講義資料

第6章
財政政策の基本構造
10月24日(金) 1 限目
前回の復習
平成に入り、政府の国債発行残高が急速に拡大
国債発行残高(億円)
10,000,000
9,000,000
8,000,000
7,000,000
6,000,000
5,000,000
4,000,000
3,000,000
2,000,000
1,000,000
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出所) 財務省『国債および借入金並びに政府保証債務現在高』
⇒ 原因は、税収の落ち込みと財政支出拡大
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6.7. 公債負担の問題
現在の政府が公債を発行しすぎると、将来世代にとって負担となるのか?
公債のほとんどが国民によって保有されている場合
債務を償還(返却)するために増税を行う
・ いったん(お金が)政府に吸い上げられる
・ その後、公債を持っている国民に(お金が)戻される。
⇒(公債を持っていない人にはたしかに負担であるが・・・)
経済全体で見れば、将来世代への影響はほとんどない!
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6.7. 公債負担の問題
<将来世代の負担になるケース>
公務員の給料や、社会保障のための赤字(=公共サービス)
公共サービスup
⇒
金利 up
⇒
民間投資 down
“クラウディング・アウト効果“
⇒ 将来の生産能力 down
⇒
将来のGDP down
⇒ “将来世代の負担”
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6.7. 公債負担の問題
<将来世代の負担になるか不明のケース>
財政赤字が公共投資目的なら
道路や港湾などへの公共投資
⇒ 将来世代の所得 up や、生活を豊かにする
⇒ ただし、クラウディング・アウトも起こる
⇒ どちらの効果が大きいかによって、将来世代
の負担になるかどうかが決まる!
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6.7. 公債負担の問題
公債負担の比喩
・ 親が酒を飲むために借金をして債務を残す
⇒ 子供の負担となる
・ 土地を買うために借金をする。もし、借金の利子
よりも、土地の値上がり率の方が高い
⇒ 子供の負担ではない
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6.8. 政府債務の拡大と財政破綻
政府の抱える債務は、国民の国民に対する債務
⇒ 将来世代への負担の問題は容易に考えられない!
「政府の債務が膨張していった時、どのようなことが起きるのか?」
1.いったん発行された公債は、償還期限が来るまで需給を反映して
価格が変動。
2.債務膨張で、将来の財政運営困難と予想される。
3.公債の売却が始まる ⇒ 公債価格 down ⇒ (さらに)公債売却 ⇒
4.公債の利回り上昇 ⇒ 金利上昇
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6.8. 政府債務の拡大と財政破綻
<金利上昇による悪影響>
① 政府の資金調達コスト up
② 金融機関は、値下がりした公債を抱える ⇒ 資産価値 down (経営問題へ)
③ 負債を抱える企業や、住宅ローンを抱える家計 ⇒ 破綻や破産へ
④ 株価や地価 down
⑤ 投資のクラウディング・アウト
⇒ もちろん、政府は金利の上昇を止めるために、金融緩和政策を
行うが、それはインフレをもたらしかねない!
⇒ さらなる金利上昇の可能性も!
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6.9. 減税政策の有効性に対する疑問
財政政策による景気安定化
⇒
ケインジアンのマクロ政策
⇒ もし消費者が合理的ならば、減税政策は消費を刺激しない!
⇒ 新古典派やマネタリストによる批判
なぜなら、「現在の減税は将来の増税をもたらす」から
⇒ つまり、(増税をあらかじめ予想している場合)現在の可処分
所得の増分を、将来の増税に備えて貯蓄にまわす。
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6.9. 減税政策の有効性に対する疑問
日本では・・・
政府は景気刺激のため、さまざまな減税政策
⇒ しかし、消費は十分に拡大しない
理由:
・ 政府の財政状況は今後きびしくなる(将来の増税)
・ 年金の支払いも先細りになるのではないか?という不安
⇒ 貯蓄にまわして備える
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