微分積分学演習第二 O クラス(12/25) 担当:柴田 将敬 微分方程式 未知関数とその導関数の関係式となっているような方程式を 微分方程式 という。特に、未 知関数が多変数関数で偏導関数が出てくるときは 偏微分方程式、未知関数が一変数関数のと きは、常微分方程式 という。また、ある微分方程式について、そこに含まれる導関数で、もっ とも高階なものが、n 階導関数であるとき、n 階微分方程式 という。ここでは、常微分方程 式について扱うが、わかりやすくするため、変数を t, 未知関数を y(t) で統一しておく。 例. y ′ (t) = f (t) (1) は常微分方程式である。ここで、f は与えられた t の関数、例えば、f (x) = sin t など。また、 ある点での値を指定することもある(初期値などという)。例えば、 y ′ (t) = f (t), 演習問題 1. y(0) = 1. (2) y ′ (t) = sin t となる y(t) を求めよ。 演習問題 2. y ′ (t) = t sin t, y(0) = 1 となる y(t) を求めよ。 一見単純な常微分方程式であっても、つねに上手く計算出来るわけではない。また、具体 的に解が求まるような微分方程式であっても、そのための方法・技術は非常に多岐に渡る。 ここでは、いくつかの簡単で有名なものを扱う。 変数分離型微分方程式 y ′ (t) = F (y(t))G(t) というような形の一階常微分方程式を 変数分離型微分方程式 と呼ぶ。ここで、F や G は一 変数関数である。このような場合、両辺を F (y(t)) で割ると、 y ′ (t) = G(t) F (y(t)) 1 となるので、両辺を t で積分すれば、 ∫ y ′ (t) dt = F (y(t)) ∫ G(t) dt となる。右辺は、そのまま単に t で積分すれば良いし、左辺は、z = y(t) で置換すれば、 ∫ z dz = F (z) ∫ G(t) dt となって、左辺の積分を計算すれば、(z = y(t) なので)y(t) が求まる。 演習問題 3. y ′ (t) = y(t) となる y(t) を求めよ。 演習問題 4. y ′ (t) = et−y(t) となる y(t) を求めよ。 演習問題 5. ty ′ (t) = y(t) + y ′ (t) となる y(t) を求めよ。 同次形微分方程式 ( ′ y (t) = F y(t) t ) というような形の一階常微分方程式を 同次形微分方程式 と呼ぶ。ここで、F は一変数関数で ある。このとき、y(t) = z(t)t と変数変換すると、 y ′ (t) = z ′ (t)t + z(t) なので、 z ′ (t)t + z(t) = F (z(t)) となり、変形すると、 z ′ (t) = (F (z(t)) − z(t)) 1 t を得る。これは変数分離型微分方程式になっているので、先の方法で解ける。 2 演習問題 6. y ′ (t) = y 2 (t) t2 + ty(t) となる y(t) を求めよ。 一階線形微分方程式 次のような形の微分方程式を一階線形微分方程式という。 y ′ (t) + a(t)y(t) = b(t) (3) ここで、a(t) や b(t) は与えられた t の関数である。これを解いてみる。 d 「t や y(t) など」= t の関数 dt の形になれば、t で積分することによって解が得られるので、無理矢理そういった形を作って みる。(3) の両辺に µ(t)(後で上手く定める)をかけると、 y ′ (t)µ(t) + a(t)µ(t)y(t) = b(t)µ(t) ここで、左辺が d dt (µ(t)y(t)) になるとすると、 d (y(t)µ(t)) = y ′ (t)µ(t) + y(t)µ′ (t) = y ′ (t)µ(t) + a(t)µ(t)y(t) dt である。つまり、 µ′ (t) = a(t)µ(t) であれば良い。これは変数分離形なので、µ(t) が求められる。こうして求めた µ(t) を使えば、 d (y(t)µ(t)) = b(t)µ(t) dt なので、両辺を t で積分して、 ∫ y(t)µ(t) = b(t)µ(t) dt となって、y(t) を求められる。 注 1. いくぶん面倒な方法ですが、(Step 0: (3) の形にして、)Step 1: µ(t) をかけて、Step 2: 左辺が y(t)µ(t) の微分になるように µ(t) を定める。といったように、手順を理解しま しょう。 3 演習問題 7. y ′ (t) + y(t) = et , y(0) = 1 を満たす y(t) を求めよ。 演習問題 8. y ′ (t) + 2t y(t) = 2t を満たす y(t) を求めよ。 ■演習問題の答え 1. y(t) = − cos t + C (C は任意). 2. y(t) = −t cos t + sin t + 1. 3. y(t) = Cet (C は任意). 4. y(t) = log(et + C) (C は任意). 5. y(t) = C(t − 1) (C は任意). 6. y(t) = Ce−y(t)/t (C は任意). 7. y(t) = (et + e−t )/2 = cosh t. 8. y(t) = 1 + Ce−t (C は任意). 2 4
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