契約の経済学2 渡邊直樹 筑波大学システム情報系 April 24, 2014 教材等入手先: http://infoshako.sk.tsukuba.ac.jp/~naoki50/index_j.html 1 基礎数学:不等号制約下の最大化問題 準備:X(⊂ Rn ) に含まれる任意の2点 x = (x1 , x2 , . . . , xn ),x′ = (x′1 , x′2 , . . . , x′n ) に ついて考える.t ∈ [0, 1] に対して xt = (1 − t)x + tx′ と定義する.以下では X 上で定 義される関数 u について,本講義において用いる性質の幾つかをまとめる. • x ≤ x′ (i.e., xi ≤ x′i ∀i)の時,関数 u が u(x) ≤ u(x′ ) を満たす時,u は単調非 減少関数であると言う. (x < x′ (i.e., xi < xi ∀i)の時,関数 u が u(x) < u(x′ ) を満たす時,u は単調増加関数であると言う. ) • 関数 u が u(xt ) ≥ (1 − t)u(x) + tu(x′ ) を満たす時,u は凹関数であるという. • 関数 u が u(xt ) ≥ min{u(x), u(x′ )} を満たす時,u は準凹関数であるという. 単調非減少関数 u が凹関数ならば,u は準凹関数でもある.その逆は一般には 成り立たない. (例:u = xy .準凹だが凹関数ではない. ) 証明:関数 u は単調非減少なので,x ≤ x′ の時には,min{u(x), u(x′ )} = u(x) である.よって,凹関数の定義より, u(xt ) ≥ (1 − t)u(x) + tu(x′ ) ≥ (1 − t)u(x) + tu(x) = u(x). □ • 標準的形式: (本講義では f (x1 , . . . , xn ) は準凹関数であるとする. ) max (xi )i=1,...,n f (x1 , . . . , xn ) s.t. g 1 (x1 , . . . , xn ) ≤ 0 .. . g m (x1 , . . . , xn ) ≤ 0 1 (1) 最小化問題であれば,−f (x1 , . . . , xn ) を最大化すればよい. • 解法の手順:クーン・タッカーの定理 1. ラグランジュ関数(Lagrangean)をつくる. L = f (x1 , . . . , xn ) − m ∑ λj g j (x1 , . . . , xn ) j=1 λj はラグランジュ乗数(Lagrange multiplier)とよばれる.制約式におけ る不等号の向きとラグランジュ関数 L における f (x1 , . . . , xn ) の後のマイ ナスが対応していることに注意. 2. 1階の条件を設定する. ∂L = 0 ∀i = 1, . . . n ∂xi ∂L ∂L ≥ 0, λj ≥ 0, λj j = 0 ∀j = 1, . . . m j ∂λ ∂λ 3. 各 j について,λj > 0 と λj = 0 に場合分けして、1 階の条件を満たす x1 , . . . , xn を見つける. • 点 x = (x1 , . . . , xn ) ∈ X が全ての制約を満たす時,その点 x は実行可能である という. • ある点 x = (x1 , . . . , xn ) ∈ X において,制約 g j (x) ≥ 0 が等号で成り立つなら ば,その制約は点 x において有効(binding)であるという. • 本講義では2階の条件が問題となる場合は取り扱わない.適切な条件を考えて みよ(練習問題).hint:目的関数 f (x1 , . . . , xn ) は準凹関数であると仮定して いるので,各 j について g j (x1 , . . . , xn ) に適切な仮定を設ければよい. • 全ての j = 1, . . . , m に対して g j (x0 ) < 0 となるような x0 ∈ X が存在すると仮 定する. ・ ・ ・制約想定(constraint qualification)の一つであるスレーターの条件 (Slater condition). ∂L = 0 の同時成立を排除していない.ただし、簡単化の ∂λj ため,本講義ではどちらか一方しか成り立たないような関数のみを取り扱う. ・ ・ ・ 強い意味での相補性条件(strong complementary slackness condition)の仮定. • 上記 2. では λj = 0 と 2
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