B-XRD 1085 高分子フィルムの 3 方位測定と配向度解析 はじめに ポリプロピレンやポリエチレンなどの高分子フィルムは機械強度増加のために加熱しながら延伸成形を行います。延 伸に伴いフィルム中の結晶成分が配向し、特定の方向に揃うため、粉末試料などで用いる反射法による測定だけで は十分な情報を得ることが困難です。ここでは、厚み200 μmの高分子フィルムに対して3方向からX線を入射し、得 られた2次元回折像から配向の様子を調べました。 測定・解析例 図1に示すように、高分子フィルムの延伸方向であるMD方向(Machine Direction:機械軸方向)に対して、ND方向 (Normal Direction:法線方向)、TD方向(Transverse Direction:横幅方向)、MD方向の3方位からX線を入射し、2 次元回折像を得ました。測定には人工多層膜ミラーにて平行化したライン状のX線束をコリメーターでポイント状に成 形した入射X線と、半導体式の高速2次元検出器であるPILATUS 100K/Rを用いました。 (A) ND 方向から入射 (B) TD 方向から入射 MD MD X線 (C) MD 方向から入射 MD X線 X線 図1 高分子フィルムの3方位測定から得られた2次元回折像(測定時間60秒) なお、ND方向の2次元回折像を用いて定性分析と配向度の 算出を試みました。ND方向はデバイリングが弧状になってい ることから、面内配向しているので、配向の影響を緩和する ために図2に示すように2θ方向に全周の積算を行い、1次元 のX線回折パターンに変換しました。得られたX線回折パター ンを結晶データベースと比較したところ、ポリプロピレンで同 定されました。またND方向の2次元画像の円で囲んだ2θ範 囲に対して図3のように円周方向(β)に強度をプロットし、繊 維配向度を算出したところ、配向度は91.9%であることがわ かりました。 800 Intensity (counts) ‐‐‐‐:ポリプロピレン 600 2θ 400 200 0 5 10 15 20 25 30 2θ (˚) 図 2 ポリプロピレンの同定 β 1500 積分強度 (a.u.) 図1の2次元回折像が示すように、ND方向やTD方向からX線 を入射したとき(図1-(A)、図1-(B))はデバイリングが弧状にな っていることから、こちらの方向には面内配向しており、MD 方向からX線を入射したとき(図1-(C))はデバイリングが円状 であることから、こちらの方向には面内配向していないことが わかりました。このことから、高分子フィルムは1軸配向してい ることがわかります。 1000 配向度 = 91.9% 500 0 0 90 180 270 360 β (˚) 図 3 ポリプロピレンの繊維配向度の算出 推奨装置 ► 全自動水平型多目的X線回折装置 SmartLab + 高速2次元X線検出器 PILATUS 100K/R (K0210ja)
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