ベクトル方程式 ベクトルの性質 , ベクトルの加減, 位置ベクトルの概念は知っているものと仮定する.その概略は1で述べ るので,これらが分からない 場合は,以下のリンク先のページの1.7 および1.8 を参照せよ. link 1 はじめに 「 ベクトル方程式」 という名前を聞くと何とも難しく聞こえてしまう人も少なくないようだ.しかし 正しい解釈で理解しようとすれば必ず理解できてしまう分野で , 慣れてしまえばこれほど便利なもの はないという感覚をもつようになるだろう. 早速だが本題に入ろう.まず何をしたいかを話しておこう.我々はベクトルというものをある程度学び , 矢印を数学的にとらえてきた.まずベクトルの加減を定め , 平行移動という操作をしても同じものという ことをやった.さらに,このある意味で厄介な 「 平行移動で変わらない」 という性質を位置ベクトルと いう概念でベクトルに対して 「 しばり」 を与え, ベクトルの位置を気にするようにすることに成功した. この成果として , ベクトルは点という解釈もできるようになった.さらに座標平面上の点とベクトルとを 原点を基準とすることで同一視できるようになった.例えば x =3,2 と点A 3,2は通常の意味では必ず しも同じことを表さなかったが, x を原点基準の位置ベクトルとすることで,完全に x を位置ベクトル とする点X x と点Aとが同じものとできるのだった.よって , いままで我々が座標平面上で扱ってきた ものがすべてベクトルとして扱えるのである. 「 ベクトル方程式」 とは,今まで我々が学んできた座標 平面上での関数あるいはグラフを全部ベクトルで表現してしまおうというものである. 2 直線のベクトル方程式の準備 中学二年生の復習 我々は今までの学習経験から ,座標平面上の関数で一番単純なものが「 一次関数 」であることは承知 しているだろう.一次関数とは ,xy平面上では, 実数a , b, に対してy =axbと表現できるものであった. ここでaを傾きといい ,bを切片というのであった.傾きはかっこよくいえば平均変化率のことを指し , y=ax bと表されているときは , 直線上である一点を決め, そこからx軸方向に1進んだ時にy軸方向に a進むと , また同じ直線上に行けるということを表していた.また傾きが分からないときは ,直線上から どこでもよいから異なる2点を取ってきて ,y座標の差をx座標の差で割って得られるのであった. yの増加量 これは中学で, として呪文のように覚えたかもしれない.もう一つ思い出してほしいのは , 直線 xの増加量 を求めるためには最低限何が分かればよいのかということである.次の3条件のいずれかが分かればよい のであった. { 傾きと切片 ⋯① 傾きまたは切片 と一点の座標 ⋯② ニ点の座標 ⋯③ ①の場合は明らかにy =ax bのaとbが分っているので代入するだけ.②の場合は, a またはb が分っている のでそれを代入し, さらに分かっている一点の座標を代入することによってb またはa が決定でき一次 関数の方程式が得られる.③の場合は分かっている二点の座標から傾きaを計算し ,ニ点のうちどちらでも よいので一点の座標を代入することによって一次関数の方程式が得られるのであった. [図 1] 3 直線のベクトル方程式 その1 まず最初に「 ベクトル方程式 」を説明する前に , 重大な概念を確認しておく.それは直線 あるいは曲線 というものは , 点の集まりからできているということである.もう少し具体的にいえば直線はその直線 の方程式y =ax bを満たす座標平面上の点 x ,yの集まったものであり , もっといえば直線は集合として {x , y∣ y=ax b}と表すこともできる.このことを意識できるとこの後の話が理解しやすい. 2で復習したように, 直線を特徴づけるものは「 傾き」 と「 切片」 であり,それらを決定するためには ①,②,③ の条件のいずれかが分かればよいのであった. ここでまず条件②が成り立っていると仮定しよう. つまり , 直線上のある一点A p , q と傾きaがa=a 0 と分かっているとしよう.ここで我々はベクトル方程式 を作りたいので , 点Aや傾きa 0 をとりあえずベクトルの言葉で表す必要がある.まず点A , は , 原点基準 の位置ベクトル OA= と同一視できるのであった.また , 傾きa0 は2で復習したように「 ある一点から x軸方向に1動いたときにy軸方向にa0 動けばもとの直線上」 という意味 を持っていた.よってその移動を 表すベクトルは 1 というベクトルで表現でき ,これを d とすれば, OAd = 1 = 1 と計算でき, a0 a0 a 0 OA '= 1 で表わされる点A ' も直線上の一点を表している.このような操作で直線上のあらゆる点を a 0 表してしまうことが目標である. 最初の注意を思い出してみよ. この目標を達成するためには何が必要 であろうか.ここで思い出してほしいのがベクトルとは何かということである.ベクトルを最初に扱った 時に必ず言われるであろうことであるが , 「ベクトルは , 方向と長さを持ち, 位置は気にしない」 という ものだ.着目したいのが前半部である.先に導入した d= 1 を方向を変えずに長さだけ変えることができ a0 れば, 目標がほぼ達成される. 図2参照 ここでほぼといったのは ,方向を保つと半直線しか表現できない からであるが , 実は気にする必要はないということがすぐわかる.ではベクトルを方向を保ったまま伸縮 させるにはどうすればよいか.それにはベクトルを 「 実数倍」 すればよかったことを思い出そう.実数が 0より大きく1より小さければ縮小 , 1より大きければ拡大となるのだった.さらに負の数をベクトルにかけ ると, 反対方向のベクトルになることを思い出すと直線が表現できていることが分かる. まとめ ある直線上の一点A , とその直線の傾きa 0 が与えられているとき, 直線上の任意の点P x ,yは , 実数tと d= 1 を用いて , OP= OAt d と表すことができ, 成分表示すれば, x = t 1 となる. a0 y a0 ここで , dのことを直線の傾き=方向を表すことから , 方向ベクトルという. [図 2] 拡大 縮小 反転 注意:方向ベクトルについて 方向ベクトルは上記ではなるべく話を初等的にするため , 「 傾き」に焦点を当て , 方向ベクトルを 1 と a0 したが,方向ベクトルのとり方は, 実は無限にある. 方向ベクトルは , 直線をベクトル方程式として 表示したとき実数倍するので , 方向ベクトルの長さは意識しなくてよく, 方向だけ気にすればよい. つまり, 方向ベクトルは , たとえば, 2 や 3 , 100000 , −0.00000000001 等でもよい.ただし , 0 はダメ. 2a 0 0 3a 0 100000a 0 −0.00000000001a 0 4 直線のベクトル方程式 その2 3では, 2 で取り上げた条件の②にしか言及していないのでその他の場合も見てみよう.①の条件は傾き と切片であるが , 切片が分かるということは, y軸との交点が分かるということであり , 一点が分かるという ことと同じである.よって①の条件については3 と同じであることが分かるである.また ,②の切片とある 一点が分っているということは , 同様にニ点が分かっているという③の条件と同じである.ではニ点が 分かっているという状況のときに, どのようにしたら直線のベクトル方程式が分かるか ?ということを考え てみよう.分かっている二点をA a 1 ,a 2 , B b1 , b 2 とする.このときこれらをつないで出来るベクトル AB は, 直線の方向ベクトルとなる. 当たり前 , 図を書いてみよ. AB= OB− OA= b1 a b −a − 1 = 1 1 である. b2 a2 b 2−a 2 これで方向ベクトルが得られた.ニ点の座標が分かっているから, どちらでもよいが例えば点Aを直線上の ある一点だと思うと, 結局3 の状況になり, 直線上の任意の点P x ,y は ,次のようにベクトル方程式で 表現することができる まとめ 直線上のニ点A a 1 , a 2 ,B b 1 , b2 が分っているとき, 直線上の任意の点P x , yは , 実数tを用いて , OP= OAt AB ⇔ x = a 1 t b1−a 1 と表すことができる. y a2 b2 −a 2 また , OP= OAt AB の方向ベクトルの始点を原点Oに取り直すことによって , OP=1−t OAt OB とも 1−t OA t OB 表現できる.これは , OP= と見ることで, 0t1で線分ABの内分点 三角形OABの辺AB 1−tt を表し, t1, あるいはt 0では線分ABの外分点を表すことになる. また ,3,4 のまとめで成分表示のベクトル方程式も記載したが ,x成分, y成分で一つずつの等式だと 思って書いた次のような連立方程式を直線の媒介変数パラメータ 表示という.特に実数tを媒介変数 あるいはパラメータという. x=t , x=1−t a1 b 1 y=ta0 y=1−t a 2b 2 { { 具体的に関数一次関数とは限らないが与えられれば , 媒介変数表示は簡単に得られる.関数y =f x の 媒介変数表示の一つは , x= t とすれば得られる.ここで 「一つは 」と付けたのは ,媒介変数表示の y=f t 仕方はいくらでもあるからである. 1 x= s 例えば, y=2x3の媒介変数表示は , x=t でもよいし, 2 でよいし , 他にもいくらでもある. y=2t3 y=s3 また , 媒介変数表示から代入法や加減法を用いて媒介変数を消去すれば通常の方程式が得られる.上の例 で確かめてみよ. { { { 5 直線のベクトル方程式の練習 例題1 点A 2.4 を通り,方向ベクトルが1,−2 である直線の媒介変数表示と方程式を求めよ. 解答1 直線上の任意の点をP x , yとすれば , ベクトル方程式はtを実数として, x = 2 t 1 であり , y 4 −2 直線の媒介変数表示は , x=2 t tは実数 であり , 第一式から,t=x−2で , これを第二式に代入 y= 4−2t することで , 直線の方程式y =−2x 8を得る. { 例題2 ニ点A 2,1,B 6,8 を通る直線の媒介変数表示と方程式を求めよ. 解答2 原点をOとする. AB= OB− OA= 2 − 6 = −4 であるから, 直線上の任意の点をP x , yとすれば , 1 8 −7 直線のベクトル方程式はtを実数として , x = 2 t −4 = 2−4t であり,直線の媒介変数表示は , y 1 −7 1−7t x= 2−4t tは実数 であり, 直線の方程式はy =7 x1 である. 4 2 y=1−7t { { [別解] ニ点を通る直線はy =ax bと表せ ,ニ点の座標を代入して得られる連立方程式 , 1=2ab を解き, 8=6a b { x=t 7 1 7 1 a= ,b= を得る.よって, 直線の方程式はy = x で , 媒介変数表示は, 7 1 tは実数 4 2 4 2 y= t 4 2 6 ベクトル方程式の利点 この話は直線に限らずベクトル方程式全般にわたる話だが, 早いうちにベクトル方程式の利点を述べてお くことにする.利点がなければ今までのx , yに関する方程式でいいじゃないかとなってしまうからである. ベクトル方程式というよりはベクトルの利点に近いのだが, その利点とは, 次元を上げても話が難しく ならない点にある.次の事実を見るとよく分かるだろう. 3次元空間の中の直線を表すベクトル方程式は , 直線上の任意の点Pをx ,y , z , ある一点をA a 1 ,a 2 ,a 3 , 方向ベクトルを d=d1 , d2 ,d3 , tを実数とすることで , 次のように表現できる. OP= OAt d ⇔ a1 d1 x = t y a2 d2 z a3 d3 もう気づいたように,成分表示する前は見かけ上 , 平面内のベクトル方程式と同じなのだ.本当はもっと 次元を上げて,1000次元とか一億次元とかでも成分表示しなければ, 方程式の形は一緒である. もっと具体的な例を見るとベクトル方程式の素晴らしさが分かるだろう.例えば3次元空間内の 2点 A2,4,−5, B3,1,2 を通る直線の方程式を求めたいとしよう.このときベクトル方程式を使わないと, 射影という少し面倒な考えをしなくてはだめで,その結論だけ言うと , 3次元空間内の直線の方程式は, 一般的にz=ax b=cydである.この方程式の右側の等式に ,2点の座標を代入することで得られる 7 127 連立方程式 −5=2ab を解いて, a=7,b=−19であり, 同様の計算からc =− , d= が得られ方程式が 3 3 2=3a b 7 127 z=7x−19=− y と分かる. ベクトル方程式を使うと次のようである. 実数をtとして, 3 3 x 2 1 2t x=2t 7 127 ⇔ y=4−3t ⇔ y=−3x10 ⇔ z=7x19=− y y = 4 t −3 = 4−3t 3 3 z=7x19 z −5 7 −57t z=−57t しかし, 実際x , y , zの関係式にせずに問題を解くことができるので ,実質一つ目のベクトル方程式を得れば 直線の方程式を得たことになるので , 前者の労力に比べてはるかに楽である. 一応空間内の直線の方程式が一般にz=ax b=cxdで得られることの概略を述べると, 空間内の任意の 直線は,直線であるから ,xz平面 , yz平面に射影してxz平面 , yz平面にできる影も一次関数でそれぞれ , z=ax b ,z=cydと表現できる.これから一般にz=ax b=cydであることが分かる. a , b, c,d , は実数 −1 −1 十分条件については,z=tとすれば , 関係式から, x=a t−b , y=c t−d a≠0, c≠0となり,これは x ,y , z座標が一次の一つのパラメータによって定まること, つまり空間内の直線を表している.a =0または c=0の場合も同様に直線になることが確かめられる. { { { 7 円のベクトル方程式 その1 円とはどのような図形かまず思い出そう.円とは中心があり ,そこから等距離の点すべてを集めてできる 曲線であった.ベクトルで表現することを考えると, ベクトルに備わっている量のうち 「 長さ」は使え そうで,「 方向」 は邪魔である.よってベクトルの長さを使えばよいことに気が付く.原点中心の円の ベクトル方程式は, 円周上の任意の点をP x , yとすれば ,∣ OP∣=r rは定数 と表せる. 成分で表示すれば, x = rである. ここでrは特に半径である. y また, 点A a 1 , a 2 を中心とする半径rの円は , 先の原点中心の円を x軸方向にa 1 ,y軸方向にa 2 平行移動すれば ∣ ∣ ∣ ∣ ∣ ∣ よいから, 円周上の任意の点をP x , y とすれば , x−a 1 =r ⇔ ∣ OP− OA∣=r ⇔ ∣ AP∣= r と表せる. y−a 2 2 実際これらの両辺を二乗することにより, x−a1 = r2 となり,∣ a∣2= a⋅ a であることを思い出せば , y−a 2 x−a 1 y−a 2 =r と なり, このベクトル方程式が通常の円の方程式と同値であることが分かる. 2 2 2 8 円のベクトル方程式 その2 円周角の定理の主張は 「ひとつの円について ,同じ弧に対する円周角は等しい」 というものであった. また, 弧の両端と円の中心を結んでできる角度を中心角といい , 同じ弧に対する円周角と中心角の関係は, 中心角=2円周角 であった.この関係性と, 円周に対する中心角が360 ° であることから ,弧として 半円周をとったときの円周角 , すなわち直径に対する円周角は90 ° であることが分かる.また円周角の 定理はその逆の主張「 4点A , B ,C, Dに対して , ∠ ACB=∠ ADBが成り立つならば4点A , B ,C, Dは同一 円周上にある」 というものも成り立つ.以上の議論から , 動点Pに対して,∠OPA=90 ° ならば動点Pの 軌跡は,OAを直径とする円周ということがただちに導かれる.ここで , 直交する2つのベクトルの内積が 0となることを思い出すと , 円周上の任意の点Pは次のようにも書けることが分かる. 円の直径の両端A ,Bに対して, AP⋅ BP=0 ⇔ OA− OP⋅ OB− OP=0 9 円のベクトル方程式の練習 例題1 定点A ,Bと動点P , および定数rについて, ベクトル方程式∣ AP − AB∣=r,∣ PA PB∣=∣ PA − PB∣を 満たす点Pの軌跡は , それぞれどのような図形を表すか. 解答1 まず,∣ AP − AB∣=rを満たす点Pの軌跡を考えよう. AP− AB= BP だから, このベクトル方程式は , ∣BP∣=rと書き表せる.よって , このとき点Pの軌跡は, 点Bを中心とする半径rの円周である. 次に,∣ PA PB∣=∣ PA − PB∣を満たす点Pの軌跡を考えよう. 両辺ともに正だから, 両辺を2乗して 得られるベクトル方程式 , PA⋅ PB= 0 は与えられたベクトル方程式と同値である.よって,このとき 点Pの軌跡は, 点Aと点Bを直径の両端とする円の円周である. ∣ ∣ 1 1 例題2 定点A ,Bと, 線分ABの中点Mがある.動点P ,Qについて, OP− OA ⋅ PB=0, MQ− MA = ∣ BA∣が 2 4 ともに成り立っている とする.ただし動点P , Qは互いに関係なく自由に動くものとする.このとき 線分PQの長さが最大となるのはどのようなときか. 解答2 OP− OA ⋅ PB=0 ⇔ OP− OA⋅ OB− OP=0だから点Pの軌跡は点Aと点Bを直径の両端とする 1 1 1 1 中心Mの 円の円周上を動く.また MQ− MA = ∣ BA∣ ⇔ MQ− MA = ∣ MA∣であり, 2 4 2 2 ∣ ∣ ∣ ∣ ∣ ∣ 2 1 1 両辺正だから2乗して , MQ− MA = ∣ MA∣2 ⇔ ∣ MQ∣2− MQ⋅ MA=0 ⇔ MQ⋅ MQ− MA =0 2 4 ⇔ MQ⋅ AQ=0を得る.よって, 点Qは点Aと点Mを直径の両端とする円の円周上を動く. 仮定により ,P,Qは独立に動くから , 線分PQの長さが最大となるのは , 点P , 点Qがそれぞれ点B , 点A上にあるときである. 10 平面のベクトル方程式 まず, 平面とは何かを少し考えよう.例えばxyz座標空間で話をしよう.この空間の中にはいくつも平面が ある.簡単なものはxy平面 ,yz平面 , xz平面 ,z=3などがある.イメージができたであろうから少し話を 進めよう.次に考えてほしいのは , 平面を決めるには何が必要かということだ.思い出せば, 直線は2点で 決まっていたのだった.では平面も2点用意すればよいだろうか.答えは否である.2つの点の上に板を 載せることをイメージすれば明らかであろう. 「決まる 」 というのは感覚的には安定するということだ. 2点しか支えがないとその上に置いた板はぐらつき , 安定しない.ではもう一個点を増やし,3点にしたら どうだろうか.同様のイメージでこのときに板は安定することが分かるだろう.結局この直観は正しい. 実際, 平面の方程式は , z=ax by cであり, 係数a , b ,cを決定するには3点の座標があればよいからだ. ただし3点は同一直線上にあっては意味がないことに注意しよう. ここで, ベクトルで表わされる点の存在領域の話を思い出そう.同一直線上にない空間上の3点A , B,C について ,s ABt ACs, t : 実数 は平面全体を表せるのであった.だから , 3点A , B ,Cによって定まる平面 上の任意の点Pは,ある実数 , があって , AP= AB AC と表せることになる. また, 平面上の別の点Q についても同様にある実数 , があって , AQ= AB AC と表せる.よって, −=s,−=tとおけば , 次が成り立つことが分かる. 平面上の任意のベクトルは平面上の1次独立な2本のベクトルの実数倍の和線形和で 表わすことができる ; ∗ PQ=s ABt AC s , tは実数 さらに,式 ∗を PQ= OQ− OP で置き換えれば次が成り立つ. 平面上の任意の点位置ベクトルはそれ以外の任意の位置ベクトルと , 平面上の1次独立な2本の ベクトルの実数倍の和 線形和 で表わせる. ∗∗ OQ= OPs ABt AC s,tは実数 ここで∗∗において ,任意の位置ベクトル OP を任意だから特殊な場合として OA とすると, OQ=OAs ABt AC s, tは実数 が成り立つ.さらに、 AB= OB− OA , AC= OC− OA により OQ=1−s−t OAs OB t OC s , tは実数 を得る. 最後に1 −s−t=u と置くことによって , 次を得る 平面上の任意の点がその他の3点の位置ベクトルの実数倍の和で書けて , かつ, その実数係数の和は1 ; ∗∗∗ OQ=u OAs OBt OC s , t , uは実数 ,st u=1 最後に重要な注意を述べる.逆に∗∗∗が満たされれば , 点Qは,3点A , B, Cが定める平面上にあることに なる.言い換えれば4点A ,B ,C ,Qは同一平面上に存在することになる. 11 平面のベクトル方程式の練習 例題1 4点A 0,2,0, B1,1,3 , C−2,3,4 ,D 2z ,−2z ,z が同一平面上にあるとき ,実数zの値を求めよ. 1 −2 2z 解答1 AB= −1 , AC= 1 , AD= −2z− 2 である.条件から, ある実数s ,tが存在して , AD=s ABt AC 3 4 z { s−2t =2z が成り立つから , −st=−2z−2 が成分の比較で得られる.第一, ニ式からt =z , 第二,三式から ,7t =−5z−6 3s4t=z 1 が得られ , これらから,z=− と分かる. 2 [別解] 0 1 −2 2z OA= 2 , OB= 1 OC= 3 , OD= −2z である.条件からある実数s , t が存在して, 次が成り立つ. 0 3 4 z { s−2t= 2z 1 1 1 1−s−t OAs OB t OC= OD ⇔ −s t 2=−2z ⇔ s= , t=− ,z=− 2 2 2 3s4t=z 例題2 三点A 0,2,0,B 1,1,3, C−2,3,4によって定まる平面に原点 0,0 がら下ろした垂線の足をHと する.Hの座標を求めよ. 0 1 −2 1 −2 解答2 まず, OA= 2 , OB= 1 OC= 3 , AB= −1 , AC= 1 である. 点Hの座標をx ,y ,z とすると, 0 3 4 3 4 x OH= y である.点Hは3点A , B, Cと同一平面上の点だから , ある実数s , tが存在して , 次が成り立つ. z { s−2t= x 1−s−t OAs OB t OC= OD ⇔ −s t 2=y ⋯① 3s4t=z さらに, AB ⊥ OH , AC ⊥ OHだから , AB⋅ OH= AC⋅ OH=0が成り立つから , { x−y3z=0 ⋯② −2xy4z =0 2 4 が成り立つ.①の各式を②の各式に代入すれば , 11s9t=2 が得られ ,s= , t=− が得られる. 5 15 9s21t=−2 14 4 2 これを①の各式に代入することで, H , , であることが分かる. 15 3 15 {
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