RZ光パルスを用いたUWBインパルス無線通信における空間雑音の評価

RZ光パルスを用いた
UWBインパルス無線通信における空間雑音の評価
電子システム工学専攻 博士前期課程1回生
稲本 和久
光エレクトロニクス研究室
Kazuhisa Inamoto
研究背景と課題
近年大容量な無線通信が求められるなか,遠距離・大容量伝送を得意とする光ファイバと移動体通信が可能な無線通信を組み合わせた光無線融合システムが注目されている.我々は
RZ光パルス信号の帯域を広帯域にわたって切り出すことにより通信を行うUWBインパルス無線(UWB-IR)通信を無線通信部分に用いることを検討している.
UWB-IR通信とは
RZ光パルス信号を超広帯域で切り出すことで搬送波を用いず通信を行う通信方式
特徴
アプローチ・目標
-40
・ UWBハイバンド(7.25~10.25GHz)帯を用いて,ビット
レート3.3GHzでの通信を検討
・ フェージングによるUWBハイバンド帯への影響の
評価を行う
-50
EIRP[dBm/MHz]
・高速な通信が実現可能
・送受信系ともに簡単な構成で実現できる
→送受信系の小型化、低コスト化、低消
費電力化が実現可能
・送信電力密度が-41.3dBm/MHzに制限される
→遠距離の通信に向かない
課題
本研究で使用
-60
-70
3.4~4.8GHz
UWBローバンド 7.25~10.25GHz
UWBハイバンド
-80
-90
-100
0
フェージング等の空間雑音の評価を行うことで
通信品質の向上の検討
・雑音による信号劣化の可能性
2
4
6
8
10
12
周波数[GHz]
日本でのUWBスペクトルマスク
→空間雑音による影響の検討
取組状況
アイパターン
の評価
シミュレーション
RZ光パルスを用いたUWB-IR通信
の無線部分における空間雑音とし
て周波数選択性フェージングによ
る影響をシミュレーションにより評
価した
アイ開口幅中央に
おけるビット値1の振
幅の最小値とビット
値0の振幅の最小値
の差をアイ開口幅と
する
シミュレーション構成図
アイ開口・スペクトル特性
減衰の検討
反射波に減衰を施し、アッテネータの値に対するアイ開口幅の特性を検討する
2
1.8
1.6
1.4
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
2
アイ開口幅
フェージング無しの
アイ開口幅
・ フェージングが無い
時のアイ開口幅を1
として規格化
・ 時間遅延を施した
時のアイ開口幅と
比較
0
0.1
0.2
Time Delay τ [ns]
Eye hight[a.u.]
Eye Hight[a.u.]
アイ開口幅特性
0dB
10dB
20dB
1.5
・高利得アンテナを用いた
1.5m伝送実験を行った
・
・実験より推定したノイズを
UWB-IR信号に加えて測定
1
・Q値が3,6となるアイ開口
0.5
高さを求めた
・
0
0.3
0
時間遅延τに対するアイ開口幅の変化
時間遅延τを0sから0.3nsまで変化
0.05
0.1
0.15
0.2
Time Delay τ [ns]
反射減衰を施したときのアイ開口幅特性
0.25
Q値6
Q値3
伝送距離1.5mの無線伝送において
・時間遅延τが変化するとアイ開口幅も周期的に変化
・τ = 0.05ns,0.15nsのときにアイ開口幅が極大
・τ = 0.12ns,0.24nsのときにアイ開口幅はほぼゼロ
・最も信号を劣化させる時間遅延0.24nsのとき反射波の電力が約1.4dB以上減衰した
場合、通信可能となるアイ開口高さが得られる
・このとき、反射波の伝送距離は直接波の伝送距離の約1.2倍となる
スペクトル特性
まとめ
RZ光パルスを用いたUWB-IR通信の無線部分における周波数選択性フェージング
の影響をシミュレーションにより評価した
τ = 0.05ns
τ = 0.1ns
τ = 0.15ns
τ = 0.24ns
アイ開口幅が最大のときと,開口幅がほぼゼロのときのスペクトルを評価
・τ = 0.05nsのときのスペクトルには歪みは見られない
・τ = 0.24nsのときのスペクトルでは周波数が8.3GHzのところでスペクトル
が大きく下がり歪んでいる
結果
・時間遅延に対するアイ開口幅の特性とスペクトルの特性を示した
・UWBハイバンドを用いた伝送レート3.3GbpsのUWB-IRにおいて伝送
レートの整数倍(6.6GHz,9.9GHz)の中央となる8.3GHzのところで周波数
スペクトルが劣化するときに信号の特性が悪くなることを示した
・アッテネータの値が大きくなるにつれアイ開口幅は収束することを示し、
1.4dB以上の減衰で通信可能となるアイを得られることも示した
今後の計画
ビットレート3.3Gbpsの整数倍となる6.6,9.9GHzの中間にあたる3.8GHzで
逆位相となるときスペクトルに最も大きな劣化が生じる
・信号劣化の原因の解析
・新たな伝送路での空間雑音の評価