2015(平成27)年度 学術振興会 特別研究員応募説明会 審査の経験から伝えたいこと 早稲田大学文学学術院 陣野 英則 自己紹介 略歴 1998年3月 早稲田大学大学院文学研究科日本文学専攻博士後期 課程 満期退学 2001年2月 早稲田大学より博士(文学)の学位を授与される 2001年4月 早稲田大学第一・第二文学部 専任講師→助教授・准 教授を経て、2009年4月 文学学術院教授 専門分野 日本古典文学、平安時代文学、物語文学 科学研究費採択課題 2003~05年度 若手研究(B)『光源氏物語抄(異本紫明抄)』を中心とする 中世の源氏物語古注釈の研究 2007~10年度 基盤研究(C)『長珊聞書』を中心とする中世の源氏物語古注釈 の研究 2011~14年度 基盤研究(C)『源氏物語』を中心とする平安文学の古注釈と 受容に関する研究 文学研究科における研究室の紹介 2004年度より、日本文学専攻(現在は日本語日本文学 コース) の研究指導(修士および博士後期)を担当。 課程による博士学位論文7件の主任審査員を担当。 研究室からの学振特別研究員への採用は、DC2が2名。 学振特別研究員に採用されるメリット ○履歴上の有利。DCの場合、大学院生でありながら「特別 研究員」という研究職に就いていることになる。 ○キャリア初期におけるゆたかな研究費。 ○研究計画の立案、応募から採用後までのさまざまな経験 が、のち科研費等を獲得する際にも活かされる。 近年の傾向(特に人文・社会系において) ○ かつて、専攻分野によっては学振特別研究員(特に DC)をめざす人の割合は低かった。 ⇒現在、あらゆる分野で学振特別研究員が研究者とし てのキャリア形成の第一関門になりつつある。 *審査の公平さが、その大きな理由の一つ。 ○ 同様に、科研費等の研究資金獲得の有無も、研究者 としての実績を示す指標のようになりつつある。 *ただし、分野および年代によっては、公的研究資金を得る ことなく優れた研究を積み重ねている研究者も少なくない。 学振特別研究員に応募するにあたり 認識しておきたいこと 一度でパスしなくても諦めない。 学振特別研究員にしても、科研費等にしても、一度で 通らないことは多い。 →実は、基本的にほぼ同じ内容といいうる申請書類で も、二度目で通ることは充分にありうる(その理由 については後述)。 自分の研究の方針、内容を客観的にみるチャンス。 書類の作成はかなり面倒。 →しかし、他人にもわかる言葉で自身の研究の独自性 を伝えるためのトレーニングとなりうる。 →特にDCの場合、博士学位論文をしあげてゆく上で、 構想の甘い部分を再考する機会になる。 審査の実情について(1) ●1件の申請書類は6名により審査→6名の合計点 を出す。 ● ひとりの審査員は、一ヶ月弱の期間でまとめて 数十件の申請書類を見る。 ※審査期間の時間の使い方は、審査員によりさまざま。私の場合、 三日間程度、この審査のために集中して取り組んだ。 ● 審査に際しては、1件ずつその評価をつけた根 拠を示す説明文を書かされる(同文コピーはゆる されない)。 審査の実情について(2) ● 審査は相対評価による。 ※観点は三つ(「研究者としての能力、将来性」「研究計画」「研 究業績」)。これらについては、それぞれ5段階で絶対評価。 ⇒しかし、観点別の評価をふまえた上での総合評価は相対評価。 ◆相対評価(総合評価)の比率 評点「5」=10% 評点「4」=20% 評点「2」=20% 評点「1」=10% 評点「3」=40% ※一見して箸にも棒もかからぬという書類は20件に1、2件程度。 逆に、際だって優秀な書類も20件の中で1、2件ぐらい。 ⇒要は、20件のうちの残り16件か17件の中で、相対的に良い方か、 ちょうど真ん中あたりか、それともやや劣るか、という評価になる。 審査の実情について(3) ● 審査対象は、審査員にとっての関連領域(やや 外れる領域)のものが半数以上。 ※自分の専門領域の研究者だけにわかってもらえる、 という書き方では、不利になる可能性がある。 ○採択率は、PDについてはほぼ横ばいだが、DCに ついてはこの十年で上昇の傾向あり。 書類をまとめる上での注意(1) ▼まずは基本的なことから ・書類の記入すべき欄はすべて埋まるように。 *空白の多い書類はそれだけで印象が悪くなる。 ・ただし、詰め込みすぎもまずい。行間設定は若干ゆるめに。 ・誤字・脱字のないように。 ・センテンスが長すぎてわかりにくくならないよう、特に留意。 ・幾度も推敲する。 ・指導教員、特別研究員になった先輩などのチェックを受ける。 ・しかし、一番大切なことは、自身の発想と工夫が、 自分の言葉で表されていること。 書類をまとめる上での注意(2) ▼よりわかりやすくするための工夫 ・見出しを適宜入れる。また形式段落は長めにならないよう注意。 *のっぺりとした印象をなるべく与えないように。 ・見出しとキーワードはゴチック体にするなど、書体を工夫。 *明朝体の太字(ボールド)は、紙媒体の書類(さらにそのコピー)で は、太字以外と区別しにくいこともあるので、要注意。 ・下線なども適宜入れる。 *ただし入れすぎると逆効果。 ・おさえてもらいたいポイントを先に示す(先に概要、つづいて詳細に、と いう順で)。 書類をまとめる上での注意(3) ▼審査員によいインパクトを与えるために ・自分だけの研究、といえる面をとにかく伝える。 *評価の最大のポイントは、将来性があるかどうか、にある。 *先行研究、研究状況に対する自身の研究の位置を明示する。 ・自分のアピールすべき点は、恥ずかしがらずに示す。 ・図・表などをうまく入れられる研究領域では、積極的に活用。 *専門分野によっては、無理に入れる必要はない。 ・少し異なる領域の専門家にも伝わるようわかりやすさを心がける。 ・研究計画は、二年目(以降)もできるだけ具体的に。 ・指導教員の評価書もかなり重要。⇒評価書の執筆依頼に際して、 充分に計画内容などについて相談する必要あり。 最後におさらい ◆優れた研究計画であっても一度で通るとは限ら ない。⇒諦めずに繰り返し応募する。 ◆書類作成はかなり面倒だが、今後の研究計画を じっくりと考えたり見直したりするチャンス。 ◆書類は推敲を重ねるとともに、指導教員、先輩 などのチェックを受けることが重要。 ◆研究計画は一年目だけでなく二年目以降も具体 的に記す。
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