量子力学 II -A
極座標での Schr¨
odinger 方程式
[問題1] 微分演算子ナブラおよびラプラシアンの座標変換について,以下の問いに答えよ.
1. 以下の式を,r,θ,φ の関数と偏微分
∂
の積で表せ.
∂φ
∂φ ∂
∂x ∂φ
2. 以下の各項を極座標系で表せ.
(a)
∂
∂y
(b)
∂
∂z
(c)
∂2
∂y 2
(d)
∂2
∂z 2
3. 極座標系でのラプラシアンが以下の表式になることを示せ.
∇2 =
∂2
∂2
cos θ ∂
1 ∂2
1
2 ∂
+ 2
+
+
+
2
2
2
2
2
2
∂r
r ∂θ
r ∂r r sin θ ∂θ
r sin θ ∂φ
また,これを変形して,
∇2 =
1 ∂ ( 2∂ )
1{ 1 ∂ (
∂ )
1 ∂2 }
r
+
sin
θ
+
r2 ∂r
∂r
r2 sin θ ∂θ
∂θ
sin2 θ ∂φ2
となることを示せ.
1
量子力学 II -A
角度方向の波動方程式 I
[問題2] 以下の問いに答えよ.
1. (a) 角運動量演算子について直交座標系から極座標系への変換により以下の表式を
導け.
)
(
∂
∂
+ cot θ cos φ
,
`x = i~ sin φ
∂θ
∂φ
∂
`z = −i~
∂φ
(
)
∂
∂
`y = −i~ cos φ
− cot θ sin φ
,
∂θ
∂φ
(b) 上記 (a) の結果を利用して,以下の表式を導出せよ.
{
2
` =
`2x
+
`2y
+
`2z
= −~
2
(
)
}
1 ∂
∂
1 ∂2
sin θ
+
sin θ ∂θ
∂θ
sin2 θ ∂φ2
2. (a) 角度方向の波動方程式
−~2
{ 1 ∂ (
∂ )
1 ∂2 }
sin θ
+
Y`m (θ, φ) = ~2 `(` + 1)Y`m (θ, φ)
sin θ ∂θ
∂θ
sin2 θ ∂φ2
を変数分離(Y`m (θ, φ) = Θ`m (θ)Φm (φ)) して,θ と φ,それぞれの方程式を導出
せよ.
(b) 上記 (a) から得た φ に関する方程式を解いて,
1
Φm (φ) = √ eimφ
2π
(m = 0, ±1, ±2, ±3, · · · )
となることを示せ.ただし,以下の周期境界条件と規格化条件が課されているこ
とに注意せよ.
∫
Φm (φ) = Φm (φ + 2π),
2π
Φ∗m (φ)Φn (φ)dφ = δmn
0
(c) Φm (φ) に `z を作用(演算)させると,固有値は ~m となることを示せ.
2
量子力学 II -A
角度方向の波動方程式 II
[問題 3] 以下の問いに答えよ.
1. 以下の式,
0 −1
|r − r |
{
}− 1
( r )2
(r )
2
1
<
<
1+
−2
cos θ
=
r>
r>
r>
について, f (x) = (1 + x2 − 2x cos θ)−1/2 を 0 < x ¿ 1 として x = 0 の周りでテイラー
展開し,
|r − r 0 |−1 =
∞
∑
`
r<
`=0
`+1
r>
P` (cos θ)
となることを確認せよ.ただし,P` (cos θ) はルジャンドル多項式
P` (cos θ) =
1
d`
(cos2 θ − 1)`
2` `! d cos` θ
である.
2. Θ`m (θ) の方程式
d)
m2
1 d(
sin θ
Θ`m (θ) −
Θ`m (θ) = −`(` + 1)Θ`m (θ)
sin θ dθ
dθ
sin2 θ
について,cos θ = x, sin θ =
√
1 − x2 と変数変換することで,この方程式がルジャン
ドル陪微分方程式と同じ型
(1 − x2 )
[
]
d2 m
d m
m2
P
(x)
−
2x
P
(x)
+
`(`
+
1)
−
P m (x) = 0
dx2 `
dx `
1 − x2 `
となることを示せ.
3. 直交座標系の実関数で表された d 電子軌道の波動関数を自ら計算して求めよ.ただし,
動径分布関数部分は R32 (r) とおいて良い.
3
量子力学 II -B
動径方向の波動方程式
[問題1] 以下の問いに答えよ.
1. 以下の式にベキ級数 χ(r) = rα (1 + a1 r + a2 r2 + · · · ) を代入し,r → 0 の極限を取る
ことで,r の α − 2 次以外の項を無視できることを利用して,−` 次と ` + 1 次の項が出
てくることを示せ.
d2 χ(r)
`(` + 1)
=
χ(r)
dr2
r2
2. 水素様原子の動径分布関数の表式
(
2Z
Rn` (r) = −
na0
)3 √
2
(n − ` − 1)!
2n{(n + `)!}3
(
2Z
r
na0
)`
(
]
)
Z
2`+1 2Z
exp −
r Ln+`
r
na0
na0
[
β
から,R10 と R32 を求めよ.ここで Lα (x) はラゲール陪多項式
Lβα (x)
{
}
α
dβ
x d
α −x
= β e
(x e )
dxα
dx
である.
3. 動径分布関数がラゲール陪多項式と同型であることを示す課程において得られる
{
}
`(` + 1) 2
1
d2
2 d
Rn` + −
Rn` +
+ − 2 Rn` = 0
dρ2
ρ dρ
ρ2
ρ n
[ ]
に,Rn` = ρ` exp − nρ L(ρ) を代入して,
{
}
(
2
d2
2ρ ) d
ρ 2 L(ρ) + 2` + 2 −
L(ρ) + − (` − 1) + 2 L(ρ) = 0
dρ
n dρ
n
を導け.
4
量子力学 II -B
球対称井戸型ポテンシャル内外での粒子の状態
[問題 2] 以下の問いに答えよ.
1. 球対称井戸型ポテンシャル問題における,波動関数のなめらかな接続条件
¯ )
¯ )
(
(
¯
¯
1
d
d
1
(1)
j` (kr)¯¯
h` (iκr)¯¯
= (1)
j` (ka) dr
h` (iκa) dr
r=a
r=a
(1)
が,` = 0 では κa = −ka cot ka であることを示せ.ここで,j` (ρ),n` (ρ),と h` (ρ)
はそれぞれ,球ベッセル関数,球ノイマン関数,第 1 種ハンケル関数
(
j` (ρ) = (−1)` ρ`
1 d
ρ dρ
(
n` (ρ) = (−1)
`+1 `
ρ
)`
1 d
ρ dρ
sin ρ
,
ρ
)`
cos ρ
,
ρ
(1)
h` (ρ) = j` (ρ) + i n` (ρ)
である.
2. ` = 0 に対して,束縛状態が1つ存在する条件と2つ存在する条件を求めよ.
5
量子力学 II -B
磁場中の電子の状態,基底ベクトルと正規直交化
[問題 3] 以下の問いに答えよ.
1. ラグランジュ方程式
d ∂L ∂L
µ
−
= 0 に L = |r˙ |2 + q r˙ · A − qφ を代入して,
dt ∂ x˙
∂x
2
µ
(
[
] )
d2 x
˙
=
q
E
+
r
×
B(r
)
x
x
dt2
を導出せよ.
ヒント:導出課程で,E = −∇φ −
∂A
,
∂t
B = ∇ × A を使え.また,
∂Ay
∂Ax
∂Az
6= 0,
6 0,
=
6 0
=
∂x
∂x
∂x
dAx
∂Ax dx ∂Ax dy ∂Ax dz ∂Ax
=
+
+
+
dt
∂t
dt ∂x
dt ∂y
dt ∂z
であることに注意せよ.
2. (a) 3次元実空間の基底ベクトル a 1 = (1, 1, 0), a 2 = (0, 1, 1), a 3 = (1, 0, 1) が
あるとする.これら a 1 , a 2 , a 3 が一次独立であることを確認せよ.
ヒント:a 1 x1 + a 2 x2 + a 3 x3 = 0 ならば,必ず x1 = x2 = x3 = 0 であることを
示せばよい(掃き出し法などで求める).
(b) 以下の方法により,a 1 , a 2 , a 3 から正規直交基底 e 1 , e 2 , e 3 を求めよ.
Gram-Shcmidt の正規直交化法:
e1 =
a1
b2
b3
, e2 =
, e3 =
||a 1 ||
||b 2 ||
||b 3 ||
ここで,||a 1 || はベクトル a 1 の大きさ(ノルム),
b 2 = a 2 − (a 2 · e 1 )e 1 , b 3 = a 3 − (a 3 · e 2 )e 2 − (a 3 · e 1 )e 1 である.
6
量子力学 II -C
状態ベクトルと演算子の行列表現,演算子の交換関係
[問題 1] 以下の問いに答えよ.




2
1 + 3i








1. |αi = −7i , |βi =  4  , a = 6 + 5i の時,




1
8
(a) a|αi, a|βi を計算せよ.
(b) a(|αi + |βi) = a|αi + a|βi となることを示せ.
(c) hα|βi, hβ|αi を計算せよ.
(d) ||α||, ||β|| を計算せよ.


x




2. |ui =  3x  が規格化されている場合に,実数 x を求めよ.


−2x
3. 正規直交基底 |a1 i, |a2 i, |a3 i により展開される状態 |αi, |βi が
|αi = 2i|a1 i − 3|a2 i + i|a3 i, |βi = 3|a1 i − 2|a2 i + 4|a3 i であるとき,
(a) hα|, hβ| はどのように書けるか.
(b) hβ|αi を計算せよ.また,hβ|αi = hα|βi∗ となることを示せ.
(c) |αi を規格化し,規格化されたケット |˜
αi を求めよ.
4. 基底ケットの組 |a1 i = (2, 1, 1), |a2 i = (1, 2, 1), |a3 i = (1, 1, 2) から,Gram-Schmidt
の正規直交化法により正規直交基底 |e1 i, |e2 i, |e3 i を求めよ.
7
 
1
 
 
5. (a) 基底ベクトルを |a1 i = 0 ,
 
0
 
0
 
 
|a2 i = 1 ,
 
0

ˆ 1i
ha |A|a
3 ∑
3
 1
∑
ˆ j ihaj | = 
ˆ 1i
|ai ihai |A|a
ha2 |A|a

i=1 j=1
ˆ 1i
ha3 |A|a
 
0
 
 
|a3 i = 0 として,
 
1
ˆ 2i
ha1 |A|a
ˆ 2i
ha2 |A|a
ˆ 2i
ha3 |A|a
ˆ 3i
ha1 |A|a


ˆ 3 i

ha2 |A|a

ˆ 3i
ha3 |A|a
となることを確認せよ.


1
−2i
0




(b) Aˆ = 0
0
0 と Aˆ = |a1 iha1 | − 2i|a1 iha2 | + |a3 iha3 | が,表現が違う


0
0
1
だけで同じ演算子であることを示せ.
(c) Aˆ = |a1 iha1 | − 2i|a1 iha2 | + |a3 iha3 |, |αi = 2i|a1 i − |a2 i + 4i|a3 i であるとして,
期待値 hAi を {|ai i} (i = 1, 2, 3) の規格直交性を利用して求めよ.
6. [pˆx , x
ˆ], [ˆ
x, pˆy ] はそれぞれいくらか.
7. 軌道角運動量の直交座標成分は互いに交換しないことを利用して,ˆ` × ˆ` = i~ˆ` を
示せ.
8
量子力学 II -C
エルミート演算子と 行列の対角化,ユニタリ行列
[問題2]

1. 行列 A = 

1
−i
i
 について,以下の問いに答えよ.
1
(a) 行列 A がエルミート行列であることを示せ.
(b) この行列の固有値を求めよ.
(c) この行列の固有ベクトルを求めよ.
(d) 固有ベクトルのノルムが1であることを示せ.
(e) 2つの固有ベクトルが直交することを示せ.
(f) 2つの固有ベクトルを並べて,行列を作れ.
(g) 上記 (f) で作った行列の逆行列を求めよ.
(h) 上記 (f) で作った行列がユニタリ行列であることを示せ.
(i) 行列 A を対角化せよ.
d
と定義したとき (φ は極座標 (r, θ, φ) の φ), 固有関数 f (φ)
dφ
1
と固有値 λ を求めよ.ただし,f (0) = f (2π) = √ , λ > 0 とする.
2π
ˆ
ˆ
ˆ はいくらか.
ˆ φ]
(b) φ が φf (φ) = φf (φ) を満たす演算子であるとき,[O,
ˆ = −i
2. (a) ある演算子を O
ˆ はエルミート演算子かどうか,f (φ) とは別の固有関数 g(φ) をつかって hg|O|f
ˆ i
(c) O
ˆ † |f i が等しいか否かで判断せよ.ただし,f (0) = f (2π) = g(0) = g(2π)
と hg|O
とする.

0
3. エルミート行列 A = 
−i

i
 に対し,ユニタリ行列を求めて A を対角化せよ.
0
9
量子力学 II -C
振動量子の生成消滅演算子
[問題3]
√
√
(
(
)
)
i
i
mω
mω
†
x
ˆ+
x
ˆ−
1. (a) 演算子 a
ˆ=
pˆ , a
ˆ =
pˆ を [ˆ
a, a
ˆ† ] に直接代入
2~
mω
2~
mω
し,[ˆ
a, a
ˆ† ] = 1 であることを確認せよ.
(b) hn|ˆ
a† a
ˆ|ni と規格化条件 hn − 1|n − 1i = 1 から,a
ˆ|ni =
√
n|n − 1i の関係式を導け.
(c) 消滅演算子について |ni を基底に選んだ場合の行列表現を考える.このとき,行
√
列要素 a
ˆmn が a
ˆmn (≡ hm|ˆ
a|ni) = n δm,n−1 となることを上の(b)の結果を使っ
て示せ.ただし,m, n は0から始まる整数,δm,n−1 はクロネッカーのデルタで
ある.
(d) 上の(c)の結果を使って,m, n = 0, 1, 2 である場合の a
ˆ を 3 行 3 列の行列で
表せ.
(e) 上の(d)と同様に,a
ˆ† を 3 行 3 列の行列で表せ.
(f) 上の(d)と(e)の結果から,a
ˆa
ˆ† − a
ˆ† a
ˆ を計算せよ.また,m, n が無限に続
く整数であった場合には,a
ˆa
ˆ† − a
ˆ† a
ˆ はどのような行列になるか.
10