生殖心理カウンセラーによる がん・生殖外来陪席 :患者、家族の状況と心理支援の可能性 Logo マーク 1,12,13) 小泉智恵 高見澤聡2,12) 平山史朗3,12) 上野桂子4,12) 宮川智子5,12) 奈良和子6,13) 橋本知子7,13) www.***.com 山﨑圭子8,12) 杉本公平9,13) 鈴木直10,13) 森本義晴11,12) 1)国立成育医療研究センター研究所, 2)国際医療福祉大学, 3)東京HARTクリニック, 4)大分県不妊専門相談センター, 5)京野 アートクリニック, 6)亀田総合病院, 7)IVFなんばクリニック, 8)東邦大学, 9)東京慈恵会医科大学, 10)聖マリアンナ医科大学, 11)IVF JAPAN CEO/HORACグランフロント大阪クリニック, 12)日本生殖医療心理カウンセリング学会がん生殖保存カウンセリング委 員会, 13)日本がん・生殖医療研究会カウンセリング小委員会 問 題 結 果 がん患者とその家族が妊孕性温存を考える際にどのような心理支援 が必要であろうか。→ まだ明確なものがない! 1.患者の特徴 (表1、表2、表3の赤色を中心に記述した) 30代の既婚女性で子どもがいない方。 乳がんとわかり、これから手術か、手術は受けたところ。今後、ホルモ ン療法、化学療法を受ける(すでに受けた)だろう。 がんと診断されると、7割の人は不安を感じる(「がんの社会学」に関する 合同研究班, 2003)。 乳がん診断後~数か月間における大うつ病発症 31%(川瀬, 2012)、 同期間におけるPTSD発症 23%(Vin-Raviv, 2013) → このような深刻な精神状態である中で、患者と家族ががん治療開 始前に妊孕性温存を考え、話し合い、実行することは心理的負担が重 いと推測される。 そこで、 JAPCRMと JSFPが 協力して調査へ がん・生殖外来は、妊娠の可能性を残すため、あるいは挙児希望の ため、独りで/配偶者と初めて受診した。 本日の診察では、内容は理解し納得した。 家族も積極的に考えてくれている。 まだ結論に至っていない 表3 患者のがん・生殖外来における状況 受 妊娠の可能性を残したい 診 子どもが欲しい 動 月経がこない 20人 11人 0人 機 体調の改善をしたい 0人 ホルモンサポートをしたい その他 外来での結論 家族やパートナー 1人 1人 結論に至らず 生殖心理カウンセラーががん・生殖外来に陪席し、患者、家族の 状況と心理支援の可能性を検討することを目的とした。 方 法 17人 5人 協力してくれそう 11人 調査方法:9人の生殖心理カウンセラーが、がん・生殖外来での医 師の診察に陪席した。患者の診察開始時に挨拶をし、 陪席許可を得た。陪席拒否された患者はいなかった。生 殖心理カウンセラーは患者と会話したり事前・事後情報 がない中で、診察中の言動から症例報告をまとめて後 日提出した。 陪席した生殖心理カウンセラー 奈良和子(亀田総合病院)、中島美佐子(木場公園クリニック)、宮川智 子(京野アートクリニック)、門田貴子(岡山二人クリニック)、上野桂子 (大分県不妊専門相談センター)、橋本知子(IVFなんばクリニック)、菅 沼真樹(東海大学)、竹内愛(東邦大学)、金澤美穂(神戸松蔭女子大 学)、小泉智恵(成育医療研究センター) 調査内容:症例報告書の項目として、患者の年齢、性別、職業、結 婚状況、パートナーの有無、パートナーとの同居の有無、 子どもの有無、当日の患者の診察同席者、診察回数、 がん治療状況、がん病名、発症時期、治療方針・経過、 がん・生殖外来の受診動機、生殖保存の方針、外来終 了時の患者の様子、家族・パートナーの様子、心理士の 見立て、心理支援の方針案、がん・生殖医療における心 理支援の方針案。 分析方法:定量的データの統計解析。見立てや心理支援の方針案 など定性的データはコーディングし、その出現頻度によ り定量的データとして統計解析をおこなった。 表1 患者の特徴 性別 男性 0人 女性 33人 患者の年齢 (平均, 幅) 35.0歳 25-44 結婚状況 入籍済 20人 パートナーの有無 未入籍でパートナーなし 8人 未入籍 13人 不明 0人 パートナーまたは配偶者あり 24人 不明 1人 なし 31人 あり 1人 不明 1人 職業 有職 13人 専業主婦 1人 学生0人 不明 19人 5人 その他 2人 23人 不明 12人 5人 1人 1人 1人 言動から精神的不安定さが多く認められた患者は45.5%、配偶者・ 家族は18.2%であった(図1)。 当座の心理フォローが必要だとみなされた患者は90.9%、配偶者・ 家族は51.5%であった(図2)。 長期の心理フォローが必要だとみなされた患者は87.9%、配偶者・ 家族は42.4%であった(図3)。 図2 当座の心理フォローが必要だ 図1 精神面の不安定さが認められた 多くある 0% 20% 患者 少しある 40% 不明 60% 45.5 18.2 必要あり 80% 100% 0% 42.4 39.4 20% 患者 3 51.5 必要なし 配偶者・家族 今後の状況による 40% 60% 90.9 51.5 0 不明 80% 0 100% 6.1 3 0 48.5 図3 長期の心理フォローが必要だ 必要あり 0% 必要なし 20% 40% 60% 42.4 不明 80% 100% 0 0 12.1 87.9 患者 配偶者・家族 今後の状況による 0 57.6 0 各症例の心理的問題の特徴をコーディングしたところ、左下の円グ ラフの4要素が抽出された(図4)。心理的問題と患者の不安定さをク ロス集計したところ、「患者自身のメンタルヘルス不良」に属する症例 は不安定さが多く認められた。「現状に適応的」に属する症例は不安 定さが少なかった(表4)。 現状に適応 的 23% 患者自身の メンタルヘ ルス不良 23% 表4 心理的問題と患者の精神的不安定さ 対人関係の 問題あり 19% (人数) 対人関係の問題あり 医学知識の理解不良 患者自身のメンタルヘルス不良 現状に適応的 医学知識の 理解不良 35% 患者の精神面の不安 定さ 少しある 多くある 3 3 6 5 1 6 6 0 考 察 表2 患者のがんの状況 独りで受診 13 患者父 2人 人 2回目 6人 治療前 15人 治療中 8人 当院 9人 乳がん 26人 予定 13人 放射線 予定 7人 ホルモン療法 予定 11人 化学療法 予定 7人 8人 図4 どのような心理的問題を抱えているか 子どもの有無 がん治療施設 がん種 がんの治療 手術 わからない より混乱している その他 配偶者・家族 がん治療の前後か 0人 2.心理士の見立て、心理支援の可能性 調査対象:33人の女性がん患者 がん・生殖外来の受診回数 初診 26人 協力してくれなさそう 5人 内容を理解できていない 調査施設:首都圏にある大学病院がん・生殖外来2か所 当日の患者の診察同席者 0人 内容は理解できているが、納得していない 調査時期:2014年6月~10月 2人 0人 0人 12人 その他の治療 生殖保存不可~困難 その他 外来終了時の患者の様子 内容を十分に理解し、納得した 11人 0人 8人 患者の好きにしてよい 関心が薄い その他 不明 生殖保存の方針 目 的 積極的 情報収集 消極的 患者母 5人 配偶者またはパートナー11 その他 2人 人 3回目以上 1 人 治療後 8人 他院 10人 不明 14人 卵巣がん 3人 その他 3人 既施行 13人 既施行 3人 既施行 5人 既施行 8人 治療中断中 2 人 今後の生殖心理カウンセラーの関わりとして、対人関係やコミュニ ケーションの改善、医学知識を理解するための認知面のアセスメントと 理解しやすい対応の支援、子どもを持つこと、がんと生殖のショックに 対する気持ちへの気づきと整理、メンタルヘルスのアセスメントと危機 介入が必要である。 場面としては、医師の診察の事前面談として患者のニーズとモチベー ションに働きかけたり、診察後の面談で内的葛藤への気づきと整理、今 後の治療生活におけるストレス対処スキル習得が考えられた。
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