特別企画 儲かる調達への挑戦 (下) 経験・カン・度胸・ドンブリ・お願い “KKDDO” から脱却して、 科学的調達活動に転換せよ! モノづくり工場経営研究所 西水 晃 Ⅳ.科学的調達マネジメントシステムの導入事例 ∼電機機器メーカー C 社∼(続) 料カッティング・プラン (素材形態からの材料取り 5.主なマネジメントシステム機能と 活用推進ポイント 設計)や加工方法が決まる。調達部門としては、発 注側 (買いたい側) で決定された設計図面仕様から、 前項の活動成果が得られた背景には、以下の2 材料コストと加工コストを事前に算出できる「調 つの観点とその推進ポイントがある。 達コスト算出基準」を設定しなければならない。 【観点1:PDCA 観点と推進ポイント】 そして、この基準コストを基にして、仕入先の立 【観点2:「調達7つ道具」観点と推進ポイント】 場に置き換えた“売りたい価格”に変換するため の一般管理販売費率や利益率の標準を設定する (図 【観点1:PDCA 観点(マネジメントサイクル)と 9)。 推進ポイント】 「買いたい価格」の設定 =発注側の設計図面仕様+ (一般管理販売費+利 ⑴ P:買いたい価格の設定 益) =(カッティングプラン+加工方法) (一般管理 + ─調達コスト基準(体系) ─ 外注委託加工品の特徴は、 「買いたい側 (発注側) 販売費+利益) =(材料コスト+加工コスト) (一般管理販売費 + の設計仕様」であるということ。発注側の開発設 +利益) 計者が構想する「図面仕様」により、加工品の材 図9 コスト基準 (コストテーブル)の体系図 加工費 材料費 設 労 設 所要 時間 コスト テーブル カッティング プラン チャージ レート 材料 単価表 板金/樹脂成形/ハーネス (組立) 機械加工/組立配線 労 設備 (工作機械) 別 チャージレート表 設備 (工作機械) 別 標準時間表 業種別 管理「諸比率」 ①材料管理費率 ②設備比例職場共通費率 ③労務比例職場共通費率 ④配賦費比率 ⑤一般管理販売費率 ⑥利益率 66 Vol.61 No.5 工場管理 特別企画 儲かる調達への挑戦(下) 図 10 価格明細見積書 図 11 価格決定折衝の構造 〈調達先:売る側〉 〈調達元:買う側〉 … 1円でも安く買いたい! … 1円でも高く売りたい! スタート (最高値) 見積価格 受注側の水増し算入 (最高値) 予算 (許容値) 査定基準価格 価格分析および 方針で決めた戦略価格 (最低値) 折衝時の提示価格 スタート (目標値) 積算基準価格 双方、歩み寄り 実際総原価+営業利益 (最低値) 受注獲得のための最終譲歩価格 うことを目標に価格交渉を進める。仕入先サプラ イヤーの営業担当者は、 「売りたい価格」以上で売 ることを目標に価格交渉を始める (図 11) 。 発注側バイヤーの買いたい価格と仕入先サプラ イヤーの売りたい価格が一致するのは簡単ではな い。このような取引状況の中、仕入先サプライヤ ーの「売りたい価格」を自分たちの「買いたい価 ⑵ D:買える価格(仕入先の売りたい価格)の把握 格」に導くことを、発注側バイヤーはマネジメン ─価格明細見積書─ ト「C」として取り組むこととなる。 買いたい側(発注側)に「買いたい価格」がある 価格構成費目区分のどの費目区分に差があるの ように、売りたい側(仕入先サプライヤー)にも か。さらには、費目区分ごとのどの費目要素に差 「売りたい価格」がある。双方の価格に対する思惑 があるのか。詳細が捉えられるほど、差額改善を が一致すれば、円満な調達価格交渉を実現するこ 前提としたコストマネジメント活動を有効に進め とができるが、実際にはこの思惑が一致しないの ることが可能となる (図 12) 。 が現実である。 「買いたい側は1円でも安く」 、 「売 りたい側は1円でも高く」が本音である。 ⑷ A:差額要因毎の改善計画と実行 「D」のステップでは、売りたい側の思惑を「価 買いたい価格と売りたい価格の差額の要因を明 格見積書」という形で把握することとなる(図 10) 。 確にし、 『改善可変領域』には改善計画を立案し、 発注側 / 仕入先側の双方にてコスト改善を推進す ⑶ C:「買いたい価格」と“買える価格(仕入先の る。 こ の 際 に は、 生 産 工 学「 IE( Industrial 売りたい価格)”の差額要因解析 Engineering) の観点・視点」が有効である。バイ 発注側のバイヤーは、 「買いたい価格」以下で買 ヤーには、IE の実行力と指導力も求められる。 図 12 機会損失(差額)発見と差額解析の仕組み 差額 (機会損失額) 買いたい価格 加工 管販 利益 工場管理 2015/04 売りたい価格 材料 材料 加工 管販 利益 <差額解析観点と視点> 観点1:材料費 ・材料単価の差 ・材料使用量の差 観点2:加工費 ・工程設計の差 ・加工費率の差 ・加工時間の差 観点3:管理販売費 ・管理販売費率の差 観点4:利益 ・利益率の差 67
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