売上高伸長率上位、フィギュアやグッズ、メイキングホビーがヒット 法人率

東京商工リサーチ
利益 3割減益でも黒字企業が8割
301社の最新期の当期純利益は104億4,300万円(前年同期比33.4%減)だった。利益率の高
いオリジナル玩具のヒット商品が少なく利益を押し下げた。また、海外からの輸入玩具は円
安で仕入価格が上昇し、収益を圧迫した。業績回復を背景に、不良資産処分で特別損失を計
上して減益となった業者もあった。
全体では減益となったが玩具卸301社のうち、245社(構成比81.4%)は黒字を維持した。2
015年3月に国税庁が発表した統計で、赤字法人率が68.2%であるのに対し、玩具卸業の赤字
法人率は18.6%で、玩具卸業界の安定した収益基盤を示した格好となった。
玩具卸売業301社 売上高伸長率別
売上高伸長率
100%以上
10~100%未満
5~10%未満
0~5%未満
▲5~0%未満
▲10~▲5%未満
▲10%未満
合計
最新期
社数
4
51
35
87
37
32
55
301
前期
構成比
1.3%
16.9%
11.6%
28.9%
12.3%
10.6%
18.3%
100%
社数
2
66
23
83
36
30
61
301
構成比
0.7%
21.9%
7.6%
27.6%
12.0%
10.0%
20.3%
100%
売上高伸長率上位、フィギュアやグッズ、メイキングホビーがヒット
売上高伸長率をみると、玩具卸業界のヒット商品への依存がわかる。増収率100%以上は4社
(前年同期2社)、10%~100%未満51社(同66社)で、10%以上は合計55社(前年同期68社)に
とどまった。増収率100%以上の4社は、仮想アイドルグループのフィギュアや携帯グッズのほ
か、米国製の女児向けメイキングホビー、小動物のぬいぐるみのOEM受託、パズルや木製ゲー
ムなどの人気シリーズのリニューアル品などを扱い、大幅な増収となった。この他、社内的に仕
事の効率化と習熟度を高め、前年から新製品の企画数を倍増させ、売上高をほぼ2倍増した卸業
者もあった。
一方、売上高伸長率が5%~10%未満は35社(前年同期23社)、0%~5%未満が87社(同83
社)で、0%~10%未満は122社(構成比40.5%)だった。これは前年同期の106社(同35.2%)
を上回った。また、減収企業は124社(前年同期127社)で、売上高上位と中堅以下の格差が拡大
した。
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まとめ
2015年は「妖怪ウォッチ」や「アナと雪の女王」の人気が落ち着き、これに代わる爆発的な
ヒット商品が不在だった。ただ、アンパンマンやガンダム、シルバニアファミリー、ドラえもん
などの定番玩具の人気が根強いほか、パズルやブロック類などの知育玩具、幼児玩具も堅調で、
ヒット商品の落ち込みをカバーした。
また、北陸新幹線開通に伴う鉄道模型人気や各種キャラクター玩具、ブーム到来のけん玉人気
も後押しした格好だ。爆発的なヒット商品が出なくても玩具卸業界は、売れ筋商品をどう見分け
て取り扱うかの目利き力が問われている。
少子化が進む中で、玩具小売の市場は家電量販店や流通大手7社で全体の6割を占めるほか、イ
ンターネット通販が1割を占め、従来の小売店は市場の2割を占めるにとどまっている。特に、イ
ンターネット通販の台頭で、地方を中心に体力の脆弱な小売店などは倒産や廃業の動きが進んで
いる。こうした玩具小売店の減少は、玩具二次問屋や三次問屋の経営を直撃するだけに、今後は
中小・零細規模の玩具卸業者の淘汰が進む可能性もある。
流通業界を巻き込んだ大手小売店の玩具市場の寡占化が進む一方、インターネットによる無店
舗販売も市場を拡大している。これまでの市場環境が大きく変化する中で、いかに消費者ニーズ
を先取りした商品を開発できるか、卸業界の力量が真剣に問われている。同時に、販売チャンネ
ルとして重要な中小小売店との連携も必要で、今後の玩具卸業界の生き残り策は転換点に差し掛
かっている。
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