2014 年 9 月の北極海上におけるブラックカーボン粒子の

2014 年 9 月の北極海上におけるブラックカーボン粒子のオンライン測定
○竹谷文一・宮川拓真・金谷有剛・駒崎雄一(海洋研究開発機構)
高島久洋(海洋研究開発機構・福岡大学),Pan Xiaole(九州大学)
大気中に漂うエアロゾル粒子は光を散乱、吸収することによる直接効果や雲形成に関わる間接効果
を通して気候変動へ大きく寄与することが知られている。これらの特性を理解するためには、その組
成、形態、構造など把握することが重要になる。その中でブラックカーボン(BC)粒子は化石燃料や植
物燃料などを燃やしたときに発生する黒色の粒子で、光吸収性を有し、その構造により、光吸収特性
が大きく変化すると報告されている。近年、北極域において、BC がその光吸収特性から、大気を加熱
する果に加え、雪氷上に沈着し、氷融解を促進する可能性が指摘されている。これまで、北極域の陸
上における BC の長期観測は行われてきたが、海上においては、航空機観測によるスナップショットで
の結果があるのみで、海洋上における観測例はほとんどない。本研究では、北極海上での BC 粒子の濃
度、動態把握のため、MR14-05 北極航海でリアルタイム観測を行なった。
コンパスデッキから、チューブを用いて、汎用観測室に大気を導入し、白熱法を用いた単一粒子リ
アルタイム計測装置 SP2(single particle soot photometer)を用い、大気中に存在するブラックカー
ボン粒子の測定を行なった。
自船の排煙の影響を分離して、解析を行なった BC 濃度の時間変化と観測地点の緯度情報を合わせて
下図に示す。MR14-05 航海では、9/5-9/25 の期間、定点(74-45N, 162-00W)で観測を行なっており、こ
の期間の BC 濃度は 1 分平均値で 0.01-20ng/m3 と 3 桁に及ぶ範囲で変動することが確認された。また、
本観測において、0.01 ng/m3 と非常に低濃度の BC の観測にも成功した。定点における平均濃度は 0.85
±0.84 ng/m3 であり、比較的濃度の高い BC が観測された 9/5-6 は、バックトラジェクトリ解析により、
南からの気塊の輸送が示され、大陸の影響を受けているものと考えられた。9/7-25 の期間においては、
空気塊は、北極海上から輸送されており、この結果、この期間における BC 濃度は北極海上のバックグ
ランド濃度であると考えられる。これまでの地上観測(Barrow(71N, 156.6W), USA)における 9 月の BC
平均濃度は約 10ng/m3 と報告されており、
今回の観測の結果、
北極海上の BC は Barrow での観測値より、
一桁程度小さい値であることが示された。講演では、上記の議論に加え、観測された BC の構造や混合
状態に関する議論も行う予定である。
図 BC 濃度の時間変化(UTC)