修 士 論 文 概 要 書

修 士 論 文 概 要 書
2008 年 1 月提出
専攻名(専門
物理学及応用物理学
分野)
研究指導名
研 究
題 目
学籍番号 3606L022-1
指 導
氏 名
勝村
勝藤
倫考
複雑量子物性研究
拓郎
印
教 員
スピネル型MnV2O4 におけるスピン-軌道結合
スピネル型 MnV2O4 は、酸素によって四面体的に囲
0
て、結晶構造、磁性を測定したところ、57K で常磁性
か ら フ ェ リ 磁 性 へ の 磁 性 相 転 移 と cubic か ら
tetragonal(c<a)への構造相転移を同時に起こすことが
分かった。さらに図1に示すように、T = 60K,58K で
60K
−1
58K
は磁場を印加することで構造相転移を起こすことも
−2 MnV2O4
分かった。これは MnV2O4 において磁性と構造が結合
していることを示す。V3+イオンは 3d 軌道に電子を 2
−5
つ持っているので、Jahn-Teller 効果だけを考えるなら
構造相転移において B サイトを中心とする酸素八面
いては縮んでいる。その原因として V3+イオンの 3d
70
軌道における軌道整列が考えられる。そこで、結晶
3+
持 つ V イ オ ン の 3d 軌 道 が 反 強 的 に 整 列 す る
(Tsunetsugu-Motome モデル[1])ことが明らかになっ
1000
10
0
100K
500
300K
σab
1.2
1.6
2.0
2.4
Photon energy (eV)
いて光学反射率測定を行い、光学伝導度の温度依存
している。
20
-40
らかにするために、MnV2O4 単結晶のへきかい面を用
ェリ磁性転移と軌道整列に伴う電子構造の変化を示
60K
10K
-30
軌道整列に伴う電子構造の変化とその異方性を明
クが大きく増大している様子が分かる。これは、フ
30
1500
50K
Δσab
-20
ることも分かった。
下の 50K においてモット励起に対応する 1.8eV ピー
40
-10
磁場印加方向に c 軸が揃うようにドメインが整列す
学伝導度の 100K からの変化量も示す。相転移温度以
50
-1
た。また tetragonal 相において磁場を印加することで
に対応すると考えられる。図 2 には面内方向での光
2000
MnV2O4
-1
σab(T) - σab(100K)
相転移温度以下の tetragonal 相において軌道自由度を
ークが見られる。これは、V3+イオン間のモット励起
5
σab (Ω cm )
用いた単結晶X線回折実験を行った。これにより、
た。図 2 に示すように、1.8eV 付近に光学伝導度のピ
0
Magnetic Field (T)
60 cleaved surface
の対称性から軌道状態を決定するために MnV2O4 を
メインを揃えることで光学伝導度の異方性も測定し
30K
図 1 歪の磁場依存性
体はc軸方向に伸びるはずであるが、この物質にお
性を求めた。さらに永久磁石を用いて tetragonal のド
75K
−3
サイトに V3+(3d2)を持つ。この物質の単結晶を作製し
ΔL/L(×10 )
まれるAサイトに Mn2+(3d5)、八面体的に囲まれるB
ΔL//H// [110]
図2
MnV2O4 の光学伝導度とその 100K からの変化量
[研究業績]
学会発表
2006 年 日本物理学会 2006 年秋季大会 25aZQ-5
2007 年 The 5th 21st COE symposium (Waseda Univ.) M-01
2007年 日本物理学会 2008 年春季大会 25pWP-3 (講演予定)
論文
T. Katsufuji, K. Adachi, T. Suzuki, and M. Katsumura. Physica B
383 (2006)
T. Suzuki and M. Katsumura et al., Phys. Rev. Lett. 98,
127203 (2007)
[参考文献]
[1] H. Tsunetugu and Y. Motome, Phys. Rev. B 68, 060405 (2003)