Page 1 Page 2 学位(専攻分野) , 博 士 (医 学) 学位授与の日付 平 成 ー

KURENAI : Kyoto University Research Information Repository
Title
Author(s)
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Issue Date
URL
Regulated expression of neurogenic basic helix-loop-helix
transcription factors during differentiation of the immortalized
neuronal progenitor cell line HC2S2 into neurons( Abstract_要
旨)
Otsuka, Toshiyuki
Kyoto University (京都大学)
1998-07-23
http://hdl.handle.net/2433/182245
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
氏
名
おお
大
つか
塚
士
とし
俊
ゆき
之
学 位 (専 攻 分 野 )
博
学 位 記 番 号
医
学 位 授 与 の 日付
平 成 1
0年 7 月 23 日
学位 授 与 の要件
学 位 規 則 第 4 条 第 1項 該 当
研 究 科 ・専 攻
医 学 研 究 科 脳 統 御 医 科 学 系 専 攻
学位 論 文 題 目
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博
(
医
学)
2040 号
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神 経 前 駆 細 胞 不 死 化 細 胞 株 HC2
S2の神 経 分 化 にお け るba
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x型 転 写 因子 の発 現 制御 に関す る研 究 )
(
主査)
論 文 調 査 委 員
教 授 野 田
論
亮
文
内
教 授 中 西 重 忠
容
の
要
教 授 橋 本 信 夫
旨
中枢神経 由来 の不死化細胞株 HC2S2の神経-の分化過程 にお ける各種 因子 の発現 を解析 し,神経分化 にお ける経時的
な遺伝子発現及びその制御 に関 して考察 した。
HC2S2細胞 はテ トラサイ ク リンによ りⅤmycの発現が抑制 され る レ トロウイル スを用いて成熟 ラッ トの神経前駆細胞 を
不死化 した ものであるが,テ トラサイ ク リン投与 によ り神経特異的因子 の発現及び神経ネ ッ トワー ク形成 を伴 う神経最終分
化 を誘導す ることが可能である。 この系 を用いて神経発生分化 に重要 なba
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x(
bHLH)型転写因子 の発現
を中心に解析 した。
bHLH型転写因子 は細胞系譜 の決定や最終分化 において中心的役割 を担 ってい ることが次第 に解 明 されてきてい る。近年
シ ョウジ ョウバェの神経発生 を制御 してい るbHLH型転写因子 の晴乳類 でのホモ ログがい くつか発見 され解析 されてい る。
しか しなが ら,晴乳類 の中枢神経系 における神経前駆細胞 か ら成熟神経細胞-の最終分化過程 を制御す る分子機構 には不 明
な点が多い。
今 回No
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tに よ り発 現 を検討 した 9種 の神 経 特異 的bHLH型 転 写 因子 の うち, MASHl1, Ne
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D, Ne
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D-
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r(
NDRF)及びHESl1mRNAの発現 がHC2S2細胞 の分化過程 を通 じて認 め られた。 To
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alRNAを用いた
2,ne
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n,HES-3及びHES-5の発現 は認 めなかった。
解析 ではMASH-1,MATH・
mycの抑制 に
テ トラサイ ク リン投与後の分化過程 での経時的変化 を見 る と,神経分化抑制因子 であるHES-1mRNAはⅤ伴 い一過性 に増加 し,神経最終分化 に伴い再び減少 した。Ⅴmycに よる転写抑制 のた めのc
o
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uss
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que
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eがHES-1転
写開始領域 に存在す ることか ら,未分化 なHC2S2細胞 においてはHES-1mRNAの発現がⅤ一
mycによ り抑 え られてお り,
その抑制解除によ り発現が誘導 された可能性 がある。
MASH-1mRNAは分裂増殖 中のHC2S2細胞 において著明 に発現 し,免疫組織化 学 に よ り細胞核 内に蛋 白発現 を認 め
たが,MASH-rmRNAは 3日後 よ り発現が減少 し,MASH-1蛋 白も 5日後 には殆 ど全細胞 で発現が減弱 していた.
Ne
ur
o
Dは神経最終分化 の開始 に,NDRFは一部成熟神経細胞 にも発現 しその形質 の維持 に関与す る と考 え られてい る。
この系では分裂増殖 中のHC2S2細胞 にもNe
ur
o
D,NDRF mRNAの発現 を認 め,その発現 は少 な くともテ トラサイ ク リ
ン投与 5日後 まで減少せず持続 した。 Ne
ur
o
D, NDRFmRNAはMASH11と対照的 に最終分化 を遂 げた神経細胞 に も発現
してお り,i
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ivoにおいてMASH-1よ りさらに分化 の進 んだ段階で発現が見 られ る事実 に一致す るO
これ らの結果 よ りHC2
S2
細胞 が成熟 ニ ュー ロンに神経最終分化 を遂 げるためにはHES11及 びMASH-1の発現が抑 え ら
ur
o
D及びNDRFが最終分化 を制御す る過程 に関与 してい る可能性 が示唆 された。 また,HC2
S2
細胞 は
れ る必要があ り,Ne
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既 に神経 に運命決定 されてい ると考 え られ ,Ⅴmycが これ ら神経特異的bas
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x型転写因子 の機能を制御 し
myc
発現が一旦抑制 され る と, これ ら神経特異的転写因子
て最終分化 のプ ログラムを抑制 してい る可能性が示唆 された。Ⅴによる最終分化のプ ログラムが,神経栄養 因子等の細胞外因子の関与な しに速やかに進行す ると考えられ る。
論
文
審
査
の 結
果
の
要
旨
中枢神経前駆細胞 由来の不死化細胞株 HC2S2細胞 はテ トラサイク リン投与によ りⅤmycの発現を抑制す ることで神経特
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x異的因子の発現 を伴 う神経最終分化 を誘導す ることが可能である。 この分化過程 における経時的な神経特異的ba
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x(
bHLH)型転写因子の発現 を解析 した。
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tに よ り発 現 を検討 した 9種 の神 経 特 異 的bHLH型 転 写 因子 の うち, MASH-1, Ne
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D, Ne
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r(
NDRF)及びHESl
1mRNAの発現がHC2S2細胞の分化過程 を通 じて認 め られた.テ トラサイ ク リン投与
mycの抑制に伴い一過性に増加 し,神経最終分化 に伴い再び減少 した。Vmycによる転写抑制c
o
ns
e
後,HES-1mRNAはVns
us
配列がHES・1転写開始領域 に存在す ることか ら,Ⅴ一
myc
の抑制解除によ り発現が誘導 された可能性がある。
MASH-1 mRNAは分裂増殖 中のHC2
S2
細胞 において著明な発現 を認 めたが, 3日後 よ り発現が減少 した.MASH-1が
神経特異的因子に先行 して発現 し,神経特異的因子の発現 を促進す る分化因子 として働 き,神経最終分化後 に減少す ること
を示唆 している。
Ne
ur
o
D,NDRF mRNAは分裂増殖 中のHC2S2細胞 にも発現を認 め,その発現は少 な くともテ トラサイク リン投与 5
日後まで減少せず持続 した。
これ らの結果 よ りHC2S2細胞か成熟ニュー ロンに神経最終分化 を遂 げるためにはHES・1及びMASH-1の発現が抑 え
ur
o
D及びNDRFが最終分化 を制御す る過程 に関与 している可能性が示唆 された。
られ る必要があ り,Ne
以上の研究は噛乳類 中枢神経分化過程の解明に寄与す るところが.
多い。
したがって,本論文は博士 (
医学)の学位論文 として価値 あるもの と認 める。
0年 4月1
4日実施 の論文内容 とそれ に関連 した試問を受 け,合格 と認 め られたものであ
なお,本学位授与 申請者 は,平成 1
る。
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