NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE
Title
電気回路講義ノート
Author(s)
辻, 峰男
Citation
Issue Date
2014-04
URL
http://hdl.handle.net/10069/34606
Right
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第7章 フェーザによる交流回路の計算Ⅱ
フェーザを使った交流回路の計算で,特にインピーダンスやアドミタンスの計算,分圧と分流,
瞬時値とフェーザの関連,誘導性負荷と容量性負荷を中心に述べる。
○
インピーダンスとアドミタンスの定義
R, L, C , M から成る回路(電源はなし)があって,交流電圧と電流
の瞬時値をそれぞれ v(t ), i (t ) とする。v, i のフェーザ表示をそれぞれ
V , I とするとき, インピーダンス (impedance) Z ,アドミタンス
I (i)
V
(v )
Z ,Y
(admittance) Y は次式で定義される。
R, L, C , M
から成る回路
(1つでもよい)
Z
V
I
Y
,
I
V
Z , Y は,V , I を逆方向の矢印として定義していることに注意せよ。方向が図と逆だと,その分マ
イナスがつく。定義式より, Z  1/ Y である。また,インピーダンスはフェーザ V ,I に対して定
義されており,瞬時値 v,i に対しては定義されていない。よって,v (t )  Z i (t ) とか,Z  v (t ) / i (t )
のような式を書いてはいけない。アドミタンスも同じこと。更に,Z や Y は一般にフェーザ(複
素数)であるが,これの瞬時値表示というものはない。
,リアクタンス(分)
インピーダンス Z の実部を Re ,虚部を X e で表わし,それぞれ抵抗(分)
(reactance)と呼ぶ。アドミタンス Y も同様にコンダクタンス(conductance) G ,サセプタンス
(susceptance) B と呼ぶ。Re ,X e の単位は Ω (ohm),G,B の単位は S (siemens ジーメンス)である。
Z  Re  jX e
Re :抵抗分(実効抵抗)
Y  G  jB
G :コンダクタンス
X e :リアクタンス分(実効リアクタンス)
B :サセプタンス
Re ≧0, G≧0 であるが, X e , B は素子によって正,負がある。
○ 直列接続
V
(v)
V1
(v1 )
I
(i )
Z1
瞬時値について, v(t )  v1 (t )  v2 (t ) が成立する。これをフェ
ーザ表示すると,加算の場合はそのままフェーザ表示できるから,
V  V1  V2
・・・・①
である。インピーダンスの定義より,
V2
(v2 )
Z2
V1  Z1I V2  Z 2 I
①,②より
47
・・・・②
V  ( Z1  Z 2 ) I
・・・・③
従って,合成インピーダンスは,
Z  Z1  Z 2
・・・・④
また,②,③より
V1 
Z1
V
Z1  Z 2
, V2 
Z2
V
Z1  Z 2
・・・・⑤
となる。これは, V1 , V2 がインピーダンスの比に分圧されることを意味する。
○ 並列接続
瞬時値について,i (t )  i1(t )  i2 (t )
が成立する。
これをフェーザ表示すると,
I  I1  I 2
I
(i )
I1
(i1 )
V
(v )
Z1
Z2
・・・・①
であり,インピーダンスの定義より,
I2
(i2 )
V  Z1I 1 . V  Z 2 I 2
・・・・②
①,②より
I (
1
1

)V
Z1 Z 2
・・・・③
よって合成インピーダンス Z は,
Z
Z1Z 2
Z1  Z 2
または,
1 1
1
 
Z Z1 Z 2
・・・・④
となる。また,①,②より
I1 
Z2
I
Z1  Z 2
これは, I1 , I 2
,
I2 
Z1
I
Z1  Z 2
・・・・⑤
が,インピーダンスの逆比に分流されることを意味する。これらの式は,アドミ
タンス Y  1/ Z , Y1  1/ Z1 , Y2  1/ Z 2 を用いると④,⑤式は次のように表現できる。すなわち並
列回路のアドミタンスは各素子のアドミタンスの和である(この関係は,3つ以上の素子にも拡
張できる)。
I
Y  Y1  Y2
Y1
I1 
I
Y1  Y2
I1
Y1
Y2
, I2 
I
Y1  Y2
I
I2
Y2
Y
以上の式は形の上では抵抗だけの直流回路の式と全く同じである。もちろん矢印についても。
従って,覚えるのに苦労はしない。しかし,抵抗だけの直流回路が実際の瞬時電圧や瞬時電流の
関係であるのに対し,交流回路では,フェーザ表示された電圧や電流の関係であることを忘れな
いでもらいたい。フェーザを使う利点は,交流回路が直流回路のように計算できる点にある。
48
例題 1 図の回路のインピーダンス(抵抗分 Re とリアクタンス分 X e )とアドミタンス(コンダクタ
ンス G とサセプタンス B )を求めよ。ただし,電源の角周波数をωとする。
L
R
R
C
L
C
R
L
C
(a)
(c)
(b)
(a) 直列回路の合成インピーダンス Z は各素子のインピーダンスの和だから
Z  R  j L 
1
1
 R  j ( L 
)
jC
C
∴
Re  R, X e   L 
1
C
アドミタンス Y はインピーダンス Z の逆数なので
Y
G
1
1
R  j L 
jC

Re  jX e
R  jX e
1

 e2
Re  jX e ( Re  jX e )( Re  jX e ) Re  X e2
X
Re
, B 2 e 2
2
R  Xe
Re  X e
2
e
(b) 並列回路の合成アドミタンス Y は各素子のアドミタンス
の和だから
Y
1
1
1
1
)

 jC   j (C 
R j L
R
L
∴
G
1
R
, B  C 
より
c  jd (c  jd )(a  jb)

a  jb (a  jb)(a  jb)
ca  db
da  cb
 2
j 2
2
a b
a  b2
共役複素数を掛けると,
実部と虚部に分離できるよ。
1
L
インピーダンス Z
Z
G  jB
G  jB
1
1

 2

Y G  jB (G  jB)(G  jB) G  B 2
Re 
より
G
B
, Xe  2
2
G B
G  B2
2
(c) RC 並列回路に L が直列につながっているから,合成インピーダンス Z は
1
R
R(1  jCR)
R
CR 2
jC
Z  j L 
j
L
(
)
 j L 
 j L 




2
2
2
1
1
1
(
)
1
(
)
1
(
)








j
CR
CR
CR
CR
R
jC
R
∴
R
CR 2
, Xe  L 
Re 
1  (CR ) 2
1  (CR ) 2
アドミタンス(コンダクタンス G とサセプタンス B )は,インピーダンス Z  Re  jX e を用い
て, (a)と同様に求まる。
49
例題2
図の回路で,電源電圧のフェーザとインピーダンス Z1 , Z 2 , Z 3 が与えられている。電流の
フェーザ I1 , I 2 を求めよ。
I1
I2
Z2
Z1
I1 , I 2 は枝電流と呼ばれる。
Z3
E1
E2
(解)キルヒホッフの電圧則より
Z2
Z1
E1  ( Z1  Z 3 ) I1  Z 3 I 2
①
E2  Z 3 I1  ( Z 2  Z 3 ) I 2
②
E1
行列表示して,
 E1   Z1  Z 3
E    Z
 2 
3
I1
Z3
I2
E2
こう書くと I1 , I 2 は閉路電流と呼ばれる。
  I1 
Z 2  Z 3   I 2 
Z3
クラメルの公式より
E1
Z3
E2 Z 2  Z 3
( Z  Z 3 ) E1  Z 3 E2
I1 
 2
Z1  Z 3
Z3
Z1Z 2  Z1Z 3  Z 3 Z 2
Z3
Z 2  Z3
Z1  Z 3 E1
Z3
E2
( Z  Z 3 ) E2  Z 3 E1
 1
I2 
Z1  Z 3
Z3
Z1Z 2  Z1Z 3  Z 3 Z 2
Z3
Z 2  Z3
(注1)この問題には前提条件がある。それは,交流電源 E1 , E2 の角周波数  は両者で等しいと
いうことである。周波数が異なるとフェーザ表示が違う意味になり,チャンポンにして演
算はできない。また,具体的な抵抗,キャパシタンス,インダクタンスが与えられたら,
Z  R,1/ jC , j L などとすればよい。
(注 2) 閉路電流を用いるとキルヒホッフの電流則が自動的に入るので①式,②式をすぐ書ける。
枝電流を用いると Z 3 の電流が I1  I 2 であることを使って,①,②が導ける。一般に,問題
を解くのに必要最低限の枝電流は実質的に閉路電流と等しくなる。閉路電流は,一巡する電
流なので Z 3 に流れる電流も含んでおり,これで電流則が不要となる。
50
○ フェーザ図
電源電圧の瞬時値が e(t ) 
2 Ee sin( t   )
VR
①
I
,   arg E :初期位相(定数)
ここで, Ee :実効値(正)
R
のとき, e (t ) のフェーザ E は
E  Ee e
j
E
( E は  (ファイ)の向き)
VC
C
VL
L
②
電流のフェーザ I は
I
Ee e j
1
R  j ( L 
)
C
Ee

R 2  ( L 
1 2
)
C
e j (  )
ただし,
  tan 1
1
C
L 
R
( I は E を時計方向に  だけ回転した向き。   0 なら  だけ反時計方向に回す。
)
また,各素子の電圧のフェーザには次の関係がある。
抵抗: VR  R I
( VR は I と同じ向き,長さ VR  R I )
コンデンサ: VC 
I
jC
( VC は I を  / 2 だけ回転した向き,長さ VC 
1
I )
C
( VL は I を  / 2 だけ回転した向き,長さ VL   L I )
コイル: VL  j L I
電源電圧: E  VR  VC  VL
(注意
長さ E  VR  VC  VL は成立しない。
)
以上により,図のフェーザ図が得られる。向きと長さを変えなければフェーザは移動できる。
VC
VR 

L 
E
VL
VL

1
のとき
C
L 
VC
VR
 E
1
のとき
C
フェーザ図は,同じ向きとか,  / 2 だけ回転するとか,和や差によるフェーザ間の関係とかの決
まっていることを正確に書けばよい。電源電圧が①の様に時間の関数として問題に与えられてい
たら,上記の図になるが,時間の関係(時間 0 の定義)が何も与えられていない場合には,電圧
や電流のどれかの初期位相を 0 に選ぶ(時間 0 を決める)ことで,そのフェーザを正の実数にす
ることが出来る(これを基準フェーザと呼ぶ)。上記の例で,①式がなく回路図だけが与えられて
いたら,電流 I を基準フェーザに選んで I を実軸に合わせると,フェーザ図が書きやすい。する
と上記の I を実軸に合わせるように全体を回転させたフェーザ図が得られる。一般に,フェーザ
の長さやフェーザ間の角度が重要で,基準フェーザは書きやすいように選んでよい。
51
例題3
図のように,60Hz,100V の電源に,1Ωの抵抗と 10mH のコイルが直列につないであ
る。交流電流計
A
VR
~ の読みと交流電圧計 ~
VL
~ の読みを求めよ。
(注)このように電圧 100V と言うのは実効値(メータ meter
A
~
:計量器
VR
R
100V
,
の読み)のことである。実効値はフェーザの
絶対値である。
~
一般に単位は全てSI単位系(付録参照)に直して計算
60 Hz
VL
L
する。
~
この問題では,電源電圧の初期位相が与えられていないので,
電源電圧のフェーザは1つに決まらない。大きさは 100 である。
(解)電流計は導線,電圧計は抵抗の十分大きな絶縁物と考えてよいから次の回路で考える。
図より,電圧,電流のフェーザに対し次式が成立する。
E  VR  VL
VR  RI
VL  j LI
I
VR
R
VL
L
E
・・・・①
・・・・②
・・・・③
①,②,③より
I
E
R  j L
・・・・④
④の絶対値をとり,電流の実効値を求めると
I 
E
R  j L

E
2
R  ( L)
2

100
1  (2×3.14×60×0.01)
2
 25.7A
A の読みは, 25.7A である。
従って, ~
②,③式の絶対値をとり,電圧の実効値を求めると
VR  RI  R I  R I  1×25.7  25.7V
VL  j LI  j  L I   L I  2×3.14×60×0.01×25.7  96.8V
VR の読みは 25.7V , VL の読みは 96.8V である。
よって, ~
~
VR の読みと
~
VL の読みの和は 100V になっていないよ。これは,①式
~
より, E  VR  VL  VR  VL であるから当然さ。
E  100, VR  25.7, VL  96.8
E
(各フェーザの大きさ)は直角三角形

の各辺の長さに対応する。③で j
を掛けると,90 度回転する。右図は
VR
電流を基準フェーザ(実軸)にとった。
52
VL
I を90度反時
計方向に回転
I と同方向
I
フェーザ図
実軸
○
誘導性負荷と容量性負荷
図の交流回路で,インピーダンス Z は一般に
Z  R  jX
と書くことができる。ここで抵抗分 R は常に正である。
I
Z の偏角を  とおくと,
  arg Z  tan 1
Z
E
X
R
である。  はリアクタンス分 X の正負により
R
X 0
Z

jX
X 0

 0
jX
 0
Z
の場合
R
X>0 のとき >0
ゆうどうせい ふ
か
であり,このときの Z を誘導性負荷(inductive load)という。
じゅんていこう
X  0 のとき   0 であり,このときの Z を純 抵 抗 負荷という。
X<0 のとき <0
ようりょうせい
であり,このときの Z を容 量 性 負荷(capacitive load)という。
インピーダンスの定義より, Z 
E
である。両辺の偏角をとると
I
arg Z    arg E  arg I
となる。これは,電圧と電流の位相差が,インピーダンスの偏角と等しいことを示している。
インピーダンスの偏角  が正のとき, I の偏角は E の偏角より小さく,I は E より遅れるという。
逆に,インピーダンスの偏角  が負のとき, I の偏角は E の偏角より大きく, I は E より進むと
いう。つまり偏角の大きい方が進んでいるという。
詳しく述べよう。電源電圧の瞬時値が e 
E  Ee e j
2 Ee sin( t   )
①
のとき,e のフェーザ E は
ここで, Ee :実効値,   arg E :初期位相(定数)
電流のフェーザ I は
I
E e j
E
 e

Z R  jX
Ee
R2  X 2
Z  Z e j , Z  R 2  X 2 ,   tan 1
e j (  )
フェーザ I を瞬時値 i に直して,
i
2 Ee
2
R X
2
sin( t     )
②
53
コイルだから
誘導性なんだ。
X
R
誘導性負荷
純抵抗負荷
I
回路例
容量性負荷
I
I
R
E
R
E
E
R
C
L
インピーダンスとリアクタンス分
Z  R  j L
ZR
X  L  0
X 0
1
C
X  1/(C )  0
Z  R j
R, Z
Z
R
j L


j
Z
1
C
R
  tan 1
L
R
  tan 1
 0
>0
1/(C )
<0
R
波形(①,②式より)



i
t
e
e

t
i
t
0
0
0
e
虚
部
フェーザ図
E
虚
部
フェーザ図
E
虚
部
0

>0

実部
I は E より  遅れる。
0
フェーザ図
I
E

I
 I
i

 0
実部
I と E は同相。
0
<0
実部
I は E より  進む。
リアクタンス分 X の正負で  の正負が決る。 >0 だと電流の位相は電圧に対して  だけ遅れ,
<0 だと逆に  だけ進む。図の RL 回路の波形を見ると,  t (時間に比例)が少し経過してか
ら e は最大となり,それよりさらに  経過して i が最大なる。よって i は e より  遅れている。普
通,遅れや進みは,電圧を基準に電流が遅れるか,進むかを言う。遅れ負荷といえば,誘導性負
荷のことである。フェーザ図を見ただけで波形が頭の中にイメージできなければいけない。
54
例題4
図の回路で,電源電圧が, v (t )  100 2 sin(120 t )
で与えられるとき,以下の問い
に答えよ。ただし, R  2 , L  1/(60 ) H とする。単位を明記せよ。
(1) v (t ) の実効値はいくらか。
i
(2) v (t ) の周波数はいくらか。
R
(3) v (t ) のフェーザ V を求めよ。
v(t )
(4)R,L回路のインピーダンス Z を求めよ。
L
(5)電流のフェーザ I を求めよ。
(6)電流の瞬時値 i (t ) を求めよ。
(7) v (t ), i (t ) の略図を書け。
(解)(1)最大値の 1/ 2 だから 100V
(2)   120  2 f より, f  60 Hz
(3) V 
100 2 j 0
e  100 V
2
(このようにフェーザが実数になることもある。)
(4) Z  R  j L  2  j120
(5) I 
1
 2  j 2 []
60
V
100
100
50  j / 4
e
[A]



j / 4
Z 2  j 2 2 2e
2
(6) i (t )  50sin(120 t 

4
j2
2  j 2  2 2e j / 4
) [A]

4
(7)図のように表せる。電圧と電流は単位が違うので,大
2
きさの比較はできない。
100 2
 /4
v
50
0
i

2
フェーザ図
120 t

電圧と電流の大きさ(フェーザの
4
VR
長さ)は単位が違うので、比べ
られない。この場合 V が実数な
V
I と同方向
ので,横軸にとっている。
55
VL
I
I を90度反時計
方向に回転
例題5
図の回路で, e 
2 Ee sin(t   )  : 初期位相(定数)のとき,電流 i を求めよ。
また,瞬時値 e, i のグラフとそのフェーザ E , I を書け。
i
e
R
i
e
L
(a)
i
e
C
(b)
(解)
(c )
瞬時値の式
di
dt
eL
e  Ri
iC
de
dt
フェーザの式
E  j LI
E  RI
I 
E
R
I  jCE
E
I 
 E
j L
I
jC
e のフェーザは E  Ee e j だから


E j (  2 )
I e e
L
E
I  e e j
R
I
j (  )
2
 CEe
I を瞬時値 i にもどして
i
2 Ee
sin( t   )
R
i
2 Ee

sin( t    )
L
2

i  2 CEe sin( t    )
2


2
2
i
e

t
0
t
0
i
e
t
0
e
i
e と i は同相
虚
部
E
I
0

i は e より
2
虚
部
遅れる。
i は e より
実部
2
進む。
虚
部
E
E
I




0
実部
0
I
フェーザ図
フェーザ図
フェーザ図
56
実部
例題6
図の回路で, R に流れる電流のフェーザを求めよ。また,この電流の実効値が R に無関
係となるにはどのような条件が必要か。次に, R に流れる電流の瞬時値を求めよ。
i
I
e  2 Ee sin( t   )
フェーザ E  Ee e
(解)
L
e
E
j
C
R に流れる電流のフェーザを I とすると,
1
j
Ee e
jC

I
1
R / jC
j L 
R
1
jC
R
jC

Ee e j
j L 
R
jCR  1

R
V
(分流の公式利用)
1
jCR  1
Ee e j

j L( jCR  1)  R

I 
よって,
Ee e j
R (1   2 LC )  j L
Ee
R 2 (1   2 LC )2   2 L2
, arg I    
,   tan 1
L
R(1   2 LC )
I  I e j arg I
電流の瞬時値の定常解は
 i  2 I sin( t  arg I )
i の実効値 I が R に無関係となるためには, R の係数が 0 となればよいから,
1
1   2 LC  0
 L 
C
Ee
このとき, I 
となる。
L
*
定常解とは,電源のスイッチを入れて時間が十分経過したあとの解のことである。もともと
フェーザを使って求められるのは,定常解だけである。
57
図の R, L 回路で,電流の定常解がフェーザ表示を用いて求まることを説明せよ。
例題7
但し,電源電圧は, e(t ) 
2 Ee sin(t   ) ,  :初期位相(定数)とする。
(解)微分方程式を立てると,次式が得られる。
I
i (t )
2 Ee sin( t   )  Ri  L
R
E
e(t )
L
di
dt
①に対して,電源電圧が cos の場合には, i を解とすると
2 Ee cos( t   )  Ri  L
i  i  ji
・・・・①
di
dt
・・・・②
とおき,②  j ①より
2 Ee cos( t   )  j sin( t   )  R(i  ji )  L
 2 Ee e j (t  )  Ri  L
d
(i  ji )
dt
di
dt
・・・・③
i の定常解を,
i  2 I e e j (t  )
( I e , :定数で未知)
・・・・④
と仮定すると,④を③に代入して,
2 Ee e j (t  )  2 RI e e j (t  )  2 j LI e e j (t  )
 Ee e j  RI e e j  j LI e e j
・・・・⑤
 I e e j ( R  j L)
 I e R 2  ( L) 2 e j (  )
 Ie 
Ee
2
R  ( L)
2
但し,    tan
1  L
R
      (未知数が決定) ・・・・⑥
,
④の虚部が求める電流なので,オイラーの公式より
I e , は⑥で確定している。
i (t )  Im (i)  2 I e sin(t   )
・・・・⑦
を得る。一方,電圧,電流のフェーザ E , I の定義は e, i より
E  Ee e j
, I  I e e j
であるから,⑤式より次式が得られる。
E  RI  j LI
これより, i (t )  I m ( 2 I e
・・・・⑧
jt
)
で瞬時値が求まる(④,⑦より)。
フェーザを用いると,①,②,③,④を省いて,⑧式(⑤式と等価)からスタートできる。
③の解は,一般には,定常解(特殊解)+過渡解(同次方程式の解)で与えられるが,ス
イッチを入れて時間が経つと過渡解は 0 になる。第 15 章の過渡現象では,過渡解も求める。
58
自己インダクタンスが 10mH のコイルに交流電圧 30V (実効値)をかける。その周波数
問題1
が, (1)500Hz , (2)5kHz のとき,流れる電流の実効値を求めよ。
(答) (1) Z  j 31.4,
問題2
I  0.955A , (2) Z  j 314,
I  95.5mA
R と C の直列回路に 100V , 60Hz の電圧をかけたとき, C
I
にかかる電圧が 80V であった。 R にかかる電圧を求めよ。ま
た, R  1kΩ のとき, C は何 μF か。
(答)題意より,実効値 E  100
E  VR  VC  RI 
I
jC
フェーザ図より VR  60
VR  RI , VC 
問題3
I
VC
VR
R
VC
C
E
VC  80
より図のフェーザ図が得られる。
VR
よって, R にかかる電圧は 60V
∴
j C
,
VR
1
4


RC 3
∴
C  1.99μF
E
I
VC
図の回路で, G  V / E を求めよ。ただし, E , V は電圧のフェーザ(一般に複素数)で
ある。また,大きさ G ,
偏角(位相) arg G を求めよ。電源の各周波数を  とする。
L
C
E
R
V
(答)分圧を利用する。 L のインピーダンスを Z1 , C , R 並列回路のインピーダンスを Z 2 とすると
R
V
Z2
R
jCR  1


G 
2
R
E Z1  Z 2 j L 
R(1   LC )  j L
jCR  1
G 
R
R(1   2 LC )  j L

R
R 2 (1   2 LC ) 2  ( L) 2
arg G  arg R  arg( R(1   2 LC )  j L)   tan 1
(絶対値と偏角の計算は複素数の重要公式を見よ。)
問題4
図の回路について,各問いに答えよ.
R  2 , C  0.25F,
ただし,
v  200 2 sin(2t 

3
) [V]
59
L
R (1   2 LC )
(1)電源の周波数はいくらか.
i
(2)電源電圧の実効値はいくらか.
(3)回路のインピーダンスを求めよ.
R
(4)電源電圧のフェーザを求めよ.
v
(5)電流のフェーザを求めよ.
C
(6)電流の瞬時値を求めよ.
(答) (1) f  1/  Hz
(2) V  200 V
j / 3
(4) V  200 e
問題5
(3) Z  2  j 2 
(5) I 
V
100e
j
2
7
12
A
(6) i
 100sin(2t 
7
) [A]
12
フェーザを用いて,図の RLC 回路の瞬時電流を求めよ。電源電圧は,v (t )  Vm sin( t   )
とする。ただし,  (ファイ)は初期位相である。
i
(答)回路のインピーダンス
Z  R  j L 
R
1
1
)
 R  j ( L 
C
j C
L
v
C
1 2 j
 R 2  ( L 
) e  Z e j
C
ここで,   tan
I
問題6
1
L 
1
C
R
Vm e j 
V
V

 m e j (  )
j
Z
2Ze
2Z
より, i (t ) 
Vm
1 2
R  ( L 
)
C
sin( t     )
2
図の回路で,全体のインピーダンスを求め,誘導性,純抵抗,容量性のどれか答えよ。
また, v(t )  100 2 sin120 t [V] のとき,i (t ) を求め,t  0.1 での電流 i (0.1) を求めよ。図
中の数値はインピーダンス [] を表す。
i
1
1
1
(答)全インピーダンス Z  2  ,純抵抗
-j
i (t )  50sin(120 t  ) [A]
4

v
j
i (0.1)  50 / 2 A
60