2015.1JM成果研修 - Enter Innovation Inc.

成果を高める
研修の考え方・やり方
第 1 回 研修の成果をどう定義するか
研修担当者に共通する悩み
第1回
研修の成果をどう定義するか
第2回
研修企画の進め方と
研修会社とのコミュニケーション
第3回
研修前にやるべき受講者の動機づけ
第4回
研修後の効果検証と
現場でのフォローアップ
第5回
ビジネススキル関連研修の事例
第6回
意識改革・課題解決関連研修の事例
株式会社エンターイノベーション
代表取締役 山 本 直 人
なりません。
値や関係性が生み出されることも
あります。例えば,個人や特定の
「もっと効果的な研修を実施し
たい」
「研修をきっかけに成長し
研修の 3 つの意義
部門だけでは,考えにくいプラン
てほしい」
。人事教育に携わる担
そもそも研修は何のためにやる
が出てくることもあります。困難
当者の方は,誰しもそう考えてい
のでしょうか。研修の意義を考え
な自己課題・組織課題の解決策や
ます。実際に研修を実施して,学
てみましょう。明確な答えがある
新しい商品・サービスのアイデア,
習した内容や講師のファシリテー
わけではありませんが,私がこれ
社内人脈の形成などがそれに当た
ションに対して高い満足度が得ら
まで300以上の研修を企画・実施
ります。その創造する機会がどれ
れたり,育成プロジェクトが着実
してきて,帰納的に研修の意義と
くらい有意義に構築されているか
に進んだりすることは比較的よく
して解釈し,私自身が仮説として
がポイントとなります。
できていると思われます。しかし,
考えていることを整理します。
3.研修は「決断する場」である
研修自体の評価が高かったとして
1.研修は「気づく場」である
研修で気づきが生まれたら,行
も,研修の成果が十分に達成され
仕事のスキルアップ,知識強化,
動を変えなければなりません。現
たという話はあまり聞きません。
組織活性化など,研修の目的がど
場での行動なくして,成果を出す
その状況で研修担当者は,
「研修
のようなものであれ,新しい知識・
ことはできません。学んだことか
をもっと効果的な内容にできない
ノウハウ,自己課題,組織の期待,
ら,何を現場で実践するかを明確
のだろうか」
「もっといい研修会
ものごとの本質,あるべき姿,現場
にしないといけません。研修では,
社や講師がいるのではないか」
「現
の課題,具体的な方法,価値観の違
アクションプランを最後に立てる
場の成果につなげるためには何が
いなどを講義やグループワーク,ア
ケースも多いと思いますが,その
必要なのか」などといった悩みが
クティビティによって学ぶことがで
プランの精査と実践度合いは十分
少なからずあるのではないでしょ
きます。研修を通じて,自分に落と
な検証が必要となります。研修時
うか。人材教育の重要性,研修の
し込める人と,ただ情報を知るだ
の受講者の決断が影響してきます
必要性は組織内でも十分に認識さ
けの人では教育効果が変わってき
ので,どれくらいの動機づけがで
れています。しかし,人材教育は
ます。その違いとなる要因は,研
きているかがポイントとなります。
非常に時間がかかるテーマであ
修で何に,どれだけ深く気づけた
り,研修自体がイベント的性質を
かという点になります。
他にも,現場の問題を解決する
持っている以上,その時間だけで
2.研修は「創造する場」である
場,実践的なトレーニングをする
は期待通りの成果を出すレベルま
ほとんどの研修でディスカッシ
場,モチベーションを高める場,
でには至らず,難易度は非常に高
ョンや発表を通じたコミュニケー
一体感を生み出す場,成功体験を
くなります。そのことを人材育成
ションの機会が設けられていま
する場などの意義も考えられるか
の本質として踏まえたうえで,研
す。先ほど述べたように,気づき
もしれません。研修の目的から考
修を改めて見直していかなければ
が生まれるのと併せて,新しい価
えると,概ね上記の 3 つに集約さ
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人事マネジメント 2015.1
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株式会社エンターイノベーション 代表取締役 山 本 直 人
Naoto Yamamoto 1978年生,熊本県出身。九州大学経済学部経済工学科卒業。
㈱USEN,企業研修企業にて営業職を経験後,㈱ドリコムの営業部門立ち上げに参画。
社内ブログ事業の事業部長に就任。2008年㈱エンターイノベーションを設立し,シ
ンプルですぐに使えるものをコンセプトに独自の学習メソッドを開発。現場の気持
ちが分かり,成果を高める研修講師として,年間150回以上の研修,講演,コンサ
ルティングを実施。複数社の企業経営にも携わる。著書に『すぐ成果を出す人の仕
事のやり方・考え方』(明日香出版社)がある。 http://www.enterinnovation.co.jp
れるのではないでしょうか。
目は,Lv. 4 の成果達成において
検証や,意識的に行ったことを言
反面,売上を上げる,商品を作
は,正しく有益な行動が要因とな
語化することで,
定量的かつ定性的
る,
スキルアップするといった
「業
り,結果的に成果を高めることに
な情報を把握することができます。
務上の直接的成果や大きな成長を
なるためです。
現場で何を新たにやったのか
実現する」ことは,研修の場だけ
それでは,研修の成果を具体的
どれくらい現場の行動が増えた
では困難です。そのため,研修は
にどう定義するかを整理します。
のか
あくまでそのきっかけにしかなら
先ほど,研修の 3 つの意義を説明
何の行動がどのように変わった
ないことを前提として認識しない
しましたが,その視点に沿って研
か など
といけません。研修は,「現場で
修の成果を定義していくことで,
成果を出すためのきっかけの場」
目的に沿った成果基準を見出すこ
とするならば,そのきっかけを最
とができます。
現場での行動を起こした結果,
大化することに重要な意義がある
1.【研修終了時の成果】気づきの
得られた成果の視点から定義しま
といえるでしょう。
深さと量
3.
【行動後の最終的成果】実務の
成果・個人の成長
す。行動変容の結果を具体的に把
研修の最中や研修終了時の成果
握することができます。一定の期
研修の成果を定義するための
3 つの視点
を受講者の気づきの視点から定義
間が経った後に,現場や受講者の
します。研修そのものの効果を把
ヒアリングが必要となります。
ドラッカーの有名なマネジメン
握できます。研修アンケートから
具体的にどんな問題が解決され
トに関する重要な 5 つの質問の
もある程度把握はできますが,非
たか
1 つに「われわれにとっての成果は
常に定性的な指標ですので,気づ
何に関してどれくらい成果があ
何か」というものがあります。研
きの深さを把握するためには,研
ったか
修においても同様に考えると,
「研
修のプロセスを十分に観察する必
何ができるようになったか など
修担当者にとっての成果は何か」を
要があります。
決めることが,研修企画運営の成
企画側の意図したメッセージが
以上, 3 つの視点で成果の定義
果を向上するうえでも,重要なテ
どれくらい理解されたか
を分けておりますが,できるだけ
ーマになるのではないでしょうか。
自分の課題をどれくらい認識
具体的に定義することが必要で
また,研修効果測定で活用され
し,何が決定,決断されたのか
す。成果検証のことも考え,数値
る「カーク・パトリックの 4 段階
新しい知識や知恵がどれくらい
化,具体化の作業が必要になりま
評価(Lv. 1 研修満足度・Lv. 2 学
増えたか など
す。また, 3 つそれぞれ非常に強
習到達度・Lv. 3 行動変容度・Lv. 4
成果達成度)」がありますが,そ
2.【現場における成果】現場での
行動の変化
い関連性がありますが,気づきの
結果であり,成果や成長の要因で
の評価軸の中でも,重要とされて
研修時の気づきや決断がどれく
もある「2.現場での行動の変化」
いるのがLv. 3 の行動変容度です。
らい実際に行動に変わったかの視
が重点項目になります。この成果
その理由は 2 点あります。 1 点目
点から定義します。現場における
を定義するスキルが研修企画運営
は,どれだけ満足し,学びが多くて
行動のみにフォーカスした指標と
力の向上にもつながります。具体
も,最終的に行動が変わらなけれ
して確認することができます。研
的な検証方法は,効果測定の第 4
ば,成果は出ないためです。 2 点
修で作成したアクションプランの
回で詳しくご説明いたします。
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