桂高校校舎への思い出作文 優秀賞 「ハートのピースの木の下で」 2年1組 奥脇開斗 桜の花が咲き乱れ、その花が美しく宙を舞っていた4月。校舎とその花びら一枚一枚が 僕の背中を優しく押してくれたようなある一時を、私はいつまでも忘れません。 期待や不安などたくさんの思いを胸に入学した桂高校。まだ右も左もわからない私達に とってこの校舎とは、とても大きく凛々しくさらに不安を誘うようなそんな存在でした。 慣れない場所、そして新たに出会う友達、その全てに私は何か違和感を感じていました。 しかし、それは時間が解決してくれました。ここで出会った新たな友達ともすぐに打ちと けることが出来たり、少しずつこの場所にも慣れてきたりと、いつしかこの校舎はまるで 私達を温かく包み込んでくれているようでした。 それからあっという間に、もう二年という月日が過ぎようとしています。春には窓から 見える満開の桜を一望することができ、夏には隣を流れる桂川のせせらぎに耳を澄ませ、 秋には富士山や辺りの山々の紅葉を眺め、冬には白く広いグラウンドを駆け巡る。こんな 幸せな日々を私達は、何の思いもなく当たり前に過ごしてきました。今思えば、こんな贅 沢な場所に、当たり前に生活できることは本当に幸せだと思います。 しかし、それゆえにこの校舎が壊されてしまうことを初めて耳にした時は、私は、ただ ただ戸惑うばかりでした。この思い出がたくさん詰まったこの校舎が取り壊されてしまう。 その言葉を何度も何度も自分の中で繰り返し、しかし何にも出来ない自分にがっかりし、 とても複雑な気持ちでした。ただ、そんな自分の気持ちを晴らしてくれるような新たな取 り組みが、その時にはすでに始まっていたのです。それが、放送部を中心に行われている 「かつらハートプロジェクト」です。無くなってしまう校舎と一緒に私達の思い出も一緒 に失ってしまっていいのか。せめてこの校舎でかけがえのない時間を、これからも永遠に 伝えよう。こうした活動が、私の気持ちを大きく変えいつしか、無くなってしまう桂高校 に誇りを持てるようになったと思います。全校生徒一人一人がこの桂高校を愛し、気持ち を一つにすることが出来た。だからこそ「ハートのピース」という私達の財産ともなる歌 が完成したのではないでしょうか。私はあの歌が大好きです。 たくさんの思い出が詰まったこの桂高校。そして無くなってしまう校舎。とても寂しく 悲しい思いでいっぱいです。ただ、この校舎が私達に与えてくれたものは、言葉では言い 表せないほど大きなものです。ここで得たものは、これから歩む道の中で大きな支えとな り、必ず活きてくるはずです。この校舎で過ごせる残りの時間に感謝し、桂高校に何か一 つでも恩返し出来るようにしたいです。ハートのピースの木の下で、この校舎と笑って別 れを告げられるように。 -1-
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