B-XRD 1090 多結晶 Si 特定ドメインの極点測定 はじめに 多結晶体とは複数の単結晶粒子で構成されており、それぞれの単結晶粒子がランダムな方向を向いている状態の ことをいいます。多結晶体中の各単結晶粒子の方位は、試料面に対して3次元的な方向の回折強度分布を調べる 手法である極点測定で判断できます。従来のX線回折装置を用いた極点測定では、入射X線が発散するために、試 料面全体の比較的大きな領域の結晶方位を評価するための方法として用いられていましたが、微小焦点光学素子 を搭載したSmartLab μHRと高速2次元X線検出器を用いることで多結晶体中の特定単結晶粒子のみの方位測定 が可能になりました。 測定・解析例 実焦点サイズ 5 mm 図1に、多結晶Siの試料表面顕微鏡写真を示します。図1か らわかるように、多結晶Siは複数の単結晶Siから構成されて いることがわかります。ここでは図1中のAで示す単結晶ドメイ ンにX線を照射し、試料表面に対する単結晶Siの方位測定を 行いました。X線のビームサイズは0.3×0.3 mmと非常に小 さいため、他の単結晶に入射X線が照射されることなく測定を 行うことが可能であり、Aの単結晶ドメインのみの方位を知る ことができます。 0.3×0.3 mm2 A 10 mm 図2に、ライン状の平行ビームをコリメーターによりポイント状 図 1 多結晶 Si の試料表面写真 に成形した光学系を用いて得られたSi(110)極点図と SmartLab μHRを用いて得られたSi(110)極点図を示します。従来の測定手法であるコリメーターを用いた光学系で は特定方向にX線ビームが発散することで照射野が広がってしまい、狙ったドメイン以外にもX線が照射され、目的 のドメインからの極とそれ以外のドメインからの極が観測されてしまいます。一方、SmartLab μHRを用いた光学系 では、X線の発散がなく、照射野の広がりが抑えられているため、狙ったドメインの極のみを観測することができます。 このように、従来では困難であった微小部の極点でも、SmartLab μHRを用いることで正確に測定することができま す。 RD ドメイン A からの極 RD ドメイン A からの極 それ以外のドメ 011 101 インからの極 110 110 TD - 101 011 101 - 011 図2-(a) SmartLab+コリメーター光学系から得られた Si(110)極点図 - 101 図2-(b) TD - 011 SmartLab μHR光学系から得られた Si(110)極点図 図2 多結晶Siの特定ドメインから得られたSi(110)極点図 極点図から多結晶SiのドメインAは110面が試料表面に対して平行に並んでいる単結晶であることが判明しました。 試料ご提供 : 静岡理工科大 物質生命科学科 吉田 豊 教授 推奨装置 ► 全自動水平型多目的X線回折装置 SmartLab μHR + 高速2次元X線検出器 PILATUS100K/R (K0212ja)
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