M.W.さん(6年生)の感話 -クラブ活動を通じて-

 クラブ活動を通じて M.W.
私は今年六月の大会をもって、中一から入部したチアリーディングクラブを引退しまし
た。部活動に励んだ五年と少しという時間は、今までの中で最も濃く、一生の財産である
と心から感じられるものでした。私は数えきれないほど多くのことを、このクラブ活動を
通じて学びましたが、その中でも部長を務めさせて頂いた一年の中で、特に痛感したこと
を中心に述べたいと思います。
高校二年の時、いつだったか私は信じることが嫌になった時期がありました。そうなる
のも部活の練習中ではなく練習以外の時であったのですが、皆が何を思っているのか分か
らなく、皆が私をどう思っているのかもわからなくて、自信がすとんと無くなってしまっ
たのです。そんなことを気にしていてはキリがないし、自分がどう思われているのかなど
考えても結局は自分の思い込みになってしまうのに、あの時の、自分のミスで巻き込んで
しまった時の、皆の態度が思い出されては、考えることを止められずにいました。その時
自分を励ましてくれたたった一人のことまでも考えられないほどに、勝手に孤独感に打ち
ひしがれていたのです。時間も経ち、今となっては笑って話せることですが、当時はずい
ぶん自分の被害妄想に悩まされたものでした。
考えることは大切でしょう。色々な先生方も前におっしゃっていたようにその通りだと
思います。しかし私はこのように、深いところまで考えがちな性格でした。そのためか、
部活の練習を振り返って、ノートに良かったこと・こなすべき仕事・目標など様々書き連
ねる中でも、自分の弱さと向き合わなければならないことに関しては特に時間を要してい
ました。振り返るたびに私は、自分の至らない箇所をネガティブにネガティブに捉え、そ
の結果自分が全て悪いのだという、今思えば自分でもなかなか理解しがたいほど悲観的な
結論に必ず至るのでした。ですが、とことん自分を否定的に考えることで、そして、もう
後は無いという場に追い込むことで、私は自分を奮えたたせることが出来たのです。
自分の中の欠点や不足していると思う部分を考えることは辛いものではあります。しか
しそこに向き合わなければ自分自身満足しないままでしょう。私は考えに考えてひどく落
ち込んだものの、最後にはその反動を受けることが出来ていました。やるしかないのだと
、気持ちを復元させ立ち直らせる力がそこにはあったのです。
また、私は人に相談をしたり頼るということが苦手です。幼いころからそうでしたが、
高校生になって、また部長を務めてから、はっきりと自覚しました。部活動に関して言え
ば、やらなければならないこと・やったほうが良いと思ったことなど、全て一人でやろう
としてしまっていました。それは決して良く評価できることではないと思いながらも、自
ら一人で行うというクセはなかなか直すことが出来ませんでした。中二から学年の代表を
やらせて頂けていましたが、
「一人で抱え込まないでね。」と先輩方に毎年言われていまし
た。
「相談してね。」と当時部長でいらした先輩に声をかけて頂いた時には、逆にしない方
が失礼かと思い、相談を装ったこともありました。今まで、友達や先生、家族にさえも自
分をさらけ出して相談をするということをして来なかった私には、たとえ辛いことがあっ
て抱え込んでいたとしても一人で解消するというのが対処法でしたし、それで良いと思っ
ていました。そもそも、先輩にそのようなことを言われ始めた時は、特に何かを抱えてい
るとは自分自身何も感じていなかったので、声をかけようと思わせてしまう何かが自分か
ら発されているのかもしれないと思い、自分の精神の弱さだとして、強い精神力をつける
必要性さえ感じました。しかし、高二になり、部長として果たすべき役目が積もる中で、
私は自分の中の「頼る」という能力が激しく乏しいことに気づかされました。今まで自分
が頼ってこなかったのは、頼る力がなかったためにそれが出来ずにいたからではないかと
、考えるようになったのです。人を頼るとき・人に何かをお願いをするとき、必ずその旨
を伝える言葉が必要になります。私はその言葉を何て、どのように投げかけていいのか分
からず、また、投げかけてしまえば自分で処理できないのかと相手に面倒な顔をされたり
、自分で対処できない力不足さを自覚せねばならないようで、頼るということにある種の
恐ろしさを抱いていました。いくら「頼って良いんだ」と言われても、わたしはその頼る
言葉を発する難しさを感じてやみませんでした。しかし、部活動を引っ張る上でも、やら
なければならないことに対して私が上手く周りを頼り分担していれば、ひとりでやるより
もスムーズに抜かりなく進められたことでしょう。事実、私が頼らなかったために事が悪
く転じてしまったこともありました。それでも私はやはり頼ることを渋ってしまっていた
のです。そうして時が経ち、部長として残された任期が短くなってきたころ、これは頼む
しかないと感じる出来事がありました。そのため、私は意を決して居合わせた同学年の仲
間に「これをやってほしいんだけど。」と、上手く言い方も分からなかったので言い切る
こともできないままに、頼むことをしました。はたから見れば、それはあまりにも普通過
ぎる情景でしたでしょうし、相手も特別何か思うことはなかったでしょう。ただ、嫌な顔
をされないか、やはり自分でやるべきかと、私は普通とは違う心持ちでした。その後、彼
女たちは私の言葉を受けてすぐに笑顔で引き受けてくれました。私は有難さと安堵と、一
人ではないのだという大きな嬉しさとを感じ得たのを覚えています。もっと早く勇気を出
して周りを頼ることが出来ていれば、きっとクラブ活動もより良く進められ、仲間との結
束力もより強められたのではないかと実感した出来事でした。分からなくてもやってみな
ければ変わりませんし、やってみたら考えていたよりも容易であった、ということは案外
多いのかもしれません。この時から、私は以前よりも頼ることへの恐怖が和らいでいった
ように思います。
私は今までクラブ活動のおかげで非常に様々なことを学ぶことが出来ました。部長とし
ての一年は、自分の不安定さから自信をなくし悩むことも多くありましたが、落ちたとこ
ろから気持ちを立て直す復元力や、周りに頼ることの大切さを、身をもって実感した一年
でした。今の私をつくってくれたクラブという存在に大きく感謝しています。