\ 、 書 .藤 篇鹸塘副 櫛孝) し曝 氏轡ボ∼もも誰\ パ 擦 い 猶 愛 卸界心 霧継 論文懇転筆貧 継 笹 論文内容要旨 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophiclateralsclerosis;ALS)は運動ニューロンが選択的, 進行性に変性する神経変性疾患である。全体の5-10%が家族性を示し,家族性ALSの約20% の原因遺伝子としてCu/Znsuperoxidedismutase(Cu/ZnSOD)が報告されている。本研究 ではALSの病態解明を目的に,当科にて既に作製されているH46R変異トランスジェニック (Tg)マウスと臨床経過の異なるL84V変異を導入したTgマウスを共通の背景にて作製して変 異蛋白の神経細胞障害性を比較検討した。 ヒトCu/ZnSOD遺伝子全長を.クローニングし,L84V点突然変異を導入した。これをBDF1 マウス受精卵にマイクロインジェクションすることによってTgマウスを作製した。生まれたマ ウスの尾からDNAを抽出し,PCR法,サザンプロット,ウェスタンプロットにて導入遺伝子 およびその発現を確認し,またCu/ZnSOD活性を検討した。 作製したTgマウスのうち,19系統にて遺伝子の導入が確認され,その中で導入遺伝子量,発 現量の高い3系統にて進行性の筋脱力と筋萎縮がみられた。H46R変異Tgマウスと生存期間が ほぼ同じ系統を比較した結果,本L84V変異Tgマウスでは発症から死亡するまでの期間が短 いことと変異蛋白の発現量が少ないことが明らかとなった。これはヒト家系における臨床経過と 共通するものであり,Cu/ZnSOD変異の種類の違いにより神経細胞障害性が異なることが明ら かとなった。また,L84V変異TgマウスではH46R変異およびこれまでに報告されている変 異Tgマウスと異なり,発症が前肢から始まる特徴が認められた。L84V変異Tgマウスの Cu/ZnSOD活性は生理的レベルとほぼ同様であり,L84V変異蛋白自体はCu/ZnSOD活性 をもたないことが示唆された。病理学的には他の変異Tgマウスに認められる脊髄の空胞変性所 見は認められなかった。空胞変性を示す他の変異TgマウスではCu/ZnSOD活性が上昇して いるので,この空胞変性形成にはCu/ZnSOD活性上昇が関与していると考えられた。変1生し た運動ニューロンに認められる封入体はL84V変異Tgマウスでも認められたが,発現量が多 く,早く発症する系統のほうがむしろ封入体は少なかった。このことは,封入体が神経細胞変性 の原因ではない可能性を示唆していた。 今回作製したL84V変異Cu/ZnSOD変異TgマウスをH46R変異Tgマウスと比較するこ とによって変異による神経細胞障害の違いが明らかとなった。また,このTgマウスはCu/Zn SOD活性に影響を与えず,空胞変性も少ないヒトのALSに近いモデルであると考えられた。今 後H46R,L84Vの2つの変異Tgマウスを比較,解析してゆくことはALSの病態解明に有用 であると考えられた。 一314一 審査結果の要旨 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophiclateralsclerosis;ALS)は運動ニューロンが選択的, 進行性に変性する神経変性疾患である。全体の5-10%が家族性を示し,家族性ALSの約20% の原因遺伝子としてCu/Znsuperoxidedismutase(Cu/ZnSOD)が報告されている。本研究 ではALSの病態解明を目的に,当科にて既に作製されているH46R変異トランスジェニック (Tg)マウスと臨床経過の異なるL84V変異を導入したTgマウスを共通の遺伝的背景にて作製 して変異Cu/ZnSOD蛋白の神経細胞障害性を比較検討した。 ヒトCu/ZnSOD遺伝子全長をクローニングし,L84V点突然変異を導入した。これをBDF1 マウス受精卵にマイクロインジェクションすることによってTgマウスを作製した。作製した Tgマウスのうち,19系統にて遺伝子の導入が確認され,その中で導入遺伝子量,発現量の高い 3系統にて進行性の筋脱力と筋萎縮がみられた。H46R変異Tgマウスと生存期間がほぼ同じ系 統を比較した結果,L84V変異Tgマウスでは変異蛋白の発現量が少ないにもかかわらず発症 から死亡するまでの期間が短いことが明らかとなった。これはヒト家系における臨床経過と共通 するものであり,Cu/ZnSOD変異の種類の違いにより神経細胞障害性が異なることが示唆され た。L84V変異TgマウスのCu/ZnSOD活性は生理的レベルとほぼ同様であり,L84V変異 蛋白自体はCu/ZnSOD活性をもたないことが示唆された。また,病理学的には他の変異Tg マウスに認められる脊髄の空胞変性所見は認められなかった。空胞変性を示す他の変異Tgマウ スではCu/ZnSOD活性が上昇しているので,空胞変性形成にはCu/ZnSOD活性上昇が関与 するのかもしれない。 今回作製したL84V変異Cu/ZnSOD変異Tg・マウスをH46R変異Tgマウスと比較するこ とによって変異による神経細胞障害の違いが明らかとなった。また,このTgマウスはCu/Zn SOD活性に影響を与えず,空胞変性も少ないヒトのALSに近いモデルであると考えられた。今 後H46R,L84Vの2っの変異Tgマウスを比較,解析してゆくことはALSの病態解明に有用 であり,本研究は学位に値する重要なものと考えられる。 一315一
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