平成 26 年度 全国学力・学習状況調査 大津市 結果と考察の詳細 大津市教育委員会 結果と考察の詳細 〔教科に関する調査〕 ◇小学校(国語) ◎概要 「知識」「活用」に関する問題ともに、全国平均並みであった。 「知識」に関する問題では、伝統的な言語文化に関する事項の「故事成語」に関わる設問 が、選択式の問題形式にもかかわらず正答率が低く、言語事項に関する指導法を充実させ る必要がある。 「活用」に関する問題では、 「立場を明確にして、質問や意見を述べること」や「分かっ たことや疑問に思ったことを整理し、それらを関連付けながらまとめて書くこと」に課題 があった。話し合い活動の会話文や付箋に書かれたメモなどの情報から、条件に合わせて 記述式で答える問題形式は、これまでも本市の課題となっている部分である。様々な資料 に表された情報を正しく読み取ったり選んだりして、目的に応じて的確に記述する活動の 場面を数多く設定し、書く力の積み上げを図る必要がある。 ■「知識」に関する問題 「知識」に関する問題は、全国と比べて大きな差は見られなかった。昨年に比べて無解 答率も低く、最後まであきらめずにねばり強く取り組もうという意識の高まりが感じられ た。その中で、設問1,2,3の問題は、全国でも本市でも正答率が低く、全国と共通の 課題が浮き彫りになった。 1の「漢字を正しく読む、書く」の問題では、書き問題の「祝う」が6割に満たない正 答率であった。偏とつくりによく似た形のものが多くあるため、混同していると考えられ る。読み問題の「勢い」は「いきよい」と誤答 している児童が多いと考えられるが、国の分析 結果からもそのような報告がなされている。音 声言語として聞き覚えた言葉を漢字として学習 した際に、意味を理解せず修正しないまま覚え てしまっているのではないだろうか。漢字の学 習では、書くことだけでなく、正確な平仮名表 記ができるように力を付けていきたい。読み問 題の「勢い」と、書き問題の「予防」は過去に も出題された漢字であるが、以前よりも正答率 が上がっている。 2の「故事成語の意味と使い方を理解する」 問題では、6割に満たない全国をさらに下回る 結果となっている。「五十歩百歩」「百聞は一見 にしかず」は故事成語の中でも日常生活でよく 使用されるものとして出題されている。しかし、 子どもにとっては身近なものではなく、意味を 1 正確に理解し、その使い方を捉えることができていないということが分かった。故事成語 は4年生の「ことわざブックを作ろう」の単元で触れられているが、主教材ではことわざ が主に取り上げられており、故事成語は巻末の付録に記載されているだけである。また、 8の「国語辞典を使って、言葉の意味と使い方を理解する」問題では、7割を超える正答 率であったが、国語辞典や教科書・資料を効果的に活用し、様々な言語文化に触れさせる ことで豊かな語彙力や言語感覚を育てていく必要がある。 4の「表現の仕方を捉える」問題や、6の「複数の事柄を並列の関係で書く、仮定の表 現として、適切なものを捉える」問題は、7割を超える正答率であったが、3の「情景描 写の効果を捉える」問題は、全国よりは上回ったものの6割に満たない正答率であった。 会話文を含む設問を理解することができなかったということも考えられるが、日常生活で は直接的な表現を使うことが多く、情景描写などによって表現の効果が高まることに気付 いている子が少ないのではないだろうか。構成や表現の効果を明確にして物語を創作する ためには、物語を読むときに、情景描写などを通して暗示的に心情が表現されていること を取り上げて指導したり、子どもたちが創作した物語について、視点を明示した相互評価 をさせたりして、多様な表現方法を身に付けていくことが大切である。 7の「話し合いの観点に基づいて情報を関係付ける」問題は、昨年度に比べ、正答率が 全国を上回り、場面設定が学校生活に密着していること、情報が図式化されていることで 理解がしやすかったと考えられる。 ■「活用」に関する問題 ③ ② 1は、目的や意図に応じて計画的に討論 することができるかどうかをみる問題であ る。三の「立場を明確にして質問や意見を 述べる」問題は3割に満たない正答率であ った。 これは、①「手書きの立場」という制限 の中で、 「質問か意見」を選ぶ ②大野さん の言葉を「 」を使って 25 文字以内で引用 する。 ③「80 字以上 100 字以内」の字数 制限に合わせて書く、という多くの条件を 満たすことが求められている。 「引用して書 く」とは、自分の考えの根拠を明確にした り、具体的な例を示したりする際に、本や 文章、話の内容などから抜き出して自分の 表現に取り入れることである。具体的な指 導としては、原文や話の内容を正確に引用 することや自分の考えとの関係を明確にす ることが大切である。適切な量を引用し、 かぎ(「 」)の使い方や、出典を明記する 1 三 ① 2 ことなどを具体的に指導することも大切である。 2は、科学に関する本や文章などを効果的に読み、分かったことや疑問に思ったことを 関係付けながらまとめて書くことができるかどうかをみる問題である。二の「分かったこ とや疑問に思ったことを整理し、それらを関連付けながらまとめて書く」問題では、二文 を一文にして書くなど、条件が多岐にわたったことが正答率の低さにつながったと考えら れる。前出の1の三同様、設定された条件に合わせて書く活動を積極的に取り入れるとと もに、設問を注意深く読んで、問われていることに正しく答える力を付けさせることも必 要である。 具体的な事例を 「例えば」を使っ てまとめる 文と文をつなぐ方法を考え 二文を一文にまとめる 3は「二つの詩を比べて読み、内容や表現の工夫を捉える」問題で、共通点や相違点に 着目して自分の考えを書くことなどを求めている。一の二つの詩を比べて読み、表現の工 夫を捉える問題では、正答率が高く、自分なりの詩の解釈はできているといえる。しかし、 グループでの交流場面において、山田さんの詩の解釈を問う二の問題では、全国平均は上 回ったものの正答率が低く、人の意見を理解することに課題があると考えられる。さらに、 三は、二つの詩を比べて読み、自分の考えを書くことができるかを問う問題である。他の 記述問題に比べて条件が少ないが、正答率が低く無解答率が高いのは、時間が足りなかっ たためと推測される。限られた時間の中で提示された条件を満たして書くことに慣れる必 要がある。授業の中で、教材文だけでなく、同じ作者や同じ題材の作品を比べて読む活動 の中から児童自身がすぐれた表現に気づくようにするとよい。そのためには並行読書の充 実をはかる必要がある 全般的に、二つ以上の文章を読み比べて考え、話し合いで意見を整理しながらまとめる 3 などの場面設定を理解することを求める出題が大半を占め、実際の生活場面の中で生きて 働く力を求められていることが分かる。表現の工夫や文章の捉え方を基にしてそれぞれの 文章の特徴を理解し、自分なりに解釈することができるようにするなど、活用力が付くた めの授業内容を構成する必要がある。 ◇小学校 算数 ◎概要 「知識」「活用」に関する問題ともに、全国平均並みであった。 「知識」に関する問題では、全国平均並みもしくは、それを上回るものもあった。しか し、計算問題や式を選ぶ問題で、全国平均を下回るものが見られた。量的感覚を意識した り、具体物や図を使って課題を解決する力を付けたりすることが必要である。 「活用」に関する問題では、半数を超える問題で全国平均を上回る結果であった。日常 生活に結び付けて考えたり、考えを説明したりすることが少しずつ身に付いてきている。 論理的に考える力を付ける活動を取り入れていくことは、引き続き必要である。 ■「知識」に関する問題 〈数と計算〉領域 計算問題はおおむね理解できている。 1の(3) 「小数第1位までの減法の計算をする」問題では、9-0.8 を 0.1 と解答して いる児童がみられた。これは、位をそろえて計算することができなかったこと、0.1 と答 えて「おかしい」と気づかなかったことが原因と考えられる。量感を意識し、機械的に計 算しないように指導する必要がある。 2の「割合」の問題では、80 ㎝の 1.2 倍 を 80+0.2 と答えたり、80 ㎝の 0.4 倍を 80 -0.6 や 80÷0.4 と解答したりしている事 例がみられた。これは問題にあげられてい る図と式とが結び付いていないことが原因 と考えられる。2年生のかけ算の学習から、 1あたりの基準量に対して何倍ととらえる 考え方を意識することや、数直線を学習す る中学年から基準量と比較量の関係を的確 に捉えることなどを重視する必要がある。 多い誤答 〈量と測定〉領域 具体物や図をみて数量の関係を把握する 力は付いているようである。 4の問題で 8 ㎡に 16 人いるときの 1 ㎡あ たりの人数を 8÷16 と解答している児童が 多い。これは、図と式を結び付けて考えら 多い誤答 4 れないことや、 「1 ㎡あたり」の意味が理解できていないことが考えられる。具体物や図を 使って問題を考える学習を多く取り入れているが、その考えを立式につなげ、常に図と式 を関連させて問題を解く学習が必要である。また、式の意味を正確に読み取る力を付けさ せるためには、指導の場面で式に単位を付け、式の意味を明確にするなどの工夫が必要で ある。単位量あたりの大きさは児童にとって難しい学習の1つである。今後も、具体物や 図を使って量感覚を養う学習指導を心がけるようにしなければならない。 〈図形〉領域 6の「作図に用いられている図形の約束や性質を理解する」問題は、平行四辺形の作図 が、平行四辺形のどの特徴を使って作図しているかを問うている。正答率は、全国平均よ りはやや高いが6割弱であった。問題では、三角定規を使わずコンパスを使っていたため であると考えられる。操作活動として、コンパス等の三角定規以外の道具も使用している が、コンパスは円を描く以外に同じ長さを写し取ることもできる道具であることを、さら にていねいに指導する必要がある。三角形の作図や図形の合同などでも取り上げられるよ う意識したい。 〈数量関係〉領域 どの問題も8割を超える正答率で、ほぼ理解できている。 1の(5)は 100-20×4 の計算問題、8は 100-20×4 の式の意味を選択する問題であ る。結果として、誤答は計算問題のほうが多い。このことから、計算式だけを見るよりも、 説明文から場面を思い浮かべて式を見るほうが理解しやすいということが分かる。具体的 な場面と式とを結び付けたり、式から問題を作る活動を取り入れたりすることが大切であ る。 ■「活用」に関する問題 〈論理的に表現する力を培うこと〉 1の(2) 「示された計算のきまりを基に計算方法を記述する」問題では、正答率は全国 平均をやや上回っているものの、全体的に正答率が低く課題が見られる。(1)「示された 場面から計算結果を見通し、筆算する」問題の計算は多くの児童ができているにも関わら ず、 (2)では、その計算のきまりを基にして、式や言葉で説明することが不十分となって いる。「数と計算」領域では計算の練習に終始するのではなく、式を多面的に見る活動や、 目的に応じて計算を工夫する活動を取り入れていくことが大切である。 5 3(3) 2の(1) 「示された場面から基準量と 比較量を捉える」問題、 (2) 「最大値に着 多い誤答 目して棒グラフが枠内に表すことができ ない理由を記述する」問題では、グラフを 描いたり、数値を読み取ったりすることは できるものの、 (3) 「全体と部分の関係を 示すために用いるグラフを選択する」問題 では、目的に応じて適切なグラフを選ぶこ とができずに正答率が低くなっている。グ ラフの特徴やよさを明らかにし、目的に応 じてどのグラフを用いればよいかを考え させる活動を取り入れることが大切であ る。 3(3) 「示された情報を基に必要な量 と残りの量の大小を判断し、その理由を記 述する」問題では、答えはわかっているが、 その理由を説明できずに誤答になってし まっている傾向が見られた。具体的には、 10 人分で 2 リットル使ったので、30 人分 では 6 リットル必要になり、1 リットル残 るということを、図では理解しているが言葉で説明することができなかったようである。 比較する対象が不明確な説明を基に、説明として何が不足しているかを理解し、問題に応 じた説明ができるような活動を取り入れる必要がある。 4は音楽のリズムの問題で、算数の学習内容ではあまりなじみがないものであった。 (2) 「公倍数に着目して記述する」問題では、場面の状況は理解していても適切な用語を用い 算数の用語を使って説明 6
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