Page 1 Page 2 4-ー・3 (舌Lれ, エネルギー) 平面における相図 M 4.2

やま
かげ
あい
氏 名 ・(本 籍 )
山 影
相
学 位 の 種 類
博
学 位 記 番 号
理 博 第 2 6 1 5号
学位授与年月 日
3年 3月 2
5日
平成2
学位授与 の要件
学位規則第 4条第 1項該 当
研究科, 専攻
東北大学大学院理学研究科 (
博士課程)物理学専攻
士 (
理
学)
学位論文題 目
トポ ロジカル絶縁体 にお ける乱 れの効果 と量子相転移
論文審査委員
(
主査)
越
野
幹
人
教
授
倉
本
義
夫
教
授
平
山 祥
郎
教
授
粛
藤
理一郎
准教授
柴
田
尚 和
論
文
目 次
序論
1
.
1Z2 トポ ロジカル絶縁体 の初期 の理論
1
.
1
.
1量子 ホール効果か ら量子 ス ピンホール効果-
1
.
2 へ リカル端状態
1
.
1
.
1
.
3端状態 とコ ンダクタンス
1
.
1
.
4 時間反転分極 と Z2 トポロジカル不変量
1
.
2 テルル化水銀 (
Hg
Te
)量子井戸
1
.
3乱 れた Z2 トポロジカル絶縁体
1
.
4 本研究の 目的
第 2章
乱 れのない Hg
Te量子井戸
2
.
1反転対称 な Hg
Te
量子井戸
2.
2 ラシュバ ス ピン軌道相互作用
2.
3相 図
2.
4BHZ 模型 のパ ラメー ター
第 3章
有限 サイズスケー リングと転送行列法
3.
1有 限サイズスケー リング
3.
2転送行列法
3.
3 転送行列法 による三次元 ア ンダー ソ ン模型 の解析
第 4章
乱 れ た Hg
Te量子井戸 の相 図 と臨界指数
4.
1乱 れた Z2 トポ ロジカル絶縁体 の相図 と量子相転移
4.
1
.
1キ ャ リアがない ときの相図(
E-0)
4.
1
.
2E-0
.
5にお ける相図 とキ ャ リア依存性
-1
7
2-
1 2 2 3 ∠
U′
b o
O2 4 5 5 0
03 0
00
ノ0
ノ0
1 1 1 1 1 2 2 2 2 3
第 1章
准教授
3
4
叫
4.
1
.
3(
乱 れ, エネルギ ー)平面 にお ける相図
47
4.
2 自己無撞着 ボル ン近似 によるバ ン ドギ ャップの くりこみ
47
4.
2.
1 自己無撞着 ボル ン近似 の定式化
48
4.
2.
2 自己エネルギーの対称性
50
4.
2.
3 キ ャ リアが ないとき(
β-o
)
52
4.
3金属 ・Z2 トポロジカル/通常絶縁体転移 にお ける臨界指数
59
第 5章
55
4.
2.
4 フェル ミエネルギーが大 きい とき(
E-0
.
5)
まとめ
61
付録 A乱 れた格子系 と連続極 限
65
参考文献
69
出版論文
論
文
内 容
要
旨
トポ ロジカル絶縁体 はギ ャップ レスな表面状態 を もつ新奇 なバ ン ド絶縁体 であ る。近年、電荷 で はな く
1
]
。
ス ピンを運 ぶ表面 状態 を もつ Z2トポ ロ ジカル絶縁体 が理論 ・実験 の両面 にお いて注 目を集 めて い る[
この系 で はス ピンを運ぶ表面状態が存在 す るために、量子 ス ピンホール効果 に代表 され るス ピン輸送現象
や、電荷 に対 して磁気単極子 が応答 す るよ うな電気 ・磁気 の交差応答 が生 じることが理論 的 に示 され、 デ
バ イスへの応用 も期待 されて いる。
電気抵抗 の測定 によ り HgTe量子井戸 が ギ ャップ レスな端状態 を もっ ことが確認 されてい る[
2]
。 す なわ
ち、HgTe量子井戸 は二次元 の Z2トポ ロジカル絶縁体 で あ る. この系で トポロ ジカルな非 自明性 に起 因す
る現象 を確認 して い くことが期待 され るが、実験 はそれ ほど行 われていない。 その原 因の一つ と して、現
実 の系 には必 ず乱 れがあ り、 トポ ロ ジカル絶縁体 へ影響 を与 えて いる可能性 が挙 げ られ る。 トポ ロジカル
絶縁体 の さ らな る理解 のために も、理論 的 に乱 れの効果 を明 らか に してお くことが重要 であ り、本研究 は
これを 目的 とす る。
面 直方 向)成分 s
zが保
乱 れた HgTe量子井戸 に関 して幾 っかの先行研究 が されて い るが、 ス ピンの Z (
3,4,5]
。 しか し、現実 の系で はス ピン軌道相互作用が あ り、 また、
存 して いる場合 だけが議論 されて いる[
反転対称性が ないので、 s
zは保存量 で はない。本研究 で は Hg
Te量子井戸 を対象 に して、 トポ ロ ジカル絶
縁体への乱れの効果 と s
z非保存 の効果、 およびその競合効果 を明 らか にす る。
理論的 にはス ピン軌道相互作用 のあ るグ ラフェ ンも トポ ロジカル絶縁体 になる ことが知 られて いる。 こ
の系 は乱 れ によ る金属 ・絶縁体転移 の臨界指数 か ら、新 しい普遍性 クラスに属 す ることが示 唆 された[
6]
。
一方 、 Z2トポ ロ ジカル絶縁体 を表 す ネ ッ トワー ク模型 は従来 の普遍性 クラスに属 し、 グ ラフェ ンの場合
7]
。 この よ うに、 トポ ロ ジカル絶縁体 にお いて局在 の普遍性 に関す る疑
と矛盾 した結果 が得 られて い る[
問が提示 されて いるが、本研究 は これに対 す る回答 も与 え る。本研究 によ り得 られた結果 は以下 の通 りで
あ る。
Ras
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ba ス ピン軌道相互作用の導 出
乱 れの効果 を解析す るには格子系 を用 いた数値計算 が必要 であ る。先行研究 で は有効 的 に HgTe量子井
戸 を表 す 2軌道 の正方格子 が用 い られて い る。 本研究 で は s
z非保存 の効果 を議論 す るため に、Ra
s
hbaス
-1
7
3-
ピン軌道相互作用を もつ正方格子 の模型 を導 出 した。
s
z
非保存系の相図
z
非保存の模型 における、乱れによる金属 ・絶縁体転移の相図をフェル ミ準位がバ ン ドギ ャッ
導出された s
プの中心 に位置 している場合 (
キ ャ リアな し) に決定 した。金属相が Z2トポロジカル絶縁体相 と通常絶
縁体相 を隔てている。 また、乱れのないとき
(
〟-o
)に通常絶縁体であ って も、乱 れによ って Z2トポロ
ジカル絶縁体が誘起 され ることが分か る。以上か ら、バ ン ドギ ャップが小 さいときに乱れを増 や してい く
と
通常絶縁体- 金属- Z2トポロジカル絶縁体- 金属- 通常絶縁体
とい う多重転移が生 じることになる。金属 を経 由す る点が s
z
非保存 の効果である。 この リエ ン トラン トな
量子相転移が、 自己無撞着 ボル ン近似 によるバ ン ドギ ャップの くりこみか らも支持 され る。 さ らに、 フェ
ル ミ準位 に対す る依存性 も調べ、乱 れが弱 い領域 で は Ra
s
h
baス ピン軌道相互作用 によ り金属相が急激 に
拡が ってい くことが明 らかにな った。
金属 ・絶縁体転移 における臨界指数
z
が保存 し
従来 のア ンダーソン局在 の議論か ら、二次元 の Z2トポロジカル絶縁体 は、 ス ピンの Z 成分 s
.
7とな るべ きである0 本研究 において、乱 れた Hg
Te量子井戸 にお ける
ていないために臨界指数 は Y∼2
7と無矛盾であることが確認 された。す なわち、
金属 ・絶縁体転移 の臨界指数が初 めて計算 され、 γ∼2.
先行研究[
6】
で示 された新 しい普遍性 クラスの存在 は支持 されない0
Hg
Te量子井戸 は、 その作 り方 を変え ることで反転非対称性の度合 い、すなわち Ra
s
h
baス ピン軌道相互
作用 を制御で きる。 また、ゲー ト電極 を用 いることで も制御で き、 さ らにフェル ミ準位 も変化 させ ること
がで きる。 こうした高 い制御性 を活か して、実験的に も相図や臨界指数を決定 し、乱れ と反転非対称性 の
効果を確認す ることが期待 され る。
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7
4-
論文審査の結果の要 旨
トポロジカル絶縁体 (
TI
)は,通常 の絶縁体 と同様 にバルクの電子状態 にエネルギー ・ギ ャップを持っが,
そのギ ャップの中には表面状態に起因す るモー ドが必ず存在す るとい う著 しい特徴 を持っ。 この表面状態
自体 にはエネルギー ・ギ ャップが存在せず,単純な場合 には量子化 されたス ピン流の担 い手 にもなる。TI
の興味ある特性 は,理想化 されたモデルに対 して ここ数年来理論的にも実験的にも活発に研究 されている。
しか し実際の物質系 には常 に乱れがあるので,TIにおける乱れの効果 を知 ることも重要である。一般 に 2
次元電子系では乱れによるア ンダーソン局在によって,金属的な伝導が抑制 されるが,ス ピン ・軌道相互
作用 によって再 び金属性が回復す ることがある。TIにおける乱れ効果 につ いて もすでに研究が開始 され
てお り,い くつかのモデルで金属 ・絶縁体転移 の臨界指数が求め られている。 しか し,臨界指数の値 は研
究者 によって一致 してお らず,混乱が続 いていた。
山影相提 出の博士論文 は,2次元正方格子 の TIに注 目 し,既存 モデルに加えて界面 に垂直な電場か ら
生ずるラシュバ型 ス ピン相互作用を新 たに導入 し,乱れの効果を数値的に研究 した ものである。有限サイ
ズスケー リングを駆使 して,乱れとエネルギー ・ギ ャップ,さらに ドープされた電子のフェル ミエネルギー
などをパ ラメータとして相図を求めた。例えば,通常絶縁体のエネルギー ・ギ ャップを小 さい値 に固定 し
て乱れを増加 させ ると,通常絶縁体-金属- TI-金属-通常絶縁体 と 4回 もの相転移があることを見出
した。金属相 はラシュバ型 ス ピン相互作用がないと現れない。 さらに転送行列を用 いた研究 としては、世
界的に見て も最大級 の規模 に系を拡大 し,精度 よ く臨界指数 を求めた。 この結果 は,臨界指数 に対す る既
存の値の うち, シンプ レクティック対称性を有す る単純化モデルの結果を支持す る。
これ らの研究 は固体電子 の物性 に対 して新 しい知見を もた らし, 自立 した研究活動を行 うに足 る高度の
研究能力 と学識 を有す ることを示 した。 よって山影 相提出の論文 は博士 (
理学) の学位論文 と して合格
と認 める。
-1
7
5-