地球環境統合モデルによる 20世紀再現実験に向けて 国立環境研究所 野沢 徹 マルチウ@K-1での成果の概要 既知の問題点と今後の課題 20世紀の気候再現実験の必要性 モデルの気候再現性を改善するため 気候値だけでなく、気候変化に対しても確認 モデル結果の信頼性を高めるため 温暖化予測結果に対する信頼性向上を意識 様々な外部強制による影響を調べるため 外部強制の相対的な重要性を評価できる 観測された気候変化の機構解明に役立つ http://www.cru.uea.ac.uk/cru/info/warming/ より引用 考慮した外的な気候変動要因 自然起源の気候変動要因 太陽エネルギーの変動 Hi-CGCM 大規模火山噴火に伴い成層圏まで到達したエアロゾルの変化 OBS. 人為起源の気候変動要因 温室効果気体(二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、ハロカーボ ン)濃度の増加 1970年代半ば以降の成層圏オゾン濃度の減少 人間活動に伴う対流圏オゾン濃度の増加 Mid-CGCM 工業活動に伴う二酸化硫黄(硫酸エアロゾルの前駆物質)排出 量の増加 人間活動に伴う煤などの炭素性エアロゾル前駆物質排出量の 増加 土地利用変化 地上気温トレンドの地理分布 観測データ 1901-1950年 1941-1980年 1971-2000年 モデル結果 1901-1950年 1941-1980年 1971-2000年 実験設定一覧 Natural forcing v. = historical variation ↑= increase in emission Anthropogenic forcing Exp. Name Solar v. Volc. v. FULL ✓ ✓ ✓ NTRL ✓ ✓ SOLR ✓ VLCN Sulf.↑ Carb.↑ ✓ ✓ ✓ ✗ ✗ ✗ ✗ ✗ ✗ ✗ ✗ ✗ ✗ ✓ ✗ ✗ ✗ ✗ ANTH ✗ ✗ ✓ ✓ ✓ ✓ GHGS ✗ ✗ ✓ ✗ ✗ ✗ OZON ✗ ✗ ✗ ✓ ✗ ✗ ARSL ✗ ✗ ✗ ✗ ✓ ✓ AEFX ✓ ✓ ✓ ✓ ✗ ✗ CEFX ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✗ ✓: Considered GHGs↑ Ozone v. ✗ : Not considered Statistical Detection & Attribution 最小自乗法による線形重回帰分析 with Optimal Fingerprinting 観 測 人為強制に 対する応答 自然強制に 対する応答 βi > 0 (不確実性の幅も含めて) ⇒ 有意なシグナルを検出 βi が1を含む ⇒ 検出されたシグナルは観測と整合的 Y X1 X2 Y = b1(X1+u1) + b2(X2+u2) + v Y:観測された気候変化 Xi:GCMにより得られた個別の強制に対する応答 bi:スケーリングファクター ui:アンサンブル平均に対するノイズ(内部変動) v :気候学的なノイズ(内部変動) コントロール実験 Mid-CGCM OBS. コントロール実験の内部変動は観測と整合的 20世紀全体での解析 観測された地上気温の時空間変動を 1.GHGに対する応答 2.GHGを除く人為要因に対する応答 3.自然要因に対する応答 で重回帰する GHGがやや過小評価ぎみであるものの、 いずれのシグナルも有意に検出可能、 かつ、観測とも整合的である 20世紀前半における 昇温傾向の要因推定 ANTH-GHG GHG OBS. TOTAL Nozawa NTRL et al., (2005) ANTH published in GRL 20世紀前半における 昇温傾向の要因推定 Shiogama et al., (2006) submitted to GRL 20世紀中盤の気温変化の要因推定 GHG+O3 +NATURAL +SUL. +SUL. +CARB. +CARB. +CARB. Nagashima et al., (2006) +SUL. in press for GRL 既知の問題点 • ENSOのシグナルが小さい – 内部変動に影響 • エアロゾルのチューニングに問題あり – 炭素性エアロゾル以外はすべて過小評価傾向? – ダストの時空間変動がおかしい(黄砂が秋に最大) • 陸域平均降水量に長期減少傾向 – 間接効果パラメタリゼーションに問題あり? • 他にも細かい設定ミス、バグ等あり 地球環境統合モデルの利点 • CO2変動等に起因する内部変動が表現可能に – より現実的な内部変動の情報が得られる • オゾン変動がinteractiveに取り扱える – 太陽変動による気候影響を陽に表現可能に – 気温へのフィードバックを陽に評価 • 信頼性の高いエアロゾルチューニング – エアロゾルの気候影響をより現実的に考慮可能 • 大気環境変数の長期変動解析 • などなど… 地球環境統合モデルによる 20世紀再現実験の利用価値 • 様々な気候変動を(現状よりもさらに)現実的に 表現している気候モデルを用いることにより、「近 年の温暖化傾向は人間活動に起因している」こと を、より高い確度で示すことが可能である • 森林・海洋におけるCO2の発生・吸収源推定で の利用(インバージョンの初期値等) • 東アジア域を対象とした亜大陸規模での過去の 環境変動再現実験での利用(境界条件など)
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