2011 年東北沖地震以降の日本海溝海側斜面における海底

2011 年東北沖地震以降の日本海溝海側斜面における海底地震観測 ○尾鼻浩一郎・小平秀一・藤江剛・山本揚二朗・高橋努・三浦誠一・佐藤壮・ 中村恭之・山下幹也・末次大輔・杉岡裕子・伊藤亜妃(海洋研究開発機構) 篠原雅尚(東京大学地震研究所)日野亮太(東北大学) 2011 年 3 月に発生した東北沖地震(M9.0)以降、宮城県沖を中心とした日本海溝の海溝海側斜面にお
いては、震源の浅い地震活動が活発化しており(e.g., Asano et al., 2011)、M7 を超える地震が太平
洋プレート内部で度々発生している。これらの地震の多くは正断層型の震源メカニズムを持っており、
東北沖地震の影響によって生じた応力場の変化により活発化したと考えられている。このような沈み
込む海洋プレート内部で発生する正断層地震は、震源が浅いため大きな津波を生じる可能性がある。
その一方、震源域が陸上の地震観測網から遠く離れているため、詳細な震源分布等は明らかになって
いなかった。そこで、海溝海側斜面の海洋プレート内地震活動の詳細を把握する事を目的に、2011 年
の東北沖地震以降、海溝軸および海溝軸海側において自己浮上型の海底地震計(OBS)による地震観測を
繰返し実施してきた(2011 年 5 月-6 月,2012 年 12 月-2013 年 1 月,2013 年 1 月-3 月、2013 年 8 月-2014
年 4 月)。これらの観測では、従来用いられてきた OBS が設置不可能な水深 6000m を超える海溝軸にも、
新たに開発した超深海型の OBS(浅川他、2014)を設置して観測を行っている。観測の結果は、海溝軸周
辺および海溝海側の沈み込む太平洋プレート内部では、正断層型のメカニズムを持つ地震が数多く発生して
いる事を示している。正断層型のメカニズムを持つ地震は、東北沖地震以降は深さ約 40km 付近まで発生して
いるが、東北沖地震前には深さ 20km より浅い部分に限られていた。正断層型のメカニズムを持つ地震の分布
の変化は、東北沖地震に伴って太平洋プレート内部の応力場が変化した事を示していると考えられる。このよ
うな応力変化により、比較的規模の大きなプレート内正断層が海洋プレート内部で発生する可能性が東北沖
地震前に比べて高くなっていると考えられる。なお、本研究の一部は、科学研究費補助金(特別研究促進費)
「2011 年東北地方太平洋沖地震に関する総合調査」および科学技術基礎調査等委託事業「東北地方太平洋
沖で発生する地震・津波の調査観測」の一環として実施したものである。 図:東北沖地震以降、2013 年 1 月までに実施された 3 回の OBS 観測で得られた宮城沖日本海溝海溝軸周辺の震源分布と震源メカ
ニズム(Obana et al., 2012, 2013, 2014)。☆:2011 年東北沖地震震源。+、▽、△:3 回の観測(2011 年 5 月-6 月、2011 年 8
月-10 月、2012 年 12 月-2013 年 1 月)それぞれの OBS 設置点。左図破線内の震源と震源メカニズムを右図の断面に投影。