Chapter 15

NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE
Title
電気回路講義ノート
Author(s)
辻, 峰男
Citation
Issue Date
2014-04
URL
http://hdl.handle.net/10069/34606
Right
This document is downloaded at: 2015-01-31T18:41:24Z
http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp
第 15 章
過渡現象
スイッチをオンまたはオフしたときの過渡現象(transient phenomena)の解析について学ぶ。こ
のためには微分方程式を解く必要がある。微分方程式の解は,定常項+過渡項となる。定常項
は,これまでの理論(直流回路では微分を 0 とし,交流回路ではフェーザを用いた交流理論)
を使うとよい。過渡項は電源電圧を 0 と置くので,直流回路でも交流回路でも同じ形である。
○
定係数線形微分方程式の解法
電気回路で成り立つ式を 1 つの変数 y だけに整理すると,一般に①式の n 階の定係数線形常微
分方程式( a1 , a2 , an : 実数の定数)となる。 f (t ) は外部から加える入力で電源電圧に相当する。
dny
d n1 y
dy
 a1 n1    an 1
 an y  f (t )
n
dt
dt
dt
・・・・①
時間 t の関数であって, y は入らない。
①から y を求めると,過渡項と定常項の和として,以下のように表せることが数学の公式にある。
y  y f  ys
・・・・②
ここで, y f : f (t )  0
とおいた同次方程式の解(過渡項 transient term)
が存在するときの特殊解(定常項 steady state term),
ys : f (t )
f (t )  0 のとき ys  0
過渡項 y f の求め方
1.特性方程式
①で f (t )  0 とし,
dk
 p k とし, y を約分した形。
k
dt
p n  a1 p n1    an1 p  an  0
を解いて,根 p1  pn (n 個)を求める。
p1 , p2 , , pl
全て異なる複素共役根 1  j 1 ,  2  j  2 , ,  m  j  m
2.この結果,全て異なる実根
pr が実数で r 重根,   j  も r 重根が得られたとしよう。
このとき, y f は次式で与えられる。アンダーラインに注目すると美しい。
y f  k1 e p1 t  k2 e p2 t    kl e pl t
 kl 1 e1 t cos 1t  kl  2 e1 t sin 1t

 kl  2 m1 e m t cos  mt  kl  2 m e m t sin  mt
150
これを覚えない
と許しません。
 kl  2 m1 e pr t  kl  2 m  2 t e pr t  kl  2 m3 t 2 e pr t      kl  2 m r t r 1e pr t 

 t
 t

重根
 kl  2 m r 1 e  cos  t  kl  2 m  r  2 e  sin  t

が

 t
 t
ある
 kl  2 m r 3 t e cos  t  kl  2 m  r  4 t e sin  t

場合

のみ



 t
 t
 kl  2 m r  2 r 1 t r 1 e  cos  t  kl  2 m r  2 r t r 1e  sin  t


係数 k は順に番号をつければよく,添字は気にしないでよい。重根がなければ解は簡単になる。
重根があると, t のべき乗が順に掛けられた項が入ってくる。項は全部で根の数 n 個ある。複
素共役根が純虚数  j 1 の場合には,上式で 1  0 とおいて, kl 1 cos 1t  kl  2 sin 1t
の項が入る。これは, L, C だけの回路で現れる。力学では単振動と呼ばれる解である。係数
し ょ き
k は, t  0 での初期条件(initial condition)により決定される。第 3 章,第4章は初期値を求め
るとき役立つ。回路に抵抗があれば,過渡項は時間が経つと 0 となる( L, C だけの回路では
0 にならない)。
定常項 ys の求め方
(イ)
f (t )  E (一定) :直流回路の場合に相当する。①を満足する解を何か求めれば良いの
で,①式で微分項を全て 0 とおいて求める。L,Cだけの回路でもそのようにしてよい。
ys 
(ロ)
E
an
f (t )  Em sin( t   )
:交流回路の場合に相当する。フェーザを用いた交流理論を使
うのが簡単である。  (ファイ)は初期位相で定数である。
dk
 ( j ) k
k
dt
,
d
 j ,
dt
y Y
, Em sin( t   ) 
Em j
e
2
と置き換えると,①よりフェーザ表示した式が得られる。
( j ) n Y  a1 ( j ) n1 Y    an 1 j  Y  an Y 
Y 
Em j
e
2
Em e j 2
a  jb
ここで, a  jb  ( j )  a1 ( j )
n
n 1
   an 1 j   an
(実際に計算し整理する)
よって,
Y 
Em
2 a 2  b2
, arg Y    
, 但し, = tan -1
b
a
従って,
ys  2 I m (Y e jt )  2 Y sin(t     )
* f (t )  Em cos(t   ) のとき, sin を cos に換え,最後の I m (虚部)を R e (実部)にする
だけでよい。もちろん cos を sin に直して求めてもよい。
151
時間 t  0 でスイッチをオンするとき, i を
例題1
S
i
求めよ。
R
E
一定
L
(解)微分方程式を立てると,
L
di
 Ri  E
dt
・・・・①
特性方程式
L pR0 p 
R
L
(注 1) スイッチを入れる直前を t  0 、
よって,過渡項 i f は
i f  k1 e p t  k1 e

スイッチを入れた直後を t  0 と書く。
R
t
L
i (0) はスイッチが切れているから 0 と
なるのは当然である。
定常項 is は,①で微分を 0 と置き
一般に,コイルの電流は急に変化しない
E
is 
R
から, i (0) も 0 となる。
よって,求める i は
i  i f  is  k1 e

R
t
L

E
R
・・・・②
t  0 で, i  0 と考えられるから(注1)
0  k1 
E
E
 k1  
R
R
(注 2)
0 である。 t  0 の値を代入して定数を決め
②に代入して(注2)

E
i  (1  e
R
0 も 0 も値として代入するときは
ることを,初期条件を入れるという。①は
R
t
L )
t ≧  0 の式だから i (0) の値を入れる。
i
i
E
R
L が大きいと i はゆっくり立ち上がる。
時定数が大きいという。
63.2 %
0

t
じ ていすう
 [s] (タウ):時定数 ( time constant )とすると
L
この場合,  
R
(e

t

に変形すれば  が判る。
)
時間が十分経過すると,過渡項は 0 となり定常項のみになる。
152
例題2
図の回路で, t  0 でスイッチをオンしたとき,
S
流れる電流 i 及びコンデンサの電荷 q を求めよ。但し,ス
i
イッチを入れる前,コンデンサの電荷は q0 であったとす
R
る。
E
q
一定
C
(解)微分方程式を立てると,
R
dq q
 E
dt C
i
・・・・①
dq
dt
・・・・②
① を解く。特性方程式は
Rp 
1
1
0 p
C
RC
(注 1) 題意より, q ( 0)  q0 ,である。
よって,過渡項 q f は
q f  k1 e
pt
 k1 e
一般に,コンデンサの電荷(または電圧)

は急に変化しないので, q ( 0)  q0 と考え
t
RC
られる。
なお,①式は t ≧+0 に対し成立するのであ
定常項 qs は,
るから, t  0 の初期値を代入することは
qs  CE
できない。
よって,求める q は,
q  q f  qs  k1 e

t
RC
 CE
t   0 で, q  q0 と考えられるから,(注1)
q0  k1  CE  k1  q0  CE
従って,
q  q0 e

t
RC
 CE (1  e

t
RC
CE
)
E
R
電流 i は,
q
i
t

dq
1

i
(CE  q0 )e RC
dt RC
この場合,時定数   RC 。 C が大きいとゆっ
0
q0  0 のときの電荷と電流
くり立ち上がる。
i (0)  0 だが, i (0) 

E
である。電流は不連続に変化している。
R
自然現象はいつも連続とは考えないように。
153
t
図の回路で, t  0 でスイッチをオ
例題3
S
i
ンしたとき,コンデンサの電荷と
R
流れる電流を求めよ。但し,コン
デンサの初期電荷は 0 とする。
L
C
E
一定
(解)微分方程式を立てると,
d 2q
dq q
dq
R  E , i
2
dt C
dt
dt
定常項 qs は,
L
qs  CE
・・・・①
・・・・②
特性方程式は,
Lp 2  Rp 
1
0
C
根は L, R, C の大小により,3つの場合に分けられる。
(ⅰ) R  4
2
L
0
C
のとき, p1  p2  
過渡項 q f は, q f  k1e
a t
R
  a (重根)(  は定義の意)
2L
 k2 t e  a t
従って,一般解は
(注) コイルの i とコンデンサの
q  qs  q f  CE  k1e  a t  k2te  a t
q は急に変化しない。
dq
i
  k1ae  a t  k2 e a t  k2 a t e a t
dt
初期条件は, t  0 で, q  0 , i  0 と考えられるから,(注)
0  CE  k1 , 0  k1a  k2  k1  CE , k2   aCE
従って,
q  CE  CE (1  at )e  a t
i  a 2CE t e  a t
CEへ
q
i
0
(ⅱ) R  4
2
t
L
0
C
のとき,
過渡項 q f は, q f  k1e
p1t
p1 
R
1
L

R2  4

p2 
2L 2L
C
 k2e p2t
154
q
  のときp1 


  のときp2 

vc
従って,一般解は,
dq
 p1k1e p1t  p2 k2 e p2t
dt
初期条件は, t  0 で, q  0 , i  0 と考えられるから,
q  CE  k1e p1t  k2e p2t
0  CE  k1  k2
,
i
 k1 
, 0  p1k1  p2 k2
p2CE
p1  p2
, k2  
p1CE
p1  p2
応答波形は(ⅰ)と同様になる。
(ⅲ) R  4
2
過渡項は,
p 
L
R
1
L
 0 のとき, 1   
j
4  R 2  a  j 
p2 
C
2L
2L
C
q f  k1e a t cos  t  k2e  a t sin  t
従って,一般解は,
q  CE  k1e  a t cos  t  k2 e a t sin  t
dq
 e  a t (  k2  a k1 ) cos  t  (  k1  a k2 ) sin  t
dt
初期条件は, t  0 で, q  0 , i  0 と考えられるから,
i
0  CE  k1 , 0   k2  a k1

従って, q  CE 1  e
a t

(cos  t 
 k1  CE , k2 

sin  t ) 


a
a

i  CEe a t (  
,
k1  
a2

a

CE
) sin  t
CEへ
q
i
t
0
◎
抵抗が 0 の場合
(LC共振回路)
複素根のとき,減衰振動するのだ!
(ⅲ)で
a  0 とおいて
q  CE (1  cos  t ) , vc  E (1  cos  t )
コンデンサ電圧は電源電
圧の2倍まで上昇
i  CE  sin  t
ただし,   1/
LC
, vc : コンデンサ電圧
2E
E i
vc
となり,持続振動する。
これは,力学の単振動と同じ現象である。ばねに

0
2
t
d 2 vc
 vc  E
する。微分方程式が同じ形をしている。
dt 2
◎この例題は非常に重要である。制御理論とも深く関係する。全ての場合, q は CE へ, i は 0 へ
おもりをつるすと空気抵抗がなければずっと振動
LC
最終的に落ち着く。これは,特性方程式の根 p1 , p2 の実部が負(左半平面)だからである。実
155
部が正なら発散(不安定)する。しかし,回路では通常,実部は負である。LC だけの回路のと
きのみ実部は0となり,発散も減衰もしないで振動は持続する。
こんな長い答案は書けないので試験には出ないと考える人は甘い!場合を指定した
り,数値を与えると 1 3 の長さになり,手ごろな問題となるのだ。
例題4
図の回路において,スイッチ S を t  0 で閉じる。 S を閉じる前, C の電荷は q0 であっ
た。コンデンサに流れる電流を求めよ。
S
R1
i1
R2
E
i2
q
C

v
(解) S を閉じた後, i1 , i2 , v , q を図のように定義する。成立する式は,
E  R1 (i1  i2 )  v
v  R2i1
・・・・①
q  Cv
・・・・②
・・・・③
変数 q だけの式にするため, i1 , i2 , v を消去して,
q
dq
q
dq 1
R
 )   R1
 (1  1 )q
R2C dt
C
dt C
R2
E  R1 (
特性方程式
R1 p 
R1  R2
0 ,
CR2
p
R1  R2
CR1R2
定常解 q () は,
q ( ) 
CER2
R1  R2
よって, q  q(  )  ke

t

但し,  
CR1R2
R1  R2
t  0 で, q  q0 と考えられるから,
q  q ( )  k
 k  q0  q()
 q  q()  (q0  q ())e

t

④より,
t

dq
1
i2 
  (q0  q())e 

dt
156
i2 
dq
dt
・・・・④
例題5
図の回路は t  0 において定常状態にある。 t  0 でスイッチを開く。 t  0 においてコイ
ルの電流 iL (t ) を求めよ。但し, E  10 V , r  5  , R  2  , L  3 H , C  1 6 F とする。
t0
iC
iR
r
iL
v
(解)
t  0 において, 次式が成り立つ。
diL
dt
iR  iC  iL  0
v  R iR  L
iC  C
①
②
dv
dt
③
①~③ 式より,電流 iL (t ) に関する次の微分方程式が得られる。
LC
d 2iL L diL

 iL  0
dt 2 R dt
④
数値を代入して
d 2iL
di
 3 L  2iL  0
2
dt
dt
⑤
である。この式の特性方程式
p2  3 p  2  0
の根が p  1,  2 であるので,電流 iL (t ) は次式で与えられる。
iL (t )  k1e t  k2 e 2t
( k1 , k2 は未知定数)
d iL
 k1e t  2k2 e2t
dt
⑥
⑦
⑧
コイルに流れる電流は急には変化せず, t  0 でコイルは短絡状態にあるから
iL (0)  E / r  2A
⑨
を得る。一方,コンデンサの電圧は急には変化せず, t  0 で 0 だから
diL (0)
0
dt
⑦,⑧式に,⑨,⑩式を適用して, k1  4, k2  2 だから
v(0)  L
diL (0)
0
dt
∴
iL (t )  4e  t  2e 2t  A 
⑩
⑪
* 電源が接続されていない回路では,時間が十分たつと抵抗でエネルギーが消費されて,電圧
や電流は 0 となる。
157
図の回路で t  0 でスイッチ
例題6
R1
M
を入れるとき,電流 i1 を求めよ。スイ
ッチを入れる前 i2  0 とする。また,


L1
L2
i1
L1 L2  M  0 とする。
2
E
i2
R2
S
(解)
スイッチを入れた後,以下の微
分方程式が成り立つ。
E  R1i1  L1
di1
di
M 2
dt
dt
0  R2 i2  L2
①
di2
di
M 1
dt
dt
②
i1 だけの式にするため,まず①より di2 / dt を求め②に代入して次式が得られる。
i2  
L2
LR
L L di M di1
E  2 1 i1  1 2 1 
R2 M
R2 M
R2 M dt R2 dt
③
③を①に代入して,以下の i1 だけの微分方程式が得られる。

d 2 i1
di
 ( L1 R2  L2 R1 ) 1  R1 R2 i1  R2 E
2
dt
dt
ただし,   L1 L2  M 2
④
特性方程式は,
 p 2  ( L1 R2  L2 R1 ) p  R1 R2  0
⑤
⑤の根は実数で,次式で与えられる。
p1 , p2 
( L1 R2  L2 R1 )  ( L1 R2  L2 R1 ) 2  4 R1 R2 M 2
p1 は+, p2 は-に対応する。
2
④式の一般解は,次式で与えられる。
i1 
E
 Ae p1 t  Be p2 t
R1
⑥
故に,
di1
 A p1 e p1 t  B p2 e p2 t
dt
⑦
スイッチを入れた直後,①,②それぞれの鎖交磁束の和が変化せず 0 となるから
L1i1 (0)  Mi2 (0)  0, L2 i2 (0)  Mi1 (0)  0
⑧
  0 なので
⑨
i1 (0)  i2 (0)  0
⑥式に代入して,次式を得る。 0 
E
 A B
R1
⑩
  0 の場合
t  0 で,③,⑨式より,次式を得る。
L2
LR
E  2 1 i1
R2 M
R2 M
di
( L1 R2  L2 R1 ) 1  R1 R2 i1  R2 E
dt
i2  
di1
L
 2E
dt t  0 
上式に⑨を代入して,
L
Ap1  Bp2  2 E

E
 Ae p t
R1
LR
i2  2 1 Ae p t
R2 M
i1 
⑪
⑩,⑪より, A, B は以下のように求まる。
⑧より
L
p
L
p
E
E
A
( 2  2) , B 
( 2  1)
p1  p2  R1
p2  p1  R1
158
A
p
R1 R2
L1 R2  L2 R1
L1 R2
E
L1 R2  L2 R1 R1
例題 7 図の回路で, t  0 でスイッチをオンするとき,
S
i
流れる電流を求めよ。
ここで, e(t )  Em sin(t   )
R
e(t)
(解)成立する微分方程式は,
L
di
L  Ri  Em sin(t   )
dt
・・・・①
定常解はフェーザを使って求める。①をフェーザ表示すると,
Em j
e
2
j LI  RI 
I 
( Em 2)e j

R  j L
Em e j
2 R  ( L) e
2
2
j
Em e j (  )

2 R  ( L)
2
但し, tan  
2
L
R
②
②を瞬時値表示にもどして is は,
is  2 I m ( Ie jt ) 
Em
R 2  ( L) 2
sin(t     )
過渡項を求める。特性方程式は,
R
p
L
Lp  R  0
よって,
i f  ke
pt
 ke

R
t
L
求める一般解は,
Em
i  is  i f 
R 2  ( L)2
sin(t     )  ke

R
t
L
・・・・③
初期条件は, t  0 で i  0 として,
0
Em
R  ( L)
2
③に代入して, i 
2
sin(   )  k
k  
Em
R  ( L)
2
2
sin(   )
R


 t
sin(t     )  e L sin(   ) 

R 2  ( L) 2 

Em
is 定常項
i  is  i f
過渡項の求め方は,直流でも交流でも同じです。
定常項は,交流の場合フェーザを用いればよい。
0
t
if
過渡項
時間が十分経過すると過渡項は 0 となり,定常項
のみとなる。だから,過渡項とか定常項という名前
で呼ばれている。
159
例題 8
図の回路で, e(t )  Em cos t とし,スイッチ S を t  0 で開く。それ以前,回路は定常
状態にあったとして, t ≧  0 における電荷 q (t ) を求めよ。
R1
q
C
e(t )
R2
vc
S
t0
 t  0 : Sを開いた直後 
 t  0

: Sを開く直前 

(解)コンデンサの電圧を vc とし, e, vc のフェーザを E , Vc とする。 t ≦  0 では定常状態なの
で,フェーザで q, vc が求まる。図より,
R2
jCR2  1
Vc 
E
R2
R1 
jCR2  1

R1

R2 E m
C
E
E
R2
 m
R1  R2  jCR1R2 2
R2
Vc
ここでは, cos t でフェーザを定義する。
2
( R1  R 2 ) 2  ( CR1 R2 ) 2
 e  j
但し,   tan
1 CR1 R2
R1  R2
フェーザを瞬時値にもどして,
R2 E m
vc 
( R1  R 2 )  ( CR1 R2 )
2
2
cos( t   )
・・・・①
コンデンサの電荷は急に変化しないので, q ( 0)  q ( 0) と考えられ, q  Cvc より
CR2 Em ( R1  R2 )
( R1  R2 ) 2  (CR1 R2 )2
q( 0)  Cvc ( 0) 
・・・・②
t ≧  0 においては,次式が成立する。
dq q

dt C
q の定常解は,①で R2   とすることにより,
Em cos t  R1
qs 
CEm
1  (CR1 )
2
cos(t   ) ,   tan 1 CR1
・・・・③
よって, q の一般解は,
q  qs  k e

t

但し,   R1C
t  0 で, q (0) は②式で与えられるから,
k  q(0)  qs (0)
より求まる。
但し,③より, qs (0) 
160
CEm
1  (CR1 ) 2
例題 9 定常状態にある図の回路で, t  0 でスイッチをオフする時,流れる電流を求めよ。
i1
i2
R1
S
L1
i
R2
t 0
R1

L1
L2
E
R2
v
v1
v2
L2
(解)スイッチを開く直前を t  0 ,直後を 0 と表す。スイッチを開く前に回路は定常
状態ということから,
i10 
E
R1
, i2 0 
E
R2
・・・・①
鎖交磁束不変の理より,
鎖交磁束の和の求め方
L1i10  L2 i2 0  ( L1  L2 )i 0
 i 0
t  0 のとき(S を切った後)
( L R  L2 R2 ) E
 1 1
L1  L2
v  v1  v2 
t  0 において,
i  k e
t  0 のとき(S を切る前)
di
 ( R1  R2 )i  0
dt
( L1  L2 )

d
( L1i  L2 i )
dt
v  v1  v2 
d
( L1i1  L2 i2 )
dt
R1  R2
t
L1  L2
初期条件 t  0 で, i  i
0
 k  i 0
R1  R2
( L R  L2 R2 ) E  L1  L2 t
よって, i  1 1
e
L1  L2
り
鎖交磁束不変の理
スイッチを入れたり切ったりした後( t  0 )の閉回路で,キルヒホッフの第2法則より電圧
方程式を立てる。このとき,コイルだけをまとめた電圧の和 v は,t  0 と t  0 の間に無限大に
ならない(コイル単体では無限大となることがあっても)
。
v
d
(鎖交磁束の和)
dt
であるから, t  0 と t  0 の間で鎖交磁束の和は変化しない。なお,電圧や電流の矢印は好き
によいが,マイナスが付くかどうかは電圧 v と電流の矢印の選び方による。
161
定常状態にある図の回路で, t  0 でスイッチをオフする時,流れる電流を求めよ。な
例題 10
お, L1 , L2 間の相互インダクタンスは M とする。
i1
i2
R1
S

v1
L1
M
i
R2
t 0


E
L2
R1

v2
v1
R2
v
M
L1

v2
L2
i
(解)スイッチを開く直前を t  0 ,直後を 0 と表す。スイッチを開く前に回路は定常
状態ということから,
i10 
E
R1
, i2 0 
E
R2
①
t  0 のとき(S を切った後)
v  v1  v2  L1
di
di
di
di
d
 M  ( L2  M )  ( L1i  L2i  2 M i )
dt
dt
dt
dt
dt
②
t  0 のとき(S を切る前)
v  v1  v2  L1
di1
di
di
di
d
 M 2  ( L2 2  M 1 )  ( L1i1  Mi2  L2i2  Mi1 ) ③
dt
dt
dt
dt
dt
鎖交磁束不変の理を②,③に適用して
0
0
0
0
L1i 0  L2 i 0  2Mi 0  L1i1  Mi2  L2 i2  Mi1
よって,
i 0 
L  M L2  M
E

( 1
)
L1  L2  2M
R1
R2
④
t  0 のとき,回路の微分方程式は次式で与えられる。
( L1  L2  2M )
di
 ( R1  R2 )i  0
dt
⑤
④の初期条件で⑤を解いて,
R1  R2
L  M L2  M  L1  L2 2 M t
E
i

( 1
)e
L1  L2  2M
R1
R2
162
例題 11
図の回路で, t  0 で両方のスイッチをオンしたとき,抵抗に流れる電流を求めよ。ス
0
イッチをオンする直前 t  0 のコンデンサの初期電荷を q1 ( 0)  q1 , q2 ( 0)  q2
t 0
t 0
q1

C1
0
i

q2
C2
R
とする。
i

q
C
R
v
C  C1  C2
(解)スイッチを閉じた後, C1 と C2 は1つにまとめて考える。
スイッチを閉じた直後の q の初期電荷を q
0
とすると,
電荷量不変の理より,
q10  q2 0  q
0
・・・・①
微分方程式を立てると (t  0) ,
q
v  Ri 
C
dq
, i
dt
dq q
R   0
dt C
よって, q  k1e

q2 0 を保つことができない。各電荷は
0
 q2 0 ) e
q10
0
 k1

 q2
dq

e
dt R (C1  C2 )
t
R ( C1  C2 )

(注)1つにまとめないで考えたら
どうなるか。
q10  q2 0  q10  q2 0
t
R ( C1  C2 )
q1 q2

 R i (  v)
C1 C2
《注》
i
q

、 C2 に
t
RC
0
i  
0
電圧は等しくなり、 C1 に q1
急に変化し,電荷の再配分が起こる。
初期条件①を代入して, q
よって, q  ( q1
スイッチを閉じた瞬間に、 C1 と C2 の
i
dq
i
dt
q

i
dq
i
dt
dq1 dq2

dt
dt
q1 だけの式を作り解け。
同じ i を得る。
電荷量不変の理
スイッチをオンすることでコンデンサだけが並列に接続されるとき,それらは1つにまとめ
られ,コンデンサの電荷の総量は急に変化しない。この結果,1つにまとめられたコンデン
サに接続される外部回路に流れる電流は無限大とならない。
163
例題 12 図の回路で, t  0 でスイッチをオンするとき,抵抗 R で消費されるエネルギーを求め
よ。但し,コンデンサ C1 , C2 のスイッチをオンする直前の電荷をそれぞれ Q0 , 0 とする。
S
t 0
q1

C1
i
Q0


C

Q  Q
  0 C1 0
R
C2
q2 
 C
Q
  C1 0
0
t  0
t 
(解)図のように極板の電荷を定義すると成立する式は,
i
dq1 dq2

dt
dt
q1
q
 Ri  2
C1
C2
・・・・①
・・・・②
①より, q1  q2  A
A : 定数
電荷の再配分は起こらず, t  0 (直後)でも, q1 (0)  Q0 (注), q2 ( 0)  0 と考え
A  Q0
られるから,
∴
q1   q2  Q0
・・・・③
q2 だけの微分方程式を作るため,①を②に代入して i を消去し,更に③を代入して q1 を
消去すると,
Q0  q2 q2
dq

R 2
C1
C2
dt
ここで, C 
C1C2
C1  C2
R
Q
dq2
1
1
(

) q2  0
dt
C1
C1 C2
とおくと, R
dq2 q2 Q0


dt
C C1
・・・・④
④式を定常項と過渡項に分けて解くと,
t

C
q2 
Q0  ke RC
C1
q2 (0)  0 より, k  
・・・・⑤
C
Q0
C1
t

C
q2 
Q0 (1  e RC )
C1
よって,
t
Q 
dq
 i  2  0 e RC
dt
RC1
t  0 から  までに抵抗で消費されるエネルギー W は,

W   Ri dt 
2
0
Q02
RC12
 
0
e
2
t
RC dt
(注)回路上、そのようにおいても困る
ことがない。原則は C の電荷は連続
なのだから。

  2 t
C Q
  ( 0 )2  e RC 
2 C1 
 0


③式は,電荷が保存されることから,
q1  q2  Q0 としてもよい。
C Q0 2
( )
2 C1
164
例題 13 図の RC 微分回路に,図のようなパルス電圧を加えた。出力電圧 e0 を求めよ。但し,コ
ンデンサの t  0 での電荷は 0 とする。
q

e(t )
i
E
C
R
e (t )
e0
0
t
T
(解)成立する微分方程式は,
R
dq q
 E
dt C
R
dq q
 0 (T t)
dt C
(0tT )
・・・・②
q  CE  ke
① を解くと,
・・・・①

t
RC
t  0 で q  0 だから, k  CE
 q  CE (1  e

t
RC
・・・・③
)
t

dq
よって, e0  Ri  R
 Ee RC
dt
②を解くと, q  k e
t
RC

t  T で, q  CE (1  e

(0tT )
・・・・④
・・・・⑤
T
RC
)
であるから,⑤式
に代入して
E
T

RC
CE (1  e
T

RC
k e
)
k 
T
RC
CE (e
 1)
出力
e0
⑤より,
q  CE ( e

t T
RC
e

t
RC
T
0
E
t
)
t


dq
 Ee RC  Ee
e0  R
dt
t T
RC
(T t)
t T
S
C
この問題は,左図の回路で, t  0 でスイッチをオンし, t  T
t 0
E
でスイッチを切った場合の e0 を求める問題とは異なる。オン
R
e0
している時は同じだが,オフしている時,例題は E  0 の短絡
状態に対し,この場合は開放で電流は流れない。
165
問題1.定常状態にある回路のスイッチ S を t  0 で開いたとき,抵抗 R2 に流れる電流及び t  0
の期間に消費される電力量を求めよ。
S
(答)
i
R1
R2
E
E 
i
e
R1
L
R2
t
L
, W 
1 E 2
L( )
2 R1
問題2.定常状態にある図の回路のスイッチを t  0 で閉じた。抵抗 R とインダクタンス L を流れ
る電流 i1 , i2 を求めよ。
S
Ro R
i2
i1
R0
L
R
E
t

E
(答) i1 
e ( R 0  R)L
R0  R
Ro R
t

E
i2 
{1  e ( R 0  R ) L }
R0
問題3.図の回路で,t  0 でスイッチ S1 を閉じ,ついで t  T のときスイッチ S2 を閉じると同時
にスイッチ S1 を開くものとする。この時に流れる電流を求め図示せよ。
R
S1
E
i
i
E
R
R
i
L
S2
R
 t
E  L (t T )
{e
e L }
R
T
0
t
R
i
(答)
 t
E
(1  e L )
R
問題4.図の回路で最初スイッチ S を 1 の端子に接続し,十分時間が経過してから t  0 でスイッ
チを 2 の端子に切り替えた。 t ≧ 0 における電荷 q (t ) を求めよ。
R1  R2
1
S
R1
2
E
q
C
R2
CR2 E  CR1R2 t
e
(答) q 
R1  R2
問題5.図の回路でスイッチを閉じ,十分時間が経過してから t  0 でスイッチを開いた。t ≧ 0 に
おける電荷 q (t ) を求めよ。ただし, E  10V, R1  2, R2  2, C  0.1F, L  1H
S
R1
t
i
E
C
q
1
2
(答) q  e ( cos 3t 
R2
L
(注) i  
166
dq
dt
2
sin 3t )
3
q(0)  0.5
i (0)  2.5
問題6. t  0 でスイッチ S をオンするとき,電流 i とコンデンサ電圧 v を求めよ。 S をオンする
前のコンデンサの初期電圧は v0 とする。(LC共振:抵抗がないといつまでも振動が続く)
S
i
(答) LC
L
v
C
E
d 2v
dv
 v  E, i  C
2
dt
dt
v  E  k1 cos 0t  k2 sin 0t
v  E  (v0  E ) cos 0t , i  0C ( E  v0 ) sin 0t
0  1/ LC :共振角周波数
問題7.定常状態にある図の回路で, t  0 でスイッチを開いた。 t ≧ 0 における i (t ) を求めよ。
2t
4H
3H
i
S
2V
鎖交磁束不変の理より i (0) 
2
2
3 
(答) i  e 7  1
7
10
7
問題 8.コンデンサの初期電荷を0とし, t  0 でス
R
イッチを閉じた。 t ≧ 0 における v (t ) を求
S
めよ。ただし,
e (t )  Em sin( t   )
C
e (t )
v(t )
とする。
t



RC
(答) v (t ) 
sin(t     )  e
sin(   ) 

1  (CR ) 2 

ただし,   tan (CR )
問題 9.コンデンサの初期電荷を0とし, t  0 でスイ
S
Em
1
L
ッチを閉じた。t ≧ 0 における v (t ) を求めよ。
ただし, e (t )  Em sin( t   )
なお, R  4
2
(答)
とする。
e
C
v
R
L
 0 とする。
C
v (t )  Vm sin(t     )  Vm sin(   )e   t cos  t
 Vm (
ただし, Vm 


sin(   )  cos(   ))e  t sin  t


Em
C R 2  ( L 
1 2
)
C
, 
R
L
R
1
, 
4  R 2 ,   tan 1
1
C
2L
2L
 L
C
167