消費者行動の理論(5) 支出最小化

「初級ミクロ経済学 3」(宮澤和俊)
第6講
2015/10/23
消費者行動の理論 (5) 支出最小化
消費者は,価格を所与として,ある効用水準を達成できる財の組合せの中か
ら,消費支出が最小となるものを選択する.
1. 等支出線
財 1 の価格を p1 ,財 2 の価格を p2 とする.各財を x1 , x2 だけ消費すると
きの消費支出 e は,
e = p1 x1 + p2 x2
(1)
である.消費支出 e が一定となる消費の組合せ (x1 , x2 ) の軌跡を等支出線と
いう.
等支出線の性質
(1) 右下がり.傾き −p1 /p2 .
(2) 支出水準 e が低いほど左下にある.
2. 支出最小化
目標とする効用水準を ū とする.消費者の支出最小化問題は次のように定式
化される.
min
x1 , x2
e = p1 x1 + p2 x2
subject to ū = U (x1 , x2 )
(2)
問題 (2) の主体的均衡は,図 2.20 の点 P で表される.
最適化の条件は,
M RS21 =
p1
p2
ū = U (x1 , x2 )
(3)
(4)
である.
(4) 式は均衡が無差別曲線上にあることを意味する.(3) 式は均衡において,
等支出線と無差別曲線が接していることを意味する.
(3), (4) 式を x1 , x2 の連立方程式とみなして解けば,均衡解 (x∗1 , x∗2 ) が求め
られる.
3. 補償需要関数と支出関数
主体的均衡における消費量 x∗1 , x∗2 は,価格 p1 , p2 と効用水準 ū の関数となる.
補償需要関数(compensated demand function)という1 .
x∗1 = d1 (p1 , p2 , ū)
(5)
x∗2 = d2 (p1 , p2 , ū)
(6)
補償需要曲線 x∗1 = x1 (p1 ), x∗2 = x2 (p2 ) は右下がり(図 2.21).例外もあ
る(例題 (2) 参照).
1 補償需要関数のことをヒックスの需要関数ともいう.効用最大化から導かれる需要関数
xi = Di (p1 , p2 , m) はマーシャルの需要関数という.
1
補償需要関数を (1) 式に代入すると,主体的均衡における消費支出も価格 p1 , p2
と効用水準 ū の関数となる.支出関数(expenditure function)という.
e∗ = p1 x∗1 + p2 x∗2 = E(p1 , p2 , ū)
(7)
支出関数は,一般的に,価格 p1 , p2 ,効用水準 ū の増加関数である.
例題
目標とする効用水準を ū とする.効用関数が次式で与えられるとき,補償需
要関数および支出関数を求めよ.
1
1
(1) U (x1 , x2 ) = x12 x22
©
ª
(2) U (x1 , x2 ) = min x31 , x22
略解
(1) 限界代替率を計算する.
M RS21
u1
=
=
u2
1
1
1 −2 2
2 x1 x2
1
1
1 2 −2
2 x1 x2
=
x2
x1
(3) 式より,p1 x1 = p2 x2 .これと,ū2 = x1 x2 から,
x∗1 =
x∗2
=
µ
µ
p2
p1
p1
p2
¶ 12
¶ 12
ū
ū
が得られる.支出関数は,
1
e∗ = p1 x∗1 + p2 x∗2 = 2(p1 p2 ) 2 ū
である.
(2) 無差別曲線は (3ū, 2ū) を頂点とする L 字型の折れ線で表される2 .明らか
に頂点において支出が最小となるので,
x∗1 = 3ū
x∗2 = 2ū
である.支出関数は,
e∗ = (3p1 + 2p2 )ū
である.
講義資料
2 (2)
http://www1.doshisha.ac.jp/˜kmiyazaw/
のような関数をレオンチェフ関数という.
2