今日の内容
 水素原子の電子の波動関数に関して学ぶ
量子力学II
 磁気量子数の意味
名城大学・理工学部・材料機能工学科
いわや
もとあき
岩谷
素顕
10-2
10-1
水素の1s,2s,2p軌道において、動径方
向(rの方向)の存在確率は?
動径方向(rの方向)の波動関数は?
1
3
 2  2  n  l  1!  2  2r 
 r  2l 1  2r 
 

 exp 
 Ln l 

Rn ,l (r )  
3 
 na0   2nn  l !   na0 
 na0 
 na0 
l
n,lと言う状態にある電子がrとr+drの間に見出される確率は、
z
dϕ
3
 1 2
 r 
R1, 0    2 exp  
 a0 
 a0 
1
R2, 0   
 a0 
3
2
dv  r 2 sin drdd
θ
1s軌道
dθ
 r 
1  1  r 
 2s軌道
1    exp 
2  2  a0  
 2 a0 
x
y
ϕ
Pn ,l ( r ) dr  
2π
0
3
2
1 1  r 
 r 
  exp 
 2p軌道
R2,1   
 a0  2 6  a0 
 2 a0 
10-3
dr
r

π
0
 Rn,l r  r 2 dr 
2
2π
0
2
Rn,l r  Yl,ml θ,φ  r 2 sin θdrdθdφ

π
0
2
Yl,ml θ,φ  sin θdθdφ  Rn,l r  r 2 dr
2
2
 Pn ,l ( r )  Rn,l r  r 2
2
10-4
Mathematicaでグラフを書いてみる
1s
(n=1, l=0)
0.12
0.1
2s
(n=2, l=0)
0.15
水素元素の波動関数の角度依存性
0.08
0.1
0.06
0.04
0.05
水素原子の波動関数は:
0.02
2
4
6
8
10
12
14
14
r/a0
2
4
6
8
10
12
14
14
r/a0
l
3
0.2
0.1
Yl ,ml   1
0.05
10-5
5
10
15
1
 2  2  n  l  1!  2  2r 
 r  2l 1  2r 
 

 exp 
 Ln l 

Rn ,l (r )  
3 
na
na





2
n
n
l
!
 0 
 na0 
 na0 
  0
2p
(n=2, l=1)
0.15
  Rn ,l (r )Yl ,m
20
20
r/a0
10-6
ml  ml
2
l
2l  1 (l  ml )! ml
Pl (cos  ) exp(iml )
4 (l  ml )!
n=1の場合:l=0 ml=0 1s軌道
水素元素の波動関数の角度依存性
Yl ,ml   1
2l  1 (l  ml )! ml
Pl (cos  ) exp(iml )
4 (l  ml )!
ml  ml
2
l=0のとき、ml=0
1
4
Y0, 0 
Y1, 1 
l=1のとき、ml=-1, 0, 1
l=2のとき、ml=-2,-1, 0, 1,2
Y2, 2 
Y2,1  
10-7
3
 1 2
 r 
R1, 0    2 exp  
 a0 
 a0 
Y0, 0 
3
sin  exp i  Y1, 0 
8
3
cos 
4
3
sin  expi 
8
Y1,1  
15
15
sin  cos  exp i 
sin 2  exp 2i  Y2, 1 
8
32
15
sin  cos  expi 
8
Y2, 2 
Y2,0 
1
4
3


5
3 cos 2   1
16
1,0,0
より
1

4
 1 2
 r 
  2 exp  
 a0 
 a0 
このうち角度依存性を考えれば、角度は球面調和関数を考えれば良い
15
sin 2  exp2i 
32
10-8
n=2の場合:l=0 ml=0 2s軌道
:l=1 ml=-1,0,1 2p軌道
Y0, 0 
l=0のとき
球面調和関数の問題点
1
4
Y1, 1 
l=1のとき、ml=-1, 0, 1
Y1, 1 
Y1, 0 
Y1,1  
3
3
sin  cos   i sin  
sin  exp i  
8
8
3
sin  exp i 
8
複素関数が含まれている:
⇒実際の軌道は実関数
3
cos 
4
3
3
sin  expi   
sin  cos   i sin  
8
8
10-10
10-9
実際の波動関数p軌道
 px 
1
 Y1,1  Y1,1   3 sin  cos 
4
2
d軌道はどうなるか?
z
 py 
i
Y1,1  Y1,1   3 sin  sin 
4
2
 pz  Y1, 0 
10-11
3
cos 
4
演習でやってみましょう
y
x
10-12
演習 水素原子における球面調和関数は下記の式であらわされ
る。
Yl ,ml   1
ml  ml
ここで、
2
2l  1 (l  ml )! ml
Pl (cos  ) exp(iml ) l:方位量子数、ml:磁気量指数
4 (l  ml )!
Pl
ml

(cos  )  1  cos 2 

ml
d
2
ml
d cos  
ml
磁気量子数とゼーマン効果
Pl (cos  ) となる。
実際の電子の軌道は実関数の組を作ることでできることを考え、
d軌道の電子の波動関数の式はどのようになるかを求めなさい。
10-16
10-13
1896 ゼーマン効果の発見
放電によるナトリウム(Na)発光スペクトル
・・・磁界により複雑に分裂
磁気量子数の意味
n:主量子数 ・・・ エネルギー固有値を決める
l:方位量子数・・・ 軌道角運動量の方位を決める

l
ml=3
ml=2

高速道路のNaランプ
Pieter Zeeman
ml=1
m
l
  cos 1  z   cos 1
l 
l (l  1)

z
O

ml=0
エネルギー
ml=-1
3s
ml=-2
ml=-3
2p
10-17
ml (磁気量子数)の意味は?
⇒ 軌道磁気モーメントの期待値
ml(磁気量子数)の意味は? ⇒軌道磁気モーメント
この意味は?
図中に角運動量ベクトル
l  rp
を書くと・・・
10-18
-qという電荷を持った粒子(質量:m)が、rという半径の円軌道
を速度vで運動していると仮定したときに電流Iは
1秒間に
r
pp
-q,m
円運動している電子
円運動している電子
10-19
-5.14eV
http://de.wikipedia.org/wiki/Bild:Pieter_Zeeman.jpg
l  rp
rr
-3.04eV
10-20
v
p  mv
v
回るので
2r
I  q
v
2r
円電流による磁界 ビオ・サバールの法則
I
H
4
磁気双極子による磁界
dl  d
 d3
磁荷-qm、+qm、長さaの磁気双極子の磁気モーメントMは
I dl
I rd

4 d 2 4 d 2
2
I 2 r rd
H   sin dH 
0
4 0 d d 2
r2
I 3
2d
P
dH 
dH

2

H
d

d
dl
I
r

qm
a
m
M 
点Pでの磁界Hの強さは
これが、距離dのところにつくる磁界は
d
H
-qm
a
1
4 0 d 3
M
3


M  2 M  d d  
3
d

 2 0 d
+qm
円電流の式:
10-22
磁気双極子による磁界
2

 0 qr  p
2m
磁気モーメント
q

rp  μ
0
2m
この上の式に運動量演算子
10-23
 0 qr  v
M
真空の透磁率で割る
μˆ l  
M
p  i
 
lˆ 2 , lˆz  0
Yl ,ml
lˆ
2と
y
M
0
  B
ˆl

B 
の状態で固有値が存在する
の期待値は
z
l (l  1) 2 と ml 
x
z
x
y
Yl ,ml
lxとlyの測定値は確定しない
軌道磁気モーメント演算子
z
ˆ l    B
磁気モーメントの期待値はz成分のみ0でない。
ˆ l    B
1 ˆ
1
l    B lˆz    B ml


ml 
l
定数
O
μl
10-26
1 ˆ
l z    B ml

軌道磁気モーメントベクトルは、角運動量ベク
トルとは反対側の円錐状に見出される。当然、
軌道磁気モーメントも量子化される。
ml  B
磁気量子数(-l~l)
従って、 mlは 軌道磁気モーメントの大きさを決めているので磁気量子数と呼ぶ。
10-25
不可換
の状態では固有値が存在しない
10-24
q
 9.274 10  24 [ J / T ]
2m
lˆz  ml 
に確定する。
Yl ,ml の状態で固有値が存在する
軌道磁気モーメント演算子
μˆ l 
lˆz
可換
lˆ , lˆ   ilˆ , lˆ , lˆ   ilˆ
を用いると
ˆl
q
q ˆl
  B
r   i   

2m
2m 
ボーア磁子
 qrv
 qv
 r 2  0   0
2r
2
交換関係の確認
軌道磁気モーメント
ベクトルを用いて表すと
r2
2d 3
これが、円電流から求まる磁界と一致するためには
M  I  r 2  0 
10-21
H I
(正常)ゼーマン効果
水素原子に一様な磁界Hを加えると?
(正常)ゼーマン効果
水素原子に一様な磁界Hを加えると?
したがって、ポテンシャルエネルギーの変化Eは?
磁界を考えない場合のハミルトニアン演算子
2 2
q2
 
Hˆ  
2m0
4 0 r
B
E    0μ l  H  μ l  B
ゼーマンエネルギーと呼ぶ
これを
Hˆ 0
とおくと、
したがって、磁界をかけたときのハミルトニアン演算子は、
ポテンシャルエネルギー
磁界を加えれば、変化する
Hˆ  Hˆ 0  μˆ l  B  Hˆ 0   B ˆl  B / 
磁界を加えた時のポテンシャルエネルギーは?
E  μ  H
電磁気学では
μˆ l    B
で求められる。
10-27
と、磁場がない場合と比べて少し変化する。
10-28
n=3の場合の正常ゼーマン効果による
電子エネルギー準位の分離
磁界をかけると固有値はどう変わるのか?
Hˆ  Hˆ 0   B ˆl  B / 
ここで、z軸を磁界Hの方向に選びB=(0,0,B)とすると、
Hˆ  Hˆ 0 
ˆl

O
n=∞
 B Blˆz
s
l=0

p
l=1
d
l=2
したがって、これに水素原子の波動関数をかけると
 Blˆ
Hˆ  (r ,  ,  )  Hˆ 0 (r ,  ,  )  B z  (r ,  ,  )

 En  ml  B B  (r ,  ,  )
lˆ  m 
z
BB
-1.51
(9重縮退)
l
BB
BB
BB
磁界のない場合の固有値
したがって、エネルギー固有値は
En  ml  B B
10-29
(ml=-l~lの整数)
10-30
演習 n=1への遷移であるライマン系列において、水素プラズマからの発光輝
線が=102.518 nmの深紫外線領域で観測された。ただし水素原子における
主量子数mからnへの遷移での発光波長は
En eV 
B=0
磁界なし
今日のまとめ
 電子の軌道に関して
 ゼーマン効果とは?
1 
 1
 R 2  2 
m 

n
1
R~1.0973731568549×107 [m-1]
で与えられる。
1. もとの軌道の主量子数を求めなさい。
2. B=10.0[T]を加えたとき、発光輝線はどうなるか?
10-31
10-32
BB
BB
B≠0
磁界あり
n=3