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(様式 11)
平成
学
位
論
東京農工大学大学院工学府長
文
審
査
要
26 年
2 月
旨(課程博士)
殿
審査委員 主査
鈴木 康夫
印
副査
宇野
亨
印
副査
田中
聡久
印
副査
有馬
卓司
印
副査
梅林
健太
印
副査
電子情報工学専攻
学位申請者
氏 名 TIIRO
申請学位
論文題目
博
17 日
印
平成 23 年度入学 11834205 学籍番号
Karri Samuli
士(工学)
MIMO コグニティブ無線における推定誤差を考慮した干渉回避技術
論文審査要旨(2000 字程度)
本論文は,無線通信において最重要課題である周波数逼迫問題を解決するため,周波
数共用法をターゲットとしている.無線通信においては周波数帯が無線システムに割り
当てられ,初めてその運用が可能となる.しかし,近年の無線技術の発展と無線サービ
ス需要の高まりにより、新規無線システム(SU: Secondary User)に割り当てる周波数
の不足から、新たな無線サービスの展開が困難と成りつつある.一方で、既に割り当て
られている既存無線システム(PU: Primary User)は常時その割り当てられた周波数を利
用しているわけではなく、空間(距離),時間の次元からの周波数利用を観測すると、そ
の稼働率は 10%から 30%と低い無線システムが多数存在する.そこで、新たな周波数の利
用形態として、PU の未使用周波数を SU が一時的に利用して新規無線サービスを展開する
周波数共用が注目を集めている.本論文では、特に柔軟性・効率性が期待できる周波数
共用法として、MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)技術を用いた周波数共用法に注
目した.
第一章「序論」では、上記の周波数逼迫問題、周波数共用法の関連研究が紹介されて
いる.特に、MIMO 技術を用いた周波数共用法の関連研究を紹介し、その課題を明らかに
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している.具体的には、SU は PU の利用している実際のストリーム数(到来波数)、および
SU と PU 間の通信路のチャネルをより正確に知る必要がある.にもかかわらず、これまで
の多くの研究では上記の情報を既知でとし、その上で MIMO 技術を利用した周波数共用に
より SU がどの程度のパフォーマンス(通信路容量)を得られるかなどが評価されていた.
しかし実際には、到来波数と通信路の推定を行った場合には、その推定誤差が PU への干
渉増大の原因となる.周波数共用において最も重要な PU の保護を達成するためには適切
な拘束条件の設定と、それを満たす技術の開発が必要となる.
第二章では、課題の一つである到来波数の推定法として、高精度な推定法を提案して
いる.周波数共用では、SU は PU からのサポートは得られないため、ブラインドで高精度
に推定等の処理を行う必要がある.そこで、協調型の到来波数推定法を提案している.
到来波数推定には従来の MDL を活用しているが、その推定値の特性を考慮した新たな端
数推定法を実装することで、より PU の保護を高めることができ、また高精度な推定が達
成できることを示している.
第三章では、通信路の推定誤差による PU への与干渉を考慮した場合の SU の送信電力
の設定法を検討している.ここではブラインド型の通信路推定を用い、その誤差に起因
する PU への与干渉電力の解析を行っている.
MIMO 通信において用いられるプリコーディングの影響を解析的に求めることは困難な
ため、近似による与干渉電力の解析を行った.計算機シミュレーションの評価により、
本近似法は、PU の保護をより確実にする効果があることが確認でき、その解析の妥当性
も明らかにすることができた.
第四章では、到来波数の推定誤差、及び通信路の推定誤差を同時に考慮して PU の保護
を可能とする送信電力決定法を提案している.二つの誤差を同時に考慮した PU への与干
渉電力の解析は非常に困難である.そこで,到来波数の推定誤差とプリコーディングに
よる通信路推定誤差をワーストケースとして PU への与干渉電力を推定することができる
近似解析を行った.また,この近似が PU に対する保護を悪化させることなく,かつ SU
のスループットの劣化も少ないことから,非常に実用的であることを計算機シミュレー
ションにより確認した.
第 5 章では,本論文の貢献と,得られた知見がまとめられている.さらに,今後の課
題についても言及した.
本研究により,これまで困難視されていた MIMO 技術を用いた周波数共用の実現性が大
幅に高められた.特に,周波数共用では,PU の保護が必須であり,そのための課題であ
る到来波数と通信路の推定法,及びその誤差の取り扱い方について新たな知見を示した.
特に,MIMO 技術は大容量型の将来の無線通信では必須の技術であり,本研究による学術
的研究成果の,将来無線通信分野への貢献度は極めて高い.よって,博士号を付与する
に値すると判定した.