+ H

化学Ⅱ
第12章
ベンゼンの構造
1.ベンゼンと芳香族化合物
1.1. ベンゼンはなぜ安定か
1.2. ベンゼンの構造解明
1.3. ケクレ構造と環状共鳴構造
1.4. ベンゼンの安定性の評価
2.「芳香族性」と多様な化合物
2.1. アヌレンの安定性とヒュッケル則
2.2. 安定環と不安定環の違い
2.3. 非ベンゼン系芳香族分子
2.4. イオンにもある芳香族性
2.5. 多核芳香族炭化水素
2.6. ヘテロ芳香族化合物
1.ベンゼンと芳香族化合物
1-1から1-4は省略
要約としては
ベンゼンの方がシクロヘキサジエンよりも安定
• 環状の共役構造となっていることでベン
ゼン環は非常に安定になっている。
→芳香族性
• 通常の二重結合とは反応性が異なる
→求電子置換反応
2.1. アヌレンの安定性とヒュッケル則
芳香族性
ヒュッケル則に適合し環状に共役した不飽和結合を持つ分子が、
共鳴によって安定になる性質。
ヒュッケル則
4N+2個のπ電子(N=0か整数)を持つアヌレンのみが共鳴安定
化できる芳香族性を示すという法則
6
10
18
14
芳香族性を示す環状共役不飽和炭化水素、4,8,12員環などは芳香族性は示さ
ない
2.2. 安定環と不安定環の違い、 2.5. 多核芳香族炭化水素
環状共役不飽和炭化水素の安定性
1. 芳香族性の化合物>そうではない化合物
2. 平面構造をとれる化合物>非平面状の化合物
6
H
H
H
18
H
H
H
12
8
非芳香族性、非平面状
芳香族性、平面
非平面状
14
10
2.3. 非ベンゼン系芳香族分子
奇数員環が芳香族性を持つ場合
奇数員環は環状に共役出来ない
ため芳香族性はない
π電子数
3員環
2個
5員環
4個
7員環
6個
アズレン
π電子数 10個
奇数員環同士の組み合わせによ
りヒュッケル則を満たして芳香族
性を示す場合がある
2.4. イオンにもある芳香族性
奇数員環が芳香族性を持つ場合
H
H
H
H
H
H
H
H
H
H
H
H
H
H
π電子数 2個
H
H
H
H
H
H
H
H
π電子数 6個
(4個+非共有電子対2個)
イオン化することで
• 環全体を使って共鳴構造式が記載できる
• π電子数がヒュッケル則を満たしている
π電子数 6個
芳香族性あり
2.6. ヘテロ芳香族化合物
環内にヘテロ原子を有する芳香族化合物
N
N
ベンゼンの炭素原子を窒素原子
に置き換えた分子
N
N
Pyridine
ピリジン
Pyrimidine
ピリミジン
N
N
Triazine
トリアジン
5員環にヘテロ原子が入った化合物
H
H
H
H
H
Pyrrole
ピロール
N
N
N
N
N
Furan
フラン
O
O
O
O
O
H
H
×
化学Ⅱ
第13章
ベンゼンの求電子置換反応
1.求電子置換反応のメカニズム
1.1. ベンゼンのハロゲン置換反応
1.2. ニトロ化反応とスルホン化反応
1.3. フリーデル-クラフツ反応
2.置換基による反応性への影響
2.1. 一置換ベンゼンへの求電子置換反応における反応性
2.2. 置換基の配向性
2.3. オルト-パラ配向性とメタ配向性の違い
1.求電子置換反応のメカニズム 1.1. ベンゼンのハロゲン置換反応
ベンゼンへの求電子反応(ハロゲンとの反応を例にして)
+
Br
Br
×
アルケンとは異なりベンゼン
はハロゲンと直接反応しない
ルイス酸(電子受容体)を利用したハロゲンのカチオンを発生
Br
Br
Br + AlBr3
Br
Br
H
AlBr3 +
Br
Br
Br
Br
Br
Br
シクロヘキサジエンよりもベンゼン環の方が安定なため、
Br- の付加ではなく、H+の脱離が進行しベンゼン環が再生される
1.2. ニトロ化反応とスルホン化反応
ベンゼン環への求電子置換反応(ニトロ化反応)
NO2
HNO3, H2SO4
反応機構
+
H2SO4 + HNO3
NO2
+
HSO4
+ H2O
NO2
H
NO2
NO2
B
硝酸と硫酸からNO2+が生成して、ベンゼン環に求電子置換反応を
起こす。:Bは塩基、水やHSO4-など。
HO
N
O
O
+
H
H2O
N
O
O
H2O + N
O
O
1.2. ニトロ化反応とスルホン化反応
ベンゼン環への求電子置換反応(スルホン化反応)
SO3H
fuming H2SO4
反応機構
+
O
S
O
+
SO3
H2SO4
H
H2O
SO3H
H
O
SO3H
B
発煙硫酸はSO3との平衡にあるため、ベンゼン環と求電子置換反
応を起こす。
O
HO
S
O
O
+
H
OH
HO
S
O
HO
OH2
S
O
O
O
+
H2O
S
O
O
+
H2O
1.3. フリーデル-クラフツ反応
フリーデル-クラフツのアルキル化反応
(芳香環とアルキル鎖の炭素-炭素結合形成)
+
H3C
CH3
ルイス酸
X
X = Cl, Br, I
• ハロゲン化炭化水素と芳香環に、ルイス酸を加えると炭素-炭素
結合がつくられる
• ルイス酸は、BF3, AlCl3, FeCl3などが利用される。
反応機構
H3C
Cl
AlCl3
CH3 Cl AlCl3
R CH2 Cl AlCl3
CH3
Cl AlCl3
H
CH3
1.3. フリーデル-クラフツ反応
ポリアルキル化反応
+H C
3
CH3
ルイス酸
CH3
+
X
H3C
CH3
フリーデル-クラフツのアルキル化反応では
• アルキル基=電子供与性のため、生成物の反応性が高い
• 生成物も反応して複数置換された生成物が得られる。
• 置換される位置は、1,2-(オルト置換)もしくは1,4-置換(パラ置換)。
置換基の位置関係とそれを表す言葉
R
R
R
R
R
R
オルト位
メタ位
パラ位
1.3. フリーデル-クラフツ反応
フリーデル-クラフツのアシル化反応
(芳香環とカルボン酸誘導体の炭素-炭素結合形成)
H3C
+
Cl
O
ルイス酸
CH3
O
反応機構
R
Cl
AlCl3
R
O
Cl AlCl3
O
R
O
Cl
AlCl3
アシリウムイオン
O
CH3
H3C
O
H
O
R
• ポリアシル化は起こさない制御しやすい反応
• カルボン酸誘導体としては酸無水物も利用される
2.1. 一置換ベンゼンへの求電子置換反応における反応性
電子供与性置換基と電子吸引性置換基
芳香環に直接結合している原子
が負電荷もしくは非共有電子対を
有していることが多い
電子供与性置換基
(Electron donating group)
OH
SH
NH2
ED
ED
CH3
省略
電子吸引性置換基
(Electron withdrawing group)
O
O
S
N
O
C
O
OH
OH
O
C R
O
CN
芳香環に直接結合している原子
が正電荷もしくは共鳴効果で正電
荷を有することが多い
EW
EW
省略
2.1. 一置換ベンゼンへの求電子置換反応における反応性
求電子置換反応の反応性
R
高い
低い
R = NH2 > OH > CH3 > H > Cl > CO2H > NO2
求電子置換反応は芳香環の電子密度が反応性に影響する。
• 一置換ベンゼンでは置換基の種類が反応性に影響する
• 電子供与性置換基があると反応性が高く、電子吸引性置換
基があると反応性が低くなる。
フリーデル-クラフツのアルキル化とアシル化での生成物の反応性
O
CH2R
>
>
R
アルキル化では反応性が高くなる
⇒ 生成物が反応しやすい
アシル化では反応性が低くなる
⇒ 生成物は反応しにくい
2.2. 置換基の配向性
置換基による求電子置換反応の配向性の違い
ED
ED
Ew
ED
Ew
R
+
R
+
R
+
R
R
電子供与性置換基がある場
合はオルト・パラ位が置換
例
R
電子吸引性置換基がある
場合はメタ位が置換
R
R
R
NO2
HNO3
+
+
H2SO4
NO2
NO2
R = CH3 (電子供与性基)のとき
R = COOH (電子吸引性基)のとき
58%
19%
38%
1%
4%
80%
2.3. オルト-パラ配向性とメタ配向性の違い
電子供与性置換基によるオルト・パラ配向性
ED
ED
ED
R
+
R
ED
ED
R
ED
R
ED
R
R
ED
R
R
ED
ED
ED
ED
R
R
R
R
電子供与性置換基がある場合、中間体のカルボカチオンで非共
有電子対による寄与がある為、オルト-パラ置換体が安定
2.3. オルト-パラ配向性とメタ配向性の違い
電子吸引性置換基によるメタ配向性
EW
EW
EW
R
+
R
EW
EW
R
EW
R
R
EW
R
R
EW
EW
EW
R
R
R
電子吸引性置換基がある場合、中間体のカルボカチオンの共鳴構造
式を考えると、正電荷が隣り合ってしまうオルト-パラ置換体が不安定
2.3. オルト-パラ配向性とメタ配向性の違い
少し違う配向性の考え方
電子供与性置換基がある場合の共鳴構造式
ED
ED
ED
ED
ED
EW
EW
電子吸引性置換基がある場合の共鳴構造式
EW
EW
EW
求電子置換反応なので電子の多い場所が反応する
• 電子供与性置換基では オルト・パラ位に負電荷が局在している
• 電子吸引性置換基では オルト・パラ位に正電荷が局在している(メタ位が相
対的に電子豊富)