木野親之の経営問答

木野親之 の 経営問答
何を変えて、何を変えないべきか
弊社は観光地で一〇〇年以上続く老舗の茶屋・
ドライブインで、私 は四 代 目で す。老 舗 企 業の
永 続 を 考 えるとき、よく 言われるのは「 根 幹 部 分は変
えてはいけないが、それ以外は時 代に合わせて変 化して
いかないといけない」ということです。しかし、何が「変
えてはいけないもの」で、何が「変えるべきもの」なのか
は、なかなか見極めが難しいと思います。その見極め方
について、基 準となる考 え 方 を 教 えていただければと思
です。
「創業精神」はあいま
老舗であっても、
いなままになっている場 合が多いもので
す。家訓・社訓として明文化しているよ
うな会社は、意外に少ない。九割方は、父
が後 継ぎの息 子に言 うのは、
「 会 社をつ
ぶさないように頼むぞ」とか、
「あまり借
金しないようにしてくれよ」とか、
その程
度のことでしかないのです。
後を継ぐ側にしてみれば、変えるべき
ものと 変 えてはいけないものについて、
はっきり教えてほしいところですね。しか
し、普通はそこまで説明してくれません。
では、どうすればよいか? それは、初
代 、二代 、三 代がどのような経 営をして
の、
あるいはミッションそのものに直接関わ
を成し遂げるためになくてはならないも
そこから、
「ああ、そうか。弊社の使命
はここにあるんだ」というものが見 えて
検証していくことです。
確 かに見 極 めが 難 しい問
題ですね。私も松下幸之助か
るものは、
「変えてはいけないもの」です。
くると思います。その使命にあなた自身
(
きたのか、成功(もしくは失敗)
の原因は
ら、
「 君たちは、変えてはいけ
逆に、
ミッションという目的を成し遂げる
が納得できれば、
つまり、
「この使命を果
います。
代 小売り・サービス業 後継者 )
ないものを変えて、変えなければいけな
ための手段にすぎないものは、
時代や状況
たすために自分の人生を懸けよう」と思
どこにあったのかを、四 代 目のあなたが
いものを変えていない!」と、
よく叱られ
の変化に応じて変えていけばいい。
であるのかもおのずとわかるはずです 。
と
たものです。
二つを見極めるためには、あ
ですから、
なたのお父様やおじい様
二代目、三
使 命を成し遂 げるために不 可 欠なもの
えたなら、
「変えてはいけないもの」が何
その二つを 見 極める基 準は、やはり 、
「何のために会社をつくったのか?」とい
代目から継承した「創業精神」それ自体
う原 点
命)
の中にあると思います。そのミッション
─
つまり 自 分のミッション
(使
は、変えてはいけないのです。
─
を、じっくりと検 証してみることが必 要
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理念と経営 03 / 2015