「フロントエンド売り場に力を入れる米国のドラッグストア」

「フロントエンド売り場に力を入れる米国のドラッグストア」
Excell-K
(株)ドムス・インターナショナル
代表 松村 清
最近の米国ドラッグストアはフロントエンド売り場(調剤薬以外の売り場)に大変力を入
れている。下記の商品構成表からも分かるように、2012 年度のドラッグストアは調剤薬が
64.3%の販売構成比を占めているが、数年前には 70%を超えていたのがここまで落ち、逆
にフロントエンドが構成比を伸ばしている。今後フロントエンドの構成比は現在の 36%か
ら 50%を目指していくと考えられている。フロントエンドに力を入れている状況を述べて
みよう。
【チェーンドラッグストア商品構成】
(2012 年度)
カテゴリー
調剤薬
OTC&ヘルスケア
食品
パーソナルケア
化粧品/フレグランス
消耗雑貨
ジェネラルマーチャンダイズ
事務用品/文房具
合計
売上金額
(億ドル)
1682
288
275
152
81
68
52
18
2615
構成比(合計)
(%)
64.3
11.0
10.5
5.8
3.1
2.6
2.0
0.7
100.0
構成比(調剤除く)
(%)
―
30.8
29.4
16.2
8.7
7.3
5.6
2.0
100.0
1) 店舗コンセプトを HBC から HDL へ転換
まず、店のコンセプトを HBC(ヘルス&ビューティーケア)ストアから HDL(ヘルス&デ
イリーリビング = デイリーリビングという毎日の生活に必要な商品の品揃え)ストアに転換
し、フード(ファーストフード、イートイン機能、野菜・果物、リカー、各種ジュース、焙
煎したてのコーヒー、アイスクリーム、シェイク)の強化、魅力的なビューティーケア売り
場そしてウエルネスに焦点を当てたヘルスケア売り場作りをし、フロントエンドが非常に魅
力的になっている。
かつてのドラッグストアのプロトタイプは、調剤専門店にコンビニエンスストアがついたス
タイルであった。しかし現在はフードに力を入れ、構成比で OTC に次いで第 3 位だが、近い
将来 OTC を追い抜くのは間違いない。1960 年代のドラッグストアは、店内にファストフー
ド機能を持つソーダファウンテンコーナーがあり、それらを入れて食品合計で全体の 3 割近
くの販売構成比を持っていた。現在のフードの強化は 50~60 年前のドラッグストアのスタイ
ルに戻りつつあるのだ。全米第 2 位のドラッグストア CVS では食品を強化したアーバンクラ
スタースタイルに改装した店舗は粗利益が 9%も増加している。
1
2) ウエルネスアプローチの強化
食品の強化と同時に力を入れているのが、ウエルネスアプローチだ。オーガニックやグルテ
ンフリーの食品や飲料、ホメオパシーメディシン(極度に希釈した成分を投与することによ
って体の自然治癒力を引き出すという思想に基づいて病気の治癒を目指す行為で、同種療法、
同毒療法と呼ばれる)、パーソナルケア、介護・看護用品、ライトフィットネス商品、サプ
リメント、ペットビタミンの品揃えやカウンセリングを強化している。ライトエイドではポ
イントクラブに加入している人は、500 ポイントでヘルスチェックを受けられる。またイン
ストアクリニックを強化してヘルスケアのワンストップショッピング機能を強化している。
そのような状況の中での新しい取組みを紹介しよう。
a) ライトエイドのオムニチャネル・ビジョンケアセンター
ライトエイドのウエルネスコンセプトストアでは、インターアクティブな「ビジョンセン
ターキオスク」を店内に設置している。そこでメガネのフレームを選択し、機械で視力を
測り、メガネの処方箋を出してもらい、それに応じてレンズ(コンタクトレンズも含む)
をオーダーし、家に郵送してもらう仕組みだ。このキオスクを調剤室コーナーのそばに設
置してあるので、薬剤師とも相談し易いし、顧客の滞店時間も長くなる。またネットで選
択したメガネフレームは、試用のために家に 4 組送ってもらうことも出来る。
b) ウォルマートのヒューマナ・バイタリティプログラム
ウォルマートは 2012 年秋にヒューマナ・バイタリティ(Humana Vitality)とバイタリ
ティ・ヘルシーフードプログラムに関してのパートナーシップを結んだ。このプログラム
に参加しているメンバーは、定期的なエクササイズ、減量、健康に良い食べ物の摂取をす
るとポイントがもらえる。これらのポイントはホテルの宿泊券、映画の入場券や商品と引
き換えることができる。またヒューマナ・バイタリティメンバーは、ウォルマートの「グ
レート・フォー・ユー」アイコンで選択された商品を購入すると、購入金額の 5%のポイ
ントがもらえ、次回のショッピングから使える。このようにヘルスケアペイヤー(保険会
社など)が小売業と組んで、加入者を健康的な生活に導くプログラムを導入し始めている。
c) ウォルグリーンの無人・有人カウンセリング
人は風邪やインフルエンザから更年期障害に至るまで様々なヘルスケアの問題を抱えて
いる。ウォルグリーンはそれらの問題の解決方法に関して色々な方法で答えている。代表
的な疾患の症状と対応方法を記した小冊子が調剤室前やエンド脇に設置されている。OTC
コーナーではテレビスクリーンで解決方法を知らせている。また簡単な怪我などへの対処
方法は、
QAPOP を使用して 3 ステップで答えている。
対面で相談に乗って欲しい場合は、
薬剤師が、そしてもっと専門的なことになるとインストアクリニックの上級看護師や、提
携している米国で最も信頼の高いメイヨクリニックのヘルスケアの専門家が対応してい
る。
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d) ソロヘルスは小売店舗にヘルス・スクリーニング機器を設置
ヘルスケアテクノロジー会社のソロヘルスは、セルフサービスヘルスキオスクをスーパー
マーケット最大手のクローガーやウォルマートなど大手小売業の中に設置し始めている。
人々は糖尿病、肥満、高血圧、骨粗鬆、視力、聴力などのチェックをその機器ですること
が出来、その結果とフォローアップケアの方法が書類で渡される。すでに 2 千万人以上の
人々がこのキオスクを利用しており、今後さらに増加すると予測されている。
3) アップスケール化したビューティーケアコーナー
数年前までは化粧品コーナーの成長は、メーカーや小売業のパッケージ戦略やキャンペーン
によるところが大きかった。しかし近年はテクノロジーの発達によって大きな変化が見られ、
店内のビューティー体験が大きな要素となっている。調査によると、60%の人々はビューテ
ィーとパーソナルケア商品をオンラインで購入したと答えているが、オンラインで購入出来
るようになると、人々は店舗におけるビューティーケアの買い物に対してより多くのこと、
つまり体験を求めるようになっている。そのためドラッグストアも単に商品を並べているだ
けでなく、店における体験そして店の雰囲気を大事にせざるを得ないのだ。
そのため、ビューティーのデスティネーションストアたるための高価格帯の品揃え、照明や
鏡をふんだんに活用した素敵なアップスケールの装飾、プロのコスメティシャンによるカウ
ンセリングサービス、ネイルサロン、ヘアサロンやメークアップサロンの設置、そして自分
の肌診断が出来る機器やバーチャルメイクオーバー機器(自分の顔をスクリーンに映し出し、
試してみたい商品をスキャンするとスクリーン上の自分の顔にその化粧品を使用した姿が映
し出される)が設置され、体験した上で購入出来るようにしている。またウォルグリーンの
ルックブティックコーナーを展開している店舗によっては、店内に cosmetic.com の機能を壁
面に設置し、店内に無い商品をこのサイトを活用して購入できるようにしている。また化粧
品専門店のセフォラも、店舗によってはスキンケア IQ キオスクが設置され、顧客に最も合
った商品が見つけられるようなテクノロジーを導入している。
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