有機化学基礎Ⅰ

ヒドロホウ素化(Hydroboration)補足③
ただし、実際にはH-(ハイドライドイオン)は存在しないので、
BH3の空軌道(ルイス酸)に対するπ電子の攻撃と、カルボカ
チオンに対するH-(ハイドライドイオン)の攻撃が同時に起こっ
ていることに注意しよう(形式的でない見方)。
有機化学基礎Ⅰ
H
第8回
H
H
B
H
H
H
R
ヒドロホウ素化(Hydroboration)補足①
ヒドロホウ素化(Hydroboration)補足④
テキスト9.11章
ヒドロホウ素化は最終的にアルコールが出来る反応。
H
BH3
CH2R
C
R
CH2
3
H2O2
B
OH
CH2R CH2 OH
H OSO3H
B(OH)3
H
H
H
H
BH3の空軌道(ルイス酸)をπ電子が攻撃することによって始
まる。
H
H
B
H
H
C
H
H
H
B
H
R
H
C2H5
H
H
H
C2H5
H2O
OSO3H
Δ
H
H
H
C2H5
OH
H
C
C
H
H
H
H
C
R
B
H
一方、ヒドロホウ素化では、分子の端にOHが付いたアルコー
ルが得られる。これがヒドロホウ素化が重宝される点。
H
H
テキスト9.11章
酸性条件下で水がある件に付加してアルコールを与える反応
では、分子の端にOHが付いたアルコールはできない。
H
C
テキスト9.11章
C H
H
H C
C
R
ヒドロホウ素化(Hydroboration)補足②
H
H
テキスト9.11章
次に、中間体カルボカチオンを、BH3のHがH-(ハイドライドイ
オン)の形で攻撃することによって、一方の炭素にBH2が、もう
一方の炭素にHが付加した化合物が生成する(形式的な見
方)。
BH3
C
R
CH2R
CH2
3
B
H2O2
OH
CH2R CH2 OH
B(OH)3
H
本日の達成目標
「芳香族求電子付加脱離反応」
芳香族求電子付加脱離反応の機構と、反応性お
よび配向性を決める原理を理解し、説明できる。
H
H
B
H
C
R
サブタイトル:「最先端?の入浴剤」
ブタイ
「最先端
浴剤
H
H
H
H
H
R
C
H
H
H
B
C
C H
H
H
H C
R
H
B
C
H
H
1
本日のスケジュール
ニトロ化①(求電子試薬をつくる) ★★★
1) 本日の達成目標・本日のスケジュール
O
2) 基本パターン
O
H
N
塩基
pKa -1.4
4) 反応性・配向性
O H
O
O
N
O
H O
O
3) Workshop ! (やってみよう!その1)
H
O
S
O
14.4章
O
S
H
O
O
O H
酸
pKa -10
5) ハロゲン化、Friedel-Crafts反応
O
6) 本日のまとめ/次回の予告/今週の宿題
7) Workshop ! (やってみよう!その2)
O
O
S
H
O
O
O H
求電子試薬
=ニトロニ
ウムイオン
13.12a、14.1~14.2、14.4~14.6
芳香族化合物に起こりやすい反応
O
H
N
H2 O
14.12a、14.4章
ニトロ化②(付加ー脱離) ★★★
14.4章
H
E
O
E
E
付加
Base
H
水素引き抜き
H
N
O
N
芳香族性を回復して安
定化できるので有利
O
O
E
E
H
Base
B
Base
HSO
4-
H
NO2
E
E
NO2
Base
HH2SO
4
脱離
ニトロベンゼンは合成原料として有用
N
NH2
NO2
N
N
OH
X
C
NaNO2
H2 / Pd-C
,
, ・・・
,
14
求電子置換反応 ★
14.12a、14.4章
Workshop ! (やってみよう! その1) スルホン化
H
E
O
O
O
O
H O
O H
O
O
H2O
Base
ポイント
・求電子試薬はどう作られるか
(酸はどのように反応に関わるか)
・芳香環の反応性
・芳香環の反応位置(配向性)
・芳香族性
O
S
O
H
O H
酸
E
H
O
H
S
S
H O
O H
塩基
Base
E
O
S
H O
H
典型例
・ニトロ化
・スルホン化
・ハロゲン化
・Friedel-Crafts 反応
O
E
E
H O
O
O
求電子剤
Base
O
H
S
O
O
S
O
O
H
O
S
O
O H
O
H
O
O
希硫酸
SO3H
H
S
O
H
O
H
S
H2SO4
脱スルホン化
100℃
2
配向性① ★★★
O H
14.9章
O H
O H
配向性② ★★★
O H
O H
O
14.9章
O
O
O
O
N
N
O
O
O
2 N
N
求電子試薬の反応: 電子密度が高いところへ反応しやすい
求電子試薬の反応: 電子密度が高いところへ反応しやすい
電子供与基をもつ芳香環には
o 位と p 位( o , p 配向性)
O H
OH
1)電子求引基はベンゼン環の電子密度を低下させるので、
電子求引基をもつ芳香環はベンゼンよりも反応性が低い。
OH
OH
NO2
HNO3
2)電子求引基をもつ芳香環に対しては、o位, p位よりも電子
密度が高いm 位に反応する( m 配向性)
H2O
,
NO2
エネルギーダイアグラムと反応中間体 ★
CH3
14.9章
CH3
E+
モノ置換ベンゼンのニトロ化の反応性と配向性
Y
H
E
E
電子
供与性
CH3
CH3
反応中間体
求電子
攻撃
プロトン
引き抜き
生成系
O
O
-CH3
電子
吸引性
40
<2
58
27
58.1
3.7
38.2
(~ 0.06)
0 06)
37
1
62
26.4
71.6
<2
-CN
-
16.8
80.8
1.9
-NO2
5.8×10-8
6.12
91.8
2.1
15
14.9章
O
O
O
2 N
N
N
~ 1000
パラ
ベンゼン環の電子密度が高いほど、反応しやすい
配向性② ★★★
O
-OH
14.10章
メタ
オルト
-COCH3 1.29×10-5
カチオン中間体の
安定性が生成物
を決める
原系
相対速度
-Br
E
H
-Y
★★★
ハロゲン化
Br
14.4章
Fe(III)Br3
Br
ルイス酸
触媒
Br
Br
Fe(III)Br3
H
Br
O
O
N
O
O
N
O
O
N
O
O
2 N
Br
Br
Fe(III)Br3
Br
Br
Br
Fe(III)Br3
Fe(III)Br3
H
ニトロ基はベンゼン環から
電子を求引している
電子求引基はベンゼン環
の電子密度を低下させる
Br
Br
Fe(III)Br3
Br
Fe(III)Br3 + HBr
触媒再生
H+が脱離すると、芳香族性を回復
できて、より安定になる
3
★★★
14.5章
Friedel-Craftsアシル化①(求電子試薬をつくる)
R
R
R
C
AlCl3
Cl
O
Cl
C
ルイス酸
フルオレッセインの合成 in 1871!
C
AlCl3
Cl
AlCl3
O
O
イオン対
強い蛍光を発する
R
R
C
C
O
O
H2SO4
試験管
Cl
レゾルシン(0.1 g)
AlCl3
無水フタル酸(0.1 g)
濃硫酸 1滴
求電子試薬=
アシリウムイオン
加熱(約1分)・・・融解する
黄色201号
3 M NaOH
Friedel-Craftsアシル化②(付加ー脱離) ★★★
R
付加
H
C
C
O
H
C
14.5章
フルオレッセインの仲間
R
O
AlCl3
Cl
R
R
脱離
C
HCl
AlCl3
O
O
RCOは電子吸引性なので、芳香環の電子
H+が脱離すると、芳
密度を低下させる。したがって、生成物にさ
香族性を回復できて、 らに求電子攻撃が起こる可能性は少ない
より安定になる
Friedel-Crafts反応: アルキル化
δ+
R
AlCl3
Cl
R
Cl
14.5章
δ-
生成物の反応生成物を予測せよ。ただし、ひとつの化合物が1回の
反応でいっぺんに2箇所以上反応することはないとする。
AlCl3
ルイス酸触媒
R
δ+
δ-
Cl
AlCl3
H
R
29
Workshop ! (やってみよう! その2) 答え
NO2
HNO3, H2SO4
Cl AlCl3
NO2
Br2, FeBr3
Br
H
Cl
R
R
C
O
AlCl3
アシル化では生成
物のアシル基が電
子求引性なので、
2回目の反応が起
こる可能性はない
R
HCl
AlCl3
触媒再生
アルキル化では生成物
のアルキル基が電子供
与性なので、環の電子密
度が上昇し、2回目の反
応が起こる(2つ目のRが
結合する)可能性がある
BrBr
, Fe 3
2,2FeBr
Br
Br
HNO3, H2SO4
Br
NO2
38%
NO2
62%
4
(補足)反応中間体の安定性と配向性
本日のまとめ
求電子試薬への攻撃が第1段階
(求電子試薬はどのように作られるか)
芳香環では付加―脱離が第2段階
・・・芳香族性を回復して安定化するため
配向性や反応性
・・・どこの電子密度が高いか、中間体は安定か
オルト置換体
E
CH3
CH3
H
E
H
H
E
CH2
H CH2
H
E
H
E
H CH2
H
E
E
メタ置換体
E
CH3
CH3
CH3
H
E
H
E
確認=本日の達成目標
「求電子付加脱離反応」
芳香族求電子付加脱離反応の機構と、反応性および配向性を
決める原理を理解し、説明できる。
H
E
電子供与性の置換基は、
オルト・パラ置換によって
生じる正電荷を安定化で
きる(共鳴構造式をたくさ
ん描ける)が、メタ置換の
場合の正電荷は安定化
できない。したがって、オ
ルト・パラ置換が、より起
こりやすい反応である。
19
20
反応中間体の安定性① ・・・配向性
今週の宿題
オルト置換体
ハンドアウト参照。
CH3
次回のテーマ 「カルボニルの反応①」
(サブタイトル:「アフリカの風土病」)
H
H
E
CH2
H CH2
H
E
CH3
CH3
CH3
H
E
H
E
H
E
オルト・パラ配向性
H
CH3
CH3
E
H
H CH2
オルト・パラ置換によって
オルト
パラ置換によ て
生じる正電荷を安定化
H
E
パラ置換体
E
H
E
電子供与性の置換基
メタ置換体
主な範囲: 16.1~2、16.6~11、18.6a
次回の達成目標
カルボニル化合物の求核反応のパターンを理解し、
説明できる。
求核性と脱離能を理解し、活用できる。
CH3
H
E
H
CH2
E
H CH2
H
E
H
H CH2
E
H
20
反応中間体の安定性② ・・・配向性
オルト置換体
NO2
資料
電子吸引性の置換基
NO2
H
E
NO2
H
E
H
E
環の電子密度を下げる
ので、求電子反応に対
する反応性が低下
メタ置換体
NO2
NO2
NO2
H
E
H
E
H
E
パラ置換体
NO2
E
H
NO2
E
H
NO2
E
H
反応しにくい(=反応速
度が小さい)。電子吸引
性の置換基がオルト・パ
ラ置換によって生じる正
電荷を不安定化するの
で、オルト・パラ置換は
起こりにくい。よって、反
応が起こるとすればメタ
位に起こる。
5
(おまけ)Friedel-Craftsアシル化③(反応後の後処理) 14.5章
R
R
C
AlCl3
C
錯体形成してしまうので、
AlCl3はやや過剰に必要
(よって、触媒ではない)
O
O
AlCl3
δ+
δ-
最後は水を使って「後処理」
R
R
C
O
AlCl3
AlCl3は水酸化物
になって、離れる。
C
H2O
O
エオシン、エリスロシン
Br
Br
HO
O
OH
Br2
O
HO
I
Br
ハロゲンが付加しやす
いのは、電子供与基が
ベンゼン環の電子密度
を向上させているから
を向上させているから。
O
I
HO
I
O
OH
O
OH
Br
O
O
エオシン(赤色103号)
福神漬やソーセージの赤色
だった。赤インクの原料
I
O
O
エリスロシン
赤色3号
I2を反応させるとエリスロシン
ができる。
エオシンを使った太陽電池工作キット
http://www.geocities.jp/wakasashinji/taiyou/nikki/2004/index.html
http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/solar_cell/4_c_2.htm
6