特別企画 - 日刊工業新聞社

特別企画
危ない
汚い
やりたくない
“Danger・Dirty・Dull”仕事はこうして変えよう!
3D 改善のススメ
今回は3D を追放した改善事例の紹介しよう。いまどき3D といえばたいてい「3
D プリンター」
(立体物を表すデータをもとに、樹脂を加工して造形する装置)だ。ま
だまだどこの職場にあるというものではない。しかしここで題材にする3D は職場
にごろごろ転がっている3D。つまり、Danger(危険・脅威)・Dirty(汚い・汚
れ)
・Dull
(退屈・単調)の3つの D だ。この “ 3D” をなくせば仕事がラクになる、安
全できれいな職場になる。キーワードを念頭に職場を見回せば3D がいっぱいある。
そして、
「誰もが困っている K =危険・K =汚い・K =嫌いの3K」でもある。“ 危
ない・汚い・やりたくない ” 仕事を、改善でなくしてしまおう。
いつもの弁だが、改善は独創的でなくていい、モノマネ・ヒトマネ、二番煎じ大
いに結構、三番煎じだって構わない。ゼロから考え出すよりマネしたほうがラクに
早く改善できるし、効果もすぐに味わえる。他人の知恵を使う知恵も知恵のうち。創
意と工夫、知恵を使って “ 他人の知恵を活かす ” 仕事をしよう。うまく改善できると
“ できた ”、“ やった! ” という達成感や満足感を味わえる、仕事も改善もおもしろく
なる。改善が初めての人は、事例を参考に自分の職場の改善に取り組んで成功体験
を味わっていただきたい。1つでも多く得意なことが増えると仕事がおもしろくな
り、毎日が楽しくなるであろう。
齋藤研究室 齋藤 賢明
(イラスト・奥崎 たびと)
筆 者:さいとう まさあき
同研究室代表 著書に「カイゼンアイデア
365」(日刊工業新聞社)
所在地:〒 350-0314 埼玉県比企郡鳩山町楓ヶ丘 4-21-1
TEL:049-296-2834
e-mail :[email protected]
PART1 Danger(危険・脅威)
危険なことも慣れると“危険だ!”と感じなくなる。事故が起きても時間が経つと危険の認識が薄く
なる。慣れや注意で危険を避けるのではなく、仕組み、やり方を変えて危険をなくそう。注意しよう・
気をつけようという精神主義やその場限りの対症療法ではなく、気をつけなくてもいい、注意しなくて
もいいように改善で原因を潰すのがいい。
①壁から飛び出ているコンセントは危険だ!
Danger( 危険・脅威)
バッテリー充電用コンセントは壁から出っ張っている。台車や荷物をぶっつ
改善策と効果
不要なアルミ製パレットを壁に立てかけて固定、コンセントが出っ張らない
けて壊したこともあるし、体をぶっつけて青あざを作ることもある。
ように壁にした。目立つ、ぶつかりにくい、壊さない、怪我しない。不要パ
レットの利用で安全になった。
改善ポイント
コンセントを移動したり埋め込んだりするのは、お金も時間もかかる。第一
手続きが面倒だ。しかし、危険は放置できない。できない理由や事情を並べ
るよりも、いますぐできる方法を考える。見てくれはスマートでないが、と
りあえず危険は回避できる。改善は[自分たちですぐできる方法ですぐにや
る。
]恒久策は管理者に報告や提案・要望して改善依頼しよう。
改善ワンポイント
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すぐにできることを、すぐにやる。明日・後で・そのうち…はダメ。
Vol.61 No.2 工場管理
特別企画 3D 改善のススメ
②夏は熱中症が心配だ
Danger( 危険・脅威)
夏になると現場は暑い、とにかく暑い、ものすごく熱い。水分補給が欠かせ
ない。水を取りに冷蔵庫まで行くのは往復歩行時間がもったいない。仕事も
遅れるのでついつい我慢するから体によくないが、熱中症の危険を考えると
怖い。
改善策と効果
保冷バックにペットボトルと保冷剤を一緒に入れて作業現場に持ち込む。
“水
分補給”
“水がほしいな!”と思ったときに冷たい水がそばにある。すぐ飲
める!
改善ポイント
保冷材は終業後冷凍庫に入れておき、翌朝取り出せば凍っている。何回でも
使える。必要なものはすぐに取れる・使える・戻せるようにしておくのが基
本だ。バックと保冷材は家で使っていないものを利用したので費用はゼロ。
仲間に教えたら使用者が広がった。
改善ワンポイント
工場管理 2015/02
変えられないものを変える。聖域を見直す。
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③作業手袋が大きくて
Danger( 危険・脅威)
作業用手袋は SML の3サイズ。私は手が小さいから S サイズでもブカブカで、
手袋の中で手が踊ってしまい仕事がやりにくい。手袋をしないと危険だけれ
ど、着けていても品物を落としそうになる、これも危険だ。
改善策と効果
「サイズの合わない手袋は能率が悪い。つかみ損ねて落としそうになるので
危険です!」と、マネジャーに相談した。滑り止め付の小さな手袋が標準消
耗品に用意された。安全で快適になった。
改善ポイント
[仕事の基本はホウ・レン・ソウ]困っ
たことは仲間や上司に相談すればたい
ていいい結果が得られる。特に安全に
関わることや、危険をなくすためには
躊躇しないで早く上司に報告・連絡・
相談しよう。自分の安全は自分で確保
する。
改善ワンポイント
気づいたらすぐにやる、放置しない。
④床のテーブルタップは邪魔で危険
Danger( 危険・脅威)
端末用のテーブルタップは作業台の下の床に直置き。しょっちゅう蹴飛ばし
たり踏みつけたりする。プラグが外れたら作業中のパソコンの電源が切れる
から大変だ。まだそうなったことはないけれど心配だし危険だ。
改善策と効果
改善ポイント
結束バンドでタップを机の脚に固定した。余ったコードも始末した。タップ
が壊れる心配がない、作業中に突然電源が切れる心配もなくなった。
共同で使っているものはお互いに無関
心・無責任になりやすい。危険を見つ
けたら積極的に改善するようにしよう。
改善ワンポイント
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苦心の改善には魂があるから愛情が湧
く。定着するし、次の改善に発展する。
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特別企画 3D 改善のススメ
⑤フォークのツメに注意しながら差す
Danger( 危険・脅威)
パレットのフォーク取りは、ツメがパレの先に突き出て近くの作業者に足に
ぶつからないか気にしながらゆっくり差し込む。誰もが「このくらいなら大
丈夫かな?」と、先端を気にしながら差し込む。
改善策と効果
フォークの爪にパレの奥行き位置を白ペンキで線を書いた。ここまではグッ
と差し込んでもパレより先に爪が突き出ない。気持ちがラク、安心。作業も
早くなった。フォークが関係する事故は怪我の度合いが大きいから怖い。線
を引いただけで安心・安全になった。
改善ポイント
“毎回気にする”
、
“いつも注意する”、
“気にしながら○○する”という作
業は改善が必要だ。他人任せにしな
いで!自分から進んで取り組もう。
うまくいくと“やった”という達成
感や充実感が味わえる。
改善ワンポイント
急がなくていい。少しずつやる、着
実にやる。
⑥荷台で台車が踊っている
Danger( 危険・脅威)
運搬用台車は作業が終わったら荷台に乗せる。走行中に動かないようにして
おくけれど大きな揺れで動いて荷物を傷つけることがある。時には壁に当た
ってドカン!と音がする。
改善策と効果
ラッシングベルトで壁面に固定する。動かない。荷物を傷付けない。
改善ポイント
逆さにして床に置くより少し手間がか
かる。改善当初は億劫に感じたが、慣
れればそれほど時間は変わらない。安
全第一の方法にした。
改善ワンポイント
工場管理 2015/02
後始末より前始末が大事だ。予防が安
全でいい仕事につながる。
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⑦蛇口が高温になっているときがある
Danger( 危険・脅威)
スチーム洗浄機の栓は普段は生ぬるい程度だから心配ないが、使用後しばら
くは熱水が出る。知らずに使うと危険だ。
改善策と効果
蛇口のそばで目立つ位置に[熱水注意]の表示を貼った。
改善ポイント
ほかの蛇口は“水が出る”けれど、洗浄機の蛇口は高温のときがある。知ら
ずに触ると危ない。事故があるとしばらくは気をつけるが、“禍は忘れた頃
にやってくる”から危険だ。それに、新
人は危険を知らないから事故発生の危険
性がある。
[注意しなくても大丈夫、知ら
なくて安全]にするのがあるべき姿だ。
改善ワンポイント
やってダメなら戻せばいい。現場の裁量
でやる改善は小回りがきく。
⑧搬送ローラーの位置がずれる
Danger( 危険・脅威)
荷物量が増えると搬送ローラーの距離が足りなくなる。増設用ローラーを足
して距離を伸ばす。使っているうちに振動で位置がずれて荷物が落ちて破損
したり、足に落ちて怪我したりする。
改善策と効果
改善ポイント
ローラーの接続部分双方に穴をあけて U 字型の金具で連結する。振動があっ
てもずれない。落下事故もなくなった。
[ちょっと工夫の金具2個]で解決。数人で作業するから困っても、お互い
に『誰か何とかしてくれないかな?』、
『俺の担当じゃないし…』
、『出しゃば
りって言われるから黙っていよう』、
『先輩がやればいい』…誰も解決しな
い。改善は気がついた人がすぐにやろ
う、仲間の和が心配ならミーティング
に出して一緒に取り組めばうまくいく。
改善ワンポイント
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ミスのあるところ改善の必要あり。
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PART2 Dirty(汚い・汚れている)
特別企画 3D 改善のススメ
「きれい・汚い」は人によって感じ方が違う。個人ごとに基準が違う。最初に汚い職場に配属されると
それが当たり前で、汚さを感じなくなる、ずっと汚いまま何も感じないで過ごす。
“慣れは改善の敵”と
いうが、他の職場と自分の職場を比較してきれいか汚いか客観的に判断しよう。きれいな職場は事故や
けが、不良品の発生が少ない。
①クラフトテープ置き場はいつも乱雑
Dirty(汚い・汚れ)
改善策と効果
クラフトテープとバインダーは作業終了後台の上に戻して置く。置くと言っ
て“放置”した状態で乱雑。“整理整頓”がまったくできていない。
所を壁面にして釘を打ち、置き方・置き場所を決めた。“整頓”が徹底。い
つでもそこにあるから必要な時にはサッと取れる。探さないから“時間の節
約”
、紛失しないから“経費節約”になる。
改善ポイント
“暗黙の了解”は知らない人は守れない。道具は置き場所と置き方を決める、
約束ごとを守る習慣をつくろう。
“5S”
(整理・整頓・清掃・清潔・習慣)は
仕事の基本。5S が仕事をラクにする、事故を防止する、いい仕事ができる、
気持ちよく仕事ができる。
改善ワンポイント
工場管理 2015/02
関心を持つとそこに目が行く。
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②ホコリで手も服も汚れる
Dirty(汚い・汚れ)
改善策と効果
動きの遅い商品は長期間棚に置かれてホコリをかぶる。汚れているから手袋
や作業服が汚れて困る。
動きの遅い在庫品は箱にフタをする。天板サイズに切った段ボールや板で箱
にフタをしてホコリよけ。動きの速い(売れ行きのいい)
商品はホコリをかぶ
る間もなく出庫されるからその必要はない。限られた商品だけ管理すればい
い。改善で洋服が汚れないし、お客様にきれいな商品が届くのでサービス向
上になる。
改善ポイント
“仕事で服は汚れるもの”
、
“汚れた作業衣は仕事している証”などという古
い間違った常識や固定観念を捨てよう。改善でラクにいい仕事をするのが自
分にとっても、会社とお客様にもいいことだ。
改善ワンポイント
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“これで完成”と思うな、常に疑問を持て。
Vol.61 No.2 工場管理