらの遺伝子は、 ABA独立性経路によって 制御されている。 6つの遺伝子はABRE配 列を持っている。 →これらの遺伝子は、 ABA依存性経路によって 制御されている。 Result & Discussion DREB1A標的遺伝子について (Table 3) rd20は、ABREをプロモーターに含んでおり、ABA処理にも誘導さ れることから、ABA依存性経路によって制御されている。 DREB1A/CBF3は、低温特異的な遺伝子発現に関連する配列をプロモー ターに含んでおり、ABA処理には誘導されない。つまり、ABA独立性経路に よって制御されている。 →ストレス誘導性の遺伝子発現が、異なる制御 システムによって制御されている。 Result & Discussion 今後の展望(DREB1Aについて) DREB1Aの標的遺伝子を、マイクロアレイにより 同定することができた。 DREB1A遺伝子の間接的な標的と、直接的な 標的を区別することはできなかった。 この問題点や複雑な相互関係を明らかにするに は、他のアプローチが必要となる。 Result & Discussion その他のストレス誘導性遺伝子 (Figure 4) 乾燥ストレスと低温ストレス、双方に誘導される遺伝子の大半は DREB1Aであった。 しかし、4つの遺伝子はトランスジェニック植物の実験では、発現量 が増えていなかった。 →これら遺伝子はDREB1Aの標的遺伝子ではない →ストレス応答性の遺伝子発現に関連する 新しい配列の存在 Result & Discussion 今後の展望(マイクロアレイ) 遺伝子の発現量の体系的な方法 新しい遺伝子を見つけるために有効 植物ホルモン誘導性遺伝子、組織特有の遺伝 子、標的遺伝子の同定に適用させていく。
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