解答例3[PDFファイル](2月3日)

2014 年度 前期課程
物理学・電磁気 A コース レポート問題 3 略解
担当教員: 松井哲男
問題 4 (サイクロトロン運動)磁場中を運動する荷電粒子に働くローレンツ力は、
F = qv × B
(1)
で与えられるので、一様磁場中に入射した荷電粒子は、入射方向と磁場の向きをそれぞれ x 軸、y
軸にとると、入射した瞬間に右手系で z 軸の正の方向に力を受け,その軌道はこの図で上の方に
曲げられ、その後、図1のように円運動(サイクロトロン運動)を行って反対向きに飛び出してく
る。問題文にあった図では入射の位置と、飛び出す位置がこの反対方向になっていたので注意。
図 1: 問題 3
円運動の半径(サイクロトロン半径)R は遠心力と磁場から受けるローレンツ力との釣り合いの
条件
mv 2
= qvB
(2)
R
によって決まる。従って、一様磁場中に侵入した速さ v の荷電粒子が磁場中で描く軌道は半径
R = qB/mv の半円で、入射地点から進行方向に対して入射の方向と磁場の向きに垂直になる方向
(この図では上の方)に
2mv
L = 2R =
(3)
qB
移動した場所から入射した方向と反対方向に飛び出してくる。入射してから飛び出すまでにかか
る時間 T は、
πR
πm
T =
=
(4)
v
qB
従って、入射速度 v が2倍になると、距離 L は2倍になるが、時間は変化しない。この周期 T で
向きの変わる電位差を作り、左側にも同じ向きの一様磁場の領域を作れば、荷電粒子をその進行
方向に何回も加速することができる。これが、サイクロトロン加速器の基本原理である。
問題 12 (ループ電流と磁気双極子)ビオ・サバールの法則を用いると半径 R のループ電流の作る磁場は
I
µ0 I
dr′ × (r − r′ )
B(r) =
(5)
4π C
|r − r′ |3
(問題 6 の (5) 式)で与えられる。ここで
∇
を用いると、
B(r) = −
µ0 I
4π
I
1
r − r′
=
−
|r − r′ |
|r − r′ |3
dr′ × ∇
C
1
µ0 I
=
∇×
′
|r − r |
4π
I
dr′
C
1
|r − r′ |
(6)
と変形できるから、
B(r) = ∇ × A(r)
(7)
で定義されるベクトル・ポテンシャル A は
µ0 I
A(r) =
4π
I
C
dr′
1
|r − r′ |
(8)
と取れる。
ここで、積分領域 C は、ループの中心を座標軸の原点に、半径 R の円周を xy 平面にとり
r′ = R(cos θ, sin θ, 0)
(9)
dr′ = R(− sin θ, cos θ, 0)dθ
(10)
と置くと、R は一定であるから、
となり、ループに沿った線積分は θ に関する積分で表わされる。求める磁場の位置 r が r >> R を
みたす遠方にある時、被積分関数は、
µ
¶
1
r · r′
1
≅
1−
(11)
|r − r′ |
r
2r2
で近似できる。最初の項の積分は、
I
Z
′
dr = R
C
2π
dθ(− sin θ, cos θ, 0) = 0
(12)
0
であるから寄与しない。第2項の θ の積分は、r = (x, y, z) と成分で表わして実行すると、 sin2 θ
と cos2 θ に比例した項が残り、
µ0 I R2
(y, −x, 0)
(13)
A(r) =
16π r3
が得られる。(ここまでは講義でやったことの復習)このベクトル・ポテンシャルから定義 (7) を
使って磁場を計算すると、
B(r) =
µ0 I R2
µ0 I R2 3xz 3yz x2 + y 2 − 2z 2
(−
,
−
,
)
=
(−3ˆr(ˆr · iz ) + iz )
16π r3
r2
r2
r2
16π r3
が得られる。ここで、iz = (0, 0, 1) は z 軸方向の単位ベクトルであるが、
I
I
2
m = πR I n
ˆ=−
dr × r = πR2 Iiz
2 C
で定義された磁気双極モーメントを用いると、
B=
µ0
(−m + 3ˆ
r(ˆ
r · m))
(4π)2 ir3
が得られる。[問題中の B の表式で (4π)2 が 4π となっていました。すみません。]
(14)
問題 12 (運動起電力)時刻 t で長方形導体ループ面の垂線と一様磁場のなす角度を θ = ωt ととると、
このループを貫く磁束は、回転軸が長方形の中心を通る (a) の場合、
ΦM (t) = abB cos(ωt)
(15)
であるから、この導体ループに生じる起電力は、
E(t) = −
d
ΦM (t) = abBω sin(ωt)
dt
(16)
この回路の抵抗を R とすると、この回路に流れる電流は、
I(t) =
E(t)
abB
=
ω sin(ωt)
R
R
(17)
このとき外力が単位時間あたりにする仕事は単位時間あたりに発生するジュール熱に等しいので、
P (t) = RI 2 (t) =
(abBω)2
sin2 (ωt)
R
(18)
となる。回転軸を長方形の一辺にとった (b) の場合も、ループ面を貫く磁束の時間変化は (15) で
与えられるので、同じ結果を得る。
問題 15 (変位電流とマクスウェルの方程式)電荷密度 ρ の時間微分は、電場のガウスの法則より、
∂ρ
∂
∂E
= ϵ0 ∇ · E = ϵ0 ∇ ·
∂t
∂t
∂t
一方、アンペールの法則を、
∇ × B = µ0 j + κ
∂E
∂t
と変更すると、電流密度の発散は
µ
¶
1
∂E
κ
∂E
∇·j=
∇ · (∇ × B) − κ∇ ·
=− ∇·
µ0
∂t
µ0
∂t
(19)
(20)
(21)
ここで、恒等的
∇ · (∇ × B) = 0
であることを用いた。従って、電荷の保存則から得られる連続の方程式の左辺に代入すると、
∂E
κ
∂E
∂ρ
+ ∇ · j = ϵ0 ∇ ·
− ∇·
∂t
∂t
µ0
∂t
(22)
となり、これが恒等的に 0 となる条件は、
ϵ0 −
κ
= 0,
µ0
すなわち、
κ = µ0 ϵ0 ,
がみたされれば良い。従って、変形したアンペールの法則(アンペール・マクスウェルの法則)は、
µ
¶
∂E
∂E
∇ × B = µ0 j + µ0 ϵ0
= µ 0 j + ϵ0
(23)
∂t
∂t
となる。ここで、
j D = ϵ0
はマクスウェルの変位電流と呼ばれる、
∂E
∂t