第10講 ぶつかる - 質点系の運動 ー

力学演習(2014)
第10講 ぶつかる - 質点系の運動 ー
1. 運動量って何もの?
先週やった「エネルギー」も、なかなか目に見えるものではないので、その概念かなり難し
いが、「エネルギーが溜まる、放出される、保存される」なんていうことについては、なんとなく
わかる。しかし、運動量はさらに掴みどころのない物理量で、
質量×速度
と定義されるが、一体どんな意味を持つのかについて
V
v
M
m
衝突前
は、説明がむずかしい。そこで、運動量保存則の一番
M
簡単な例題としてよく取り上げられる衝突問題につ
いてもう一度考えてみる。
いま、速度 V で移動する質量 M の小球 A と速度 v
で移動する質量 m の小球 B がある地点で衝突して、
衝突直後にそれぞれの速度が V’と v’に変化した。
10-1
衝突後
m
V’
v‘
M
m
図-10.1 小球の衝突
力学演習(2014)
展開: 衝突した瞬間の小球 A,B の運動方程式を考察してみよう。
MaA
F
F
maB
① 小球 A には小球 B から衝突力 F が作用して、とても短い時t の間に速度が V から V’に変化し
た。よって、この間の加速度は、 a A 
F  M
V ' V
t
と書くことが出来るので、運動方程式は、
V ' V
0
t
(10.1)
② 小球 B には小球 A から衝突力 F が作用して、とても短い時t の間に速度が v から v’に変化した。
よって、この間の加速度は、 aB 
F m
v ' v
t
と書くことが出来るので、運動方程式は、
v ' v
0
t
(10.2)
③ 式(10.1)と式(10.2)から F とt を消去すれば。
M (V ' V )  m(v ' v)  0
(10.3)
となり、これを変形すれば、
MV ' mv '  MV  mv
(10.4)
と書くことが出来る。
ここで、質量×速度
を「運動量」という物理量だと定義すれば。式(10.4)は
「衝突前の全運動量と衝突後の全運動量は変化しない」
ということを表わしている。これを運動量保存則という。
この例のように、非常に短い時間で急激に速度が変化するような場合には、加速度がとてつもなく
大きくなってしまうが、この運動量保存則を使えば、衝突前後の速度の変化をうまく捉えることが
できる。また、式(10.1)、式(10.2)より、小球 A,B それぞれの運動量の変化量は、
M V ' V    F t ,
m  v ' v   F t
(10.5),(10.6)
と書けるので、物体間で作用した衝突力 F とその作用時間t の積を「力積」と定義すれば、
「衝突に伴って物体間を移動する運動量は、力積に等しい」
ということができる。
10-2
力学演習(2014)
演習 10-1 小球とバネの繋がった板の衝突
図のように,曲面と水平面が滑らかに繋がっている.曲面上で水平面からの高さが h のところに
質量 m の小球を静止させておく.いま,小球を静かに放したところ,小球は曲面に沿って滑り落
ち始め,水平面上で自重が無視できるバネの一端に取り付けられた質量2m の板に衝突した.板は
始め静止していたものとし,はねかえり係数を e、バネ定数を k とする.ただし,小球・板と曲面・
水平面 の間の摩擦は無視し,重力加速度をgとする.
m
h
1)
小球が衝突する直前の速度 v を求めよ.
mgh 
2)
k
2m
1 2
mv
2
→
v  2 gh
衝突直後の小球の速度 v’と板の速度 V’を求めよ.
運動量保存則: mv  mv ' 2mV '
はね返り係数: e 
よって、 V ' 
遠ざかる速さ V ' v '

近づく速さ
v
1
1
(e  1)v  (e  1) 2 gh
3
3
完全弾性衝突(e=1)の場合:
非完全弾性衝突(e=0)の場合:
3) e 
V '
1
1
v '  (e  1)v  ev  (2e  1) 2 gh
3
3
2 2 gh
3
2 gh
3
V '
v'  
2 gh
3
v' 
2 gh
3
2
だった場合、系全体として失う力学的エネルギーはいくらか?
3
2 gh
1 2
5
2 gh 、v '  
また V ' 
なので、
2
9
3
1
1
2
50
68
2
2
mgh  mgh
衝突後の全力学的エネルギー: mv '  mV '  mgh 
2
2
9
81
81
衝突前の全力学的エネルギー: mv  mgh
全力学的エネルギーの変化量: mgh 
4) e 
68
13
mgh  mgh
81
81
2
のとき、衝突後,バネは最大いくら縮むか?
3
1
1
2mV 2  kx 2
2
2
→
100 mgh
10 mgh
 x2 , x 
81 k
9
k
10-3