慶應義塾大学経済学部【小論文】解答例

慶應義塾大学経済学部【小論文】解答例 設問A 知恵が永遠の真実であるのに対して、情報は現実の多面性に対応して絶えず
変化する。この中間にあるのが知識であり、内部に多様な情報を組み込んで不
断の自己革新を続けながら、全体として統一性をもった知を求めていく。それ
ゆえ知識は知恵や情報と違って複雑な構造を持ち、その効用もわかりにくい。
そこで知識の教授という役割が大学に求められることにもなるのだが、大学教
育の目的は学生に既成の知識を啓蒙的に授けることではなく、自明の普遍的価
値が喪失した現代において、学生自らが知識の創造に参与するという、学び手
の主体性を涵養することにある。自由な学問研究の場、学び方を学ぶ場として
の大学教育が今求められていると考える。 設問B 知識は人間だけが創るものである。たしかに、渡り鳥は行路を知り、ハキリ
アリはキノコの栽培方法を知っているように、ある意味ではすべての生物が何
らかの仕方で独自の「知」を持っているとも言える。だが、それは遺伝的本能
や環境によって決定されたものに過ぎない。それに対して本来「知識」とは、
主体が多様な現実を認識し、思考・整理することによってはじめて形成される
ものであり、それは人間のもつ言語によって可能となる。人間は言語によって
外界や自己の経験を分節し、言語によってそれを他者に伝達・伝承する。こう
した営みによって常に新しさが加わり、誤りを修正しながら創造・蓄積されて
いくものこそが「知識」なのである。