為替トピックス2月6日号 (PDF/239KB)

2015/
為替トピックス
2/6
投資情報部
チーフ FX ストラテジスト
鈴木 健吾
円安再開を阻む4大要因の賞味期限
 2014年後半に急上昇したドル円相場は、2015年に入って調整色を強める展開となってい
る。この背景には「ギリシャ問題の再燃」「米経済指標の足踏み」「原油価格の下落」「世界的
な緩和競争」の4つの材料があると考えている。
 ギリシャを巡る財政リスクや原油の動向、悪化傾向を示す米国の経済指標等に、リスク回避
ムードが強まる可能性があることは、目先のドル円の調整局面を支援する可能性があろう。
 しかし、総じて上記4つの材料は3月から4月頃にかけて徐々に消化が進んでいき、その後、
年央以降に向けて米利上げや日銀追加緩和の可能性に焦点が移っていく展開を想定してい
る。
 したがって、みずほ証券ではドル円は、「目先調整、年後半上昇」といった展開をメインシナリ
オとしている。目先、上記材料にリスクオフの円高が進む局面では、外貨投資の1つの機会
となるのではないかと考えている。
4つの材料がドル円
の調整局面を演出
2014年後半のドル円相場は、米国の景気回復期待やこれを背景とした米連邦
準備理事会(FRB)の量的緩和終了、加えて日銀による追加緩和等により、8
月の101円台から12月には121円台まで急上昇を演じた。しかし、2015年に入
り、「ギリシャ問題の再燃」「米経済指標の足踏み」「原油価格の下落」「世界
的な緩和競争」の4つの材料がドル円の調整局面を演出しており、この傾向は
2月を通じて継続しそうだ。以下、それぞれの材料について分析したい。
ギリシャ発リスクオフ
は2月がピークか
ギリシャでは、1月下旬の総選挙により反緊縮財政を掲げる急進左派連合
(SYRIZA)を中心とした連立政権が発足。同国のユーロ離脱や債務問題の再
燃に対する警戒感が強まるとともに、リスクオフから円にとっては買い材料
となっている。
現状、債務削減や金融支援をめぐって支援側のトロイカ、すなわち欧州連合
(EU)、国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)との駆け引きが始まって
いる。2月3日には「ギリシャが債務減免要請を撤回し、代わりに既存債務の
一部を新発の債券と交換する計画を提示」との報道が市場に安心感をもたら
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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為替トピックス
す場面がみられたが、翌4日には「ECBがギリシャ国債に対する適格担保規定
の特例措置を解除」との報道がリスクオフにつながっており、引き続き不透
明感が強い。
ポイントは、EU等から受けている金融支援プログラムが2月末に期限を迎え、
それまでに債務削減や構造改革等の条件をクリアし、EUからの追加支援金を
受領する、もしくは2月末の期限を延長することができるかどうかとなろう。
これが獲得できなかった場合、EUからの金融支援を前提としたIMFからの金融
支援も途絶え、国債の利払い等への対応から早ければ3月末頃にも資金不足に
直面する可能性がある。加えて、ECBもこれまで行ってきた緊急の流動性支援
(ELA)の打ち切りに向けて動く可能性が高く、そうなればギリシャ国内の銀
行部門は流動性危機に直面するだろう。
最終的には、金融支援や流動性支援がなければ銀行破たんや国庫の枯渇と
いった深刻な事態を引き起こす可能性があるなかで、3月半ば頃までには、
「ト
ロイカの多少の譲歩に対して新政権が妥協」するという道筋が透けて見える。
しかし、総選挙で過半数の議席獲得の一歩手前まで票を伸ばした急進左派連
合はぎりぎりまで瀬戸際交渉を続ける可能性がある。2月いっぱいは、このギ
リシャ要因はリスクオフを通じてドル円の上値を押さえる要因となりうる。
ギリシャ問題に絡む今後の主な日程
日程
イベント
2/9~2/10
G20
2/12~2/13
EU首脳会合
2/16
ユーロ圏財務相会合
2/17
EU財務相理事会
2/28
EU等による金融支援プログラムの期限
3/5
ECB理事会
出所:各種資料よりみずほ証券作成
米国経済の 腰折れ
懸念は行き過ぎ
14年末以降に発表された米経済指標は軒並み「市場予想」や「前回の数字」
を下回るさえないものが多く、ドルの上値を押さえる要因となっている。額
面通り受け取れば、景気回復ペース減速にともなう米利上げ期待後退のリス
クが連想されるが、実際にはさほど心配してはいない。
米経済は、昨年序盤に大寒波の影響で大幅な減速をみせ、2014年1-3月期の
実質国内総生産(GDP)成長率は年率換算で前期比2.1%減となった。しかし、
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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為替トピックス
これはあくまで天候要因による一時的なもので、4-6月期に回復に転じると、
7-9月期には同5.0%増と反動的な大幅成長を示現した。5%成長といえば新興国
並みの成長率である。潜在成長率で2-3%とされる米国経済が5%もの成長を続
けることは当然に無理であり、10-12月期半ば頃にはさすがにピークを打った
とみられる。したがって、そのピーク時と比較している1月発表の12月経済指
標は、市場の期待も高止まりしている中で、結果的に「さえない」結果が多
くなった。現状が、反動的な高成長の調整局面にあることを考えると、この
傾向は2月を通じて続くだろう。
しかし、これはあくまで反動的な高成長のピークアウトであり、ならして
みれば米経済は巡航速度の成長を継続しているとみられる。市場は発表され
る数字に一喜一憂しやすいが、直近の「さえない」数字をもって米経済の腰
折れを懸念するのは行き過ぎと考えている。実際、1月28日に公表された米連
邦公開市場委員会(FOMC)声明でも景気認識を上方修正している。
年末年始の米国経済指標
指標
実績
市場 予想
前回
市場 予想比
12/30
12月消費者信頼感指数
92.6
93.9
91.0
×
12/31
12月シカゴ購買部協会指数
58.3
60.0
60.7
×
▲0.3%
+0.4%
+1.2%
×
12月ISM製造業
55.5
57.5
58.7
×
12月ISM非製造業
56.2
58.0
59.3
×
▲0.7%
▲0.5%
▲0.7%
×
+25.2万人
+24.0万人
+35.3万人
○
▲0.9%
▲0.1%
+0.4%
×
98.2
94.1
93.6
○
▲3.4%
+0.3%
▲2.2%
×
1/2
1/6
11月建設支出 前月比
11月製造業受注
1/9
12月非農業部門雇用者数 前月比増減
1/14
12月小売売上高 前月比
1/16
1月ミシガン大学消費者信頼感指数
1/27
12月耐久財受注 前月比
1/27
1月消費者信頼感指数
102.9
95.5
93.1
○
1/30
10-12月期実質GDP成長率 前期比年率
+2.6%
+3.0%
+5.0%
×
(注)市場予想はブルームバーグ集計
出所:各種資料よりみずほ証券作成
原油価格の 底入れ
は近いと予想
昨年7月頃に1バレル=100ドルを上回っていた原油価格は、11月の石油輸出国
機構(OPEC)による減産見送りや12月の国際エネルギー機関(IEA)の需要見
通し引き下げ等をきっかけに大きく下落した。背景として「シェールオイル
革命を通じた生産能力の拡大と中国経済減速による需要縮小」といった需給
要因のほか、「産出コストがおよそ50ドル-70ドル程度とされる米国のシェー
ルオイルに対する締め上げ」「ロシアへの経済制裁拡大」「いくつかの油田を
支配下におくイスラム国に対する締め上げ」等の要因が指摘されている。こ
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2015/2/6
為替トピックス
の原油価格の急落を受けて「どこまで下がるかわからない恐怖感」
「ロシア等
の産油国に対する財政懸念」
「エネルギー関連企業の業績悪化懸念」等が高ま
り、為替市場ではリスクオフの円買いが進んだ。原油価格は1月末に2009年
以来の安値を更新後に反発する等、ボラタイルな動きが継続中であり、目先
2月もリスク要因となる可能性がある。
しかし、事態は数ヵ月以内に落ち着いていくだろうとみている。前述の通り
シェールオイルの産出コストからすると、50ドル台はすでに採算割れになっ
ている可能性が高い。この水準が続けばシェールオイルの生産は減少に向か
わざるを得ないとみられることから、需給バランスは改善に向かうだろう。
また、産油国側にしても、収入がどこまでも減少するのを容認できるわけで
もない。アラブ首長国連邦(UAE)のエネルギー相は1バレル=40ドル台でも減
産しないと発言したが、逆に考えればこの水準を下回れば減産が現実味を帯
びる。産油国の「やせ我慢」もこの水準が限界ではないか。また、1986年や
2009年等、過去、原油価格が大幅に下落した場面ではおおよそ下落前の35%程
度が底値となっている。起点を下落前の高値である昨年6月の107ドルをすれ
ば37ドル前後となる。1月に一時1バレル=43ドル台まで下がって以降、下値リ
スクは徐々に限定的となりつつあるとみている。
WTI原油先物価格と油田向け掘削装置(リグ)稼働数
( 週次:2005/1/7~2015/1/30)
(数)
(バレル=ドル)
160
1800
140
1600
1400
120
1200
100
1000
80
800
60
600
40
20
0
05/1
WTI原油先物価格(左目盛)
400
米リグ稼働数(右目盛)
200
0
06/1
07/1
08/1
09/1
10/1
11/1
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
世界的な金融緩和は
日銀が再度リード役
へ
12/1
13/1
14/1
15/1
(年/月)
世界的に緩和の波が広がっている。1月半ば以降だけでもインドやスイス、
ペルー、デンマーク、トルコ、カナダ、ユーロ圏、ロシア、豪州の中央銀行
が金融緩和に踏み切った。原油安がインフレを抑制したことで緩和余地が拡
大しているほか、特に資源国の場合は、商品市況の下落による悪影響への対
応、通貨高抑制、欧州や中国の景気減速に対する警戒感が背景にあるとみら
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
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為替トピックス
れる。円は日銀の積極的な緩和によってここ数年下落してきたが、他国が追
随してきたことで相対的な押し上げ圧力が強まる可能性が高い。
一方で我々は、日銀が2015年度を中心とした時期に物価安定の目標である2%
を達成するため、今年後半にも追加緩和を実施する可能性が高いとみている。
目先は相対的な円高圧力もあろうが、年後半にもアドバンテージを取り戻す
だろう。
ドル円は「目先調整、
年後半上昇」がメイン
シナリオ
このように、「ギリシャ」「米経済指標」「原油」「緩和競争」という4つの材
料がドル円の調整局面を演出している状況だ。ただ前述の通り、ドル円は昨
年8月の101円から12月の121円台まで4ヵ月で約20%もの大幅上昇を示現して
おり、テクニカル的にもファンダメンタルズ的にも一定の調整的な動きはあ
る意味ヘルシーな状況だ。4つの材料はその「いい口実」となった可能性が高
い。
目先、ドル円は、2月を通じて調整的な値動きを想定しているが、3月から4
月には徐々に反発に転じていく展開を想定している。
「ギリシャ」に関しては
当面瀬戸際外交を警戒する必要があるが、3月にはギリシャ国内の混乱回避の
ため妥結に向かわざるを得ないだろう。
「米経済指標」も2月から3月くらいま
で「高成長の反動による調整的な数字」が続くとみられるものの、次第に巡
航速度の成長を反映した数字に収れんしていくとみている。「原油価格」も
徐々に下値が限られてきたなか、今後はもみ合い・横ばいへと推移していく
可能性が高い。
「世界的な緩和傾向」は引き続き相対的に円を押し上げる可能
性があるが、年半ば頃からは日本サイドの緩和の可能性も視野に入るだろう。
総じて上記4つの材料は3月から4月頃にかけて徐々に消化が進んでいき、そ
の後、年央以降にむけて米利上げや日銀追加緩和の可能性に焦点が移ってい
く展開を想定している。したがって、ドル円は、
「目先調整、年後半上昇」と
いった展開をメインシナリオとしている。
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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2015/2/6
為替トピックス
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商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号
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一般社団法人第二種金融商品取引業協会
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