「TOHO US セミナー2014」 参加報告 【日程】平成 26 年 11 月 1 日(土)~8 日(土)6 泊 8 日 【研修地】アメリカ ロサンゼルス 【研修会場・宿泊先】マリオットホテル コスタメサ 【主催】東邦ホールディングス株式会社 【概要】①経営コンサルタントの藤長義二氏とデュエン・サイガミ氏による監修のもと、 米国医薬品産業の動向と薬局経営について学ぶ ②ケーススタディの検討とグループディスカッションを行い、グループ毎に発表 ③大手チェーンドラックストア、独立薬局の視察・市内観光 等 【所感】 今回の研修地である「ロサンゼルス」は、アメリカ合衆国カリフォルニア州にある世界都市。 人口約 380 万人でニューヨークに次いで人口が多い。日本からは約 10 時間のフライトで、時差 は 17 時間(11 月 2 日より冬時間となり 1 時間増える)だった。研修期間中、朝晩は若干冷え込 んだものの、日中は長袖 1 枚で過ごせるくらいの穏やかな晴天に恵まれた。 (ロサンゼルス市内と宿泊先のホテル) 参加者は、薬局関係者が 15 名、東邦薬品関係者が 4 名の総勢 19 名の構成であった。薬局関係者 は私達以外、全員が薬剤師の資格を持っているようだった。 研修は、宿泊したマリオットホテル内で行われ、大手チェーンドラッグストアや独立系薬局の視 察、そして観光も組み込まれ、充実した 1 週間であった。 研修は、経営コンサルタント藤長義二氏とデュエン・サイガミ氏(通訳つき)による監修のもと、 活発な意見交換を交えた参加型形式で行われた。 アメリカに到着後間もなく、宿泊先のホテルでオリエンテーションが行われ、自己紹介や連想ゲ ームを実施し、お互いの親睦を深めた。長時間のフライトと時差のせいか、皆疲れている様子も 見受けられたが、さっそく今回の課題となるケーススタディの説明も受けた。 1 (到着後のオリエンテーションの様子) 今回の課題となるケーススタディの内容は、ある仮説の中で「自分達が、国際的によく知られた コンサルティング企業の1つになって、依頼を受けた薬局の収入を革新的に増加させ、イメージ を向上させるような臨床的な薬局サービスを開発するための戦略的な計画を考えなさい」という もの。 ケーススタディの答えは、その後の講義や視察から学んだことをヒントに考え、ディスカッショ ンを重ね、最終的にはグループ毎にパワーポイント資料にまとめて発表(持ち時間 15 分)すると いう流れであった。 いよいよセミナー初日、ホテル内のサロンという会議室的なところで朝食を取り、そのままセミ ナーへ突入した。講師は、経営コンサルタントの藤長氏とデュエン氏、そして通訳のシンさん(通 称)がついて、難しい専門用語も分かり易く解説してくれた。 内容は、アメリカ医療保険制度や薬局事情、薬剤師の役割など幅広く、難しい内容も多々あった が、日本と異なることばかりで驚きの連続だった。 グループ対抗戦で、発言するとポイント(ポイント数はデュエン氏が決めるが、的確なら高得点 がもらえる)がつくこともあり、積極的な意見交換が行われた。 そして最終的に講義や視察を重ね、最初に与えられたケーススタディの課題について、グループ ディスカッションを行い、グループ毎にパワーポイントにまとめて発表した。 私達のグループは、1つの案として、セルフメディケーションに着目して、食事・運動・スキン ケアなど様々な角度から、個々の患者プログラムを作成し提案するヘルスケア事業を考えた。し かし、発想は良いが、薬局のコアビジネスとして成立するか、顧客のベネフィット(メリット) になるか、採算がとれるかなどの厳しい指摘を受けた。 (セミナーと各グループ発表の様子) 2 また、視察では、大手チェーンドラッグストア(Rite Aid、CVS)と独立系薬局を見学した。 アメリカでは「テクニシャン」と呼ばれる人が、事務や技術的な仕事をほとんど行い、薬剤師は 監査業務、Drや患者とのコミュニケーションのみを行うと仕事がはっきりわかれていた。また、 薬剤師は予防接種ができることも日本と大きく異なる点である。視察中、希望者はインフルエン ザの予防接種を受けることができた。(約 3000 円程度) CVS(大手チェーンドラッグストアの 1 つ) 調剤はお店の一番奥にあり、その周辺には、豊富な品揃え(OTC、介護用品、化粧品など)と血 圧計などの測定器が設置されていた。調剤以外の収入源として、いかに商品を購入してもらうか の戦略のひとつとして想像できるが、とにかく入口から一番遠い場所にあった。 (CVS の外観・豊富な品揃えの OTC と無料血圧計) 独立系の薬局見学では、電子処方箋でオートメーション化されている薬局を見学。チェーン店で はできない情報の共有化が可能で、レセコンに入力すると、全自動分包機にデータが飛んで、処 方日数分だけ薬の入ったボトルがでてくる。1 つ 1 つにラベル(名前・生年月日・副作用など) を張るため、薬袋的なものは存在しなかった。 (独立系薬局①) もう 1 つの独立系の薬局は、施設の調剤専門で薬を配送している薬局であった。 イメージとしては、倉庫のような建物でオートメーション化された工場のような印象である。日 本とは異なり、分包機(DOSIS)で専用シートに1剤ごとにパッケージしていた。 約 3000 人の調剤を行い、スタッフは約 60 人、そのうち薬剤師は 8 名とのことだった。 3 (独立系薬局②) また、研修の合間には、ロサンゼルス市内の観光や食事会もあり、参加者との親睦を深めるとて も貴重な時間であった。そして、最後には、ひとりひとりに終了証が配られ、同時に達成感も得 られた。 (ロサンゼルス市内観光と食事風景・終了証) アメリカと日本では、医療保険制度が全く異なり、日本で当たり前の国民皆保険制度がない。 多くは、雇用主が補償する、または、個人で購入する民間医療保険に加入している。また、その 他 65 歳以上の高齢者・身体障害者に対する「メディケア」、低所得者に対する「メディケイド」 といわれる公的医療保険があるが、この公的医療保険の対象とならず、民間保険にも加入できな い、いわゆる無保険者が総人口の 16%も存在し、これらの割合も年々増加傾向にあり、大きな社 会問題となっている様子。 また、医療コストを減らすための方策として「マネージドケア」が存在し、これは、医療へのア クセスおよび医療サービスの内容を制限する制度のことで、保険会社が間に入り決定権を持って いた。この制度は、日本と全く異なり、薬局もこの支配下にあるようだった。 日本では、 「患者の医師の選択」や「医師の患者に対する治療(薬)の選択」も自由なのが当たり 前であり、これらがマネージドケアによって制限されているアメリカの常識を知って非常に驚い た。しかも、医療を平等に受けられる保障がないのは、とても不安に感じた。 4 このように、アメリカでは、保険は1つの商品であり、国民全員に平等に与えられ保障されてい るものではないため、国民にとっては、セルフメディケーションが必要となっている。 このことは、日本でも重なる部分があり、これから高齢化社会を迎えるにあたり、保険制度が破 綻するかもしれない中で、管理栄養士として、このセルフメディケーションの部分を薬局でどう 展開していくのかを考える必要性を強く感じた。 またアメリカでは、薬剤師は、医師や看護師などの医療チームの中で、対等の立場で医療に携わ っていた。それだけ、専門知識をしっかりと身につけて自信を持って活躍していた。 国の背景が違うこともあるが、少なくとも専門家として疾病や薬に関する知識や行動力が必要で あると感じた。 私は、今回のセミナーに薬剤師ではなく、管理栄養士という立場で参加することに、正直不安を 持っていた。しかし、講師の藤長氏やデュエン氏が、栄養士(nutrition)という立場で接し意見 を聞いてくれたこと、そして薬剤師の方々よりたくさんの事を学び、自分も 1 人の専門家という 立場で参加できたことで、自分の存在意義などを深く考えるとても良い機会となった。 今回、US セミナーに参加させていただき、アメリカの医療業界に携わる様々な薬局、そしてそ こで活躍する医療従事者を見て話を聞いて体感することで、日常では学べないたくさんの事を学 んだ。これからは、もっともっと視野を広げて、更なる可能性を求めて前向きに努力していきた いと感じた。 今回はこのようなセミナーに参加させていただき、またとても貴重な経験ができたことに感謝い たします。有り難うございました。 報告者 店舗運営管理部 健康管理指導課 山中裕子 5
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