パーキンソン病とは - ReQuip.jp

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Par
t
監 修
運動症状および
くすりに関するQ&A集
独立行政法人 国立病院機構
仙台西多賀病院
院長
武田 篤
先生
パーキンソン病
Part
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Q&A
運動症状および
くすりに関するQ&A集
目 次
パーキンソン病とは
パーキンソン病の四大症状(代表的な症状)
Q1
文章が書きづらくなっています。
Q2
足がだるい、足をすって歩く、歩幅が小さくなるなどの症状は、
パーキンソン病によるものでしょうか。
Q3
転びやすいのはどうしてですか。
Q4
声が出にくく、言語障害があります。
Q5
パーキンソン病のくすりには、どのような種類がありますか。
Q6
だんだんくすりが効かなくなってきたのですが、大丈夫でしょうか。
Q7
くすりが効いているときと効かないときがあります。
Q8
低タンパク質の食事がよいと聞きました。
Q9
くすりの飲む量が最近多くなり、気になります。
Q10 くすりを飲んでもパーキンソン病は進行するのでしょうか。
Q11 入院することで、もっとよくなるのでしょうか。
Q12 手術はくすりを飲むよりも有効なのでしょうか。
手術は何歳くらいまで可能でしょうか。
Q13 おすすめの運動療法などありますか。
Q14 パーキンソン病が治ると銘打った健康食品や本がありますが、
効果はあるのでしょうか。
Q15 季節によって症状が悪化することがありますか。
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パーキンソン病とは
パーキンソン病は、1817年にジェームス・パーキンソン氏に
よって最初に発見された病気で、脳の黒質という部分が障害さ
れる神経変性疾患です。主な症状はいずれも体の動きに関連し
たもので、四大症状として、振戦、固縮、無動・寡動、姿勢反射障
害があります。統計により異なりますが、日本では人口10万人あ
たり約100~150名、約15万人の患者さんがいると推定されま
す。高齢者に多い特徴がありますが、若い人でも発症することが
あります。
基本的には進行性の病気ですから、長い経過の中では、
さま
ざまな運動症状や自律神経症状、精神症状などが出てくること
があります。
しかし治療薬も大きく進歩し、通常の寿命をまっとう
することができます。現在もなお世界中で新薬が研究・開発され
ています。主治医の指示に従い、希望を持って、明るい気持ちで
日々の生活を楽しむ心構えがとても大切になります。
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パーキンソン病の四大症状
(代表的な症状)
振戦
(手足がふるえる)
固縮
(筋肉がこわばる)
無動・寡動
(動作が遅くなる)
姿勢反射障害
(倒れやすくなる)
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Q
1
A
文章が
書きづらくなっています。
パーキンソン病には、筋肉がこわばる、あるいは動き
が遅くなるという特徴があります。
このため手の運動症
状に支障をきたし、文章が書きづらくなっているのかも
しれません。
また、だんだん字が小さくなっていく
「小字
症」がみられることもあります。
対策としては、現在飲んでいるくすりの調整を行いま
す。L-ドーパ以外にドパミンアゴニストやMAO-B阻害薬
の併用が有効である場合があります。
また、字を書くと
きに大きく書くように心がけたり、一字一字声に出しな
がらリズムをとって書くと、少し書きやすくなります。詳し
くは主治医に相談してみましょう。
3
Q
2
A
足がだるい、足をすって歩く、
歩幅が小さくなるなどの症状は、
パーキンソン病に
よるものでしょうか。
パーキンソン病による症状だと考えられます。広いと
ころでは歩けるのに狭いところになると歩けなくなった
り、足が地面に張り付いたように離れなくなる「すくみ
足」や、歩いているうちに歩幅がだんだん小刻みになる
「小刻み歩行」などがあります。足に神経を集中して、足
を持ち上げてゆっくりと、
そして かかとから地面に着くよ
うに心がけて歩いてみてください。
また、L字杖を使うと
一歩目が出しやすくなることがあります。なお、“またぐ”
ことを意識して床に等間隔にテープなどを貼ったり、後
ろに一歩下がってから前に一歩踏み出したりするなどリ
ズムをとって歩くように意識するのも効果的です。
L字杖
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Q
3
A
転びやすいのは
どうしてですか。
パーキンソン病は、体を動かすときに神経に命令を
送る物質(ドパミンといいます)が脳内で減ってくるため
に、手がふるえたり、動きが遅くなったりする病気です。
最初の一歩が踏み出しにくくなる、体のバランスが悪く
なる、方向転換が難しくなる、歩いているうちに体が前
のめりになるなど、歩行が困難になってくるのも、
この物
質が減ってくるためです。急に電話や呼び鈴が鳴った時
など、急いで対応しようとすると、かえって動きが悪くな
り転倒しやすくなります。
どうしても足が前に出ないとき
は、焦って無理に足を出そうとせず、気持ちをリラックス
させて姿勢を正したうえで、一呼吸おいてから足を出す
ようにするとよいようです。
ら!
してか
深呼吸
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Q
4
A
声が出にくく、
言語障害があります。
喉の声を出す筋肉がこわばることにより、声を出しづ
らくなっているのかもしれません。
くすりの量を調整する
ことでよくなることもありますので、主治医に相談してみ
ましょう。
また、背筋を伸ばし、鼻からゆっくりと大きく息を吸い
込み、次に声を出しながら口から息を吐き出して、大き
な声を出す練習をするとよくなることがあります。
カラオ
ケや詩吟を楽しんだり、家族や友人と大声で会話するよ
うに心がけるのも大変よいリハビリになります。
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Q
5
パーキンソン病のくすりには、
どのような種類がありますか。
A
主なくすりとして9種類あります。
それぞれに特徴があ
り、患者さんの症状に合わせて、
これらのくすりを組み合
わせて治療していきます。
ドパミンアゴニスト
抗コリン薬
(ドパミン受容体刺激薬)
アーテン、パーキン、
アキネトン、
トリモール、ペントナ
非麦角系ドパミンアゴニスト
[ 経口徐放性 ]
レキップCR、
ミラペックスLA
ドロキシドパ
[ 経口速放性 ]
レキップ、
ビ・シフロール、
ドミン、
アポカイン
(ノルアドレナリン補充薬)
ドプス
[ 貼付剤 ]
ニュープロ パッチ
MAO-B阻害薬
麦角系ドパミンアゴニスト
パーロデル、ペルマックス、
カバサール
エフピー
ドパミン補充薬
COMT阻害薬
(L-ドーパ製剤)
ドパゾール、
ドパストン、
イーシー・ドパール、
ネオドパゾール、
マドパー、
ネオドパストン、
メネシット
コムタン
L-ドーパ賦活薬
トレリーフ
塩酸アマンタジン
(ドパミン放出促進薬)
シンメトレル
アデノシンA2A受容体拮抗薬
ノウリアスト
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Q
6
A
だんだんくすりが
効かなくなってきたのですが、
大丈夫でしょうか。
治療を開始したころは調子がよかったのに、数年たつ
と体が動きにくくなったり、
くすりの効かない時間帯が
出てきたりします。
このような症状があらわれた場合は、
主治医に相談しましょう。
くすりの量を増やしたり、追加・変更するなど調整する
ことにより多くの場合は改善します。
しかし、
くすりは症
状を軽減させますが、パーキンソン病の進行を完全に
とめるものではないことも事実です。
できるだけ治療の
効果を持続させるためには、
くすりの量や内容について
よく主治医と相談のうえで、積極的に外出したり運動を
するなどのリハビリテーションを併せて行うことをおす
すめします。
くすりを調整して
リハビリテーションを
行いましょう。
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Q
7
A
くすりが効いているときと
効かないときがあります。
L-ドーパを長期間飲んでいると、一日のうちに調子の
良いときと悪いときの変動がみられるようになることがあ
ります。
これをウェアリングオフ現象やオンオフ現象とい
います。
また、
くすりが効いているときを中心に不随意運
動(ジスキネジア)が生じることもあります。
こうした問題
症状が生じた場合、
くすりを飲む時間帯や回数を変えた
り、他のくすりを追加することによって大部分の場合は改
善します。一方で、L-ドーパを飲んでも効果があらわれな
かったり、効果があらわれるまでに時間がかかる場合は、
L-ドーパを空腹時に飲んだり、
またレモン水※に溶かして
飲むのもよいでしょう。主治医に相談しながら、
ご自身の
症状に合ったくすりの飲み方を見つけることが大切です。
※ 酸性の飲み物と一緒にL-ドーパを飲むと吸収が早くなり効果が強く感じられ
ることがあります。
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Q
8
A
低タンパク質の食事がよいと
聞きました。
パーキンソン病の患者さんの中には、肉や魚などの
タンパク質を多く含む食事をとった直後は、
くすりの吸
収が悪くなり効果が十分に発揮されない方がいます。
そのため、本来は食後に飲むべきくすりを食間や食前
(食事の約20~30分前)に飲んだり、食事中のタンパ
ク質を制限することで、
くすりの吸収がよくなることがあ
ります。
しかし、食前に飲むことでくすりの副作用が強く
なったり、自己流のタンパク質制限で体調を崩したりす
る可能性もありますので、実際の方法については主治
医によくご相談ください。特に低タンパク食については
独自に行わず、必ず主治医および栄養士などによる指
導管理のもとに行ってください。
10
Q
9
A
くすりの飲む量が最近多くなり、
気になります。
長い治療期間のあいだには、
くすりの調整が必要に
なります。
このためしばしば、症状を改善するためにくす
りの量や種類を増やすことになります。
こうした時、一人
で心配して、自己判断でくすりの量を減らしたり、飲まな
かったりするのは絶対にやめてください。勝手に内容を
変えると、症状が悪化するだけでなく、逆に副作用があ
らわれることもあり、場合によっては命の危険が生じる
こともあります。やめる場合も必ず主治医の指示に従っ
てください。
また、最初は飲めなかったくすりが、飲み方
の工夫や他のくすりと一緒に飲むことで飲めるようにな
ることもあります。
これも主治医によくご相談ください。
主治医によって
決められた時間帯、
回数、分量を
正しく飲むことが
もっとも効果的です。
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Q
10
A
くすりを飲んでも
パーキンソン病は
進行するのでしょうか。
パーキンソン病は徐々に進行していく病気ですが、通
常の寿命をまっとうできるまでに治療は進歩してきまし
た。
また、病気の進行は個人差が大きいので一概には
いえませんが、10年、15年たっても自立した生活をされ
ている人もたくさんいます。
くすりとリハビリテーション
がパーキンソン病治療の両輪です。病気を十分理解し、
病気に負けず積極的に明るく楽しい毎日を送るよう心
がけることが大切です。
12
Q
11
A
入院することで、
もっとよくなるのでしょうか。
現在の日常生活リズムに合わせてくすりの内容を調
節することがもっとも大切であるため、パーキンソン病
診療の基本は外来通院になります。
しかし、
くすりを調整
したり、1日を通して症状の変化を把握するために、入院
をおすすめすることがあります。入院は、オフ時の症状
を診ることができ、日内変動の全体を把握できたり、
ま
た、睡眠障害や精神症状などの非運動症状を把握する
ことができるため、治療上有益であることもあります。
ま
た、入院中に生活面やリハビリについてもアドバイスを
受けることが可能になります。
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Q
12
A
手術はくすりを飲むよりも
有効なのでしょうか。
くすりによる治療のほかに、脳の中に電極を入れる
などの手術治療をおすすめする場合があります。
くすり
の調節によってもなかなか良くならない症状の日内変
動やふるえ、
ジスキネジアなどに効果がある場合があり
ます。
しかし手術に適した人とそうでない人がいますの
で、詳細については主治医にご相談ください。
手術は何歳くらいまで
可能でしょうか。
A
他の手術同様にパーキン
ソン病の手術も、体力の面か
ら若い人のほうがよいとされ
ていますが、70歳以上でも手
術は可能です。詳しくは主治
医にご相談ください。
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Q
13
A
おすすめの運動療法など
ありますか。
パーキンソン病のための特別な訓練法というのは確
立されていませんが、無理なく患者さんに合った運動
を、患者さんに合ったペースで行うことが大切です。たと
えば、家事や散歩など日常生活を積極的に行うことも運
動療法です。
ストレッチやラジオ体操などで体をゆっくり
ほぐしたり、音楽に合わせて体を動かすのもよいでしょ
う。
また、
ご家族やお友達と一緒に軽いスポーツや趣味
などをして、楽しみながら体を動かすのも効果的です。
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Q
14
A
パーキンソン病が治ると銘打った
健康食品や本がありますが、
効果はあるのでしょうか。
パーキンソン病に有効なサプリメントとして、ビタミ
ン、CoQ10(還元型:ユビキノール)、ポリフェノール(緑
茶)などが宣伝されていますが、残念ながらパーキンソ
ン病を治すことが証明され、さらに科学的根拠がきち
んとした健康食品は一つもありません。もし、知り合い
に高額な商品をすすめられ、断り切れずに困ったときな
どは、すぐに主治医に相談しましょう。主治医の指示に
従って、病院から出されたくすりをきちんと飲むことが
もっとも大切です。
科学的根拠のないものよりも、
きちんとくすりを
飲むことが大切です。
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Q
15
A
季節によって症状が
悪化することがありますか。
パーキンソン病の患者さんにとって、季節の変化は心
や体に大きな影響を及ぼします。夏の暑い時期は、汗を
かいたり食欲がなくなったりして、脱水症状をおこしが
ちです。
また室内外の温度差や暑さのために体調を崩
しやすく、特に体調管理が大切な季節です。
日中の外出
を控え、帽子や日傘を利用して暑い日差しを避けましょ
う。
また水分をしっかりとりましょう。冬場は、外出しなく
なることで筋肉や関節が固くなり、体が動かしにくくなり
ます。室内でもできる適度な運動を心がけ、風邪をひか
ないように気をつけましょう。
暑い時期
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寒い時期
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資料請求・問い合わせ先
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改訂年月2014年4月