微積分 II 2014 30 11 2 変数関数の合成関数の微分 本節では 2 変数関数の合成関数の微分について考えるが,まず 1 変数関 数について復習しよう.問題となっているのは 3 つの変数 x, y, z であり,y は独立変数 x から関数 f によって決定される従属変数である.すなわち, y = f (x) と書ける.さらに,z は y を独立変数と考え関数 g により決定され る従属変数である.従って,z = g(y) と書ける.このような状況では変数 x の値が a と定まると,y の値は f (a) と定まり,引続き z の値は g(f (a)) と定 まる.これを図示すると x = a 7→ y = f (a) 7→ z = g(f (a)) となる.このように変数 y を仲介にして x が a と決まると z の値が g(f (a)) と決まるので,z は x に従属する変数と考えることができる.式で書けば z = g(f (x)). この x に z を対応させる関数を f と g の合成関数といい,g ◦ f と表わすの であった.即ち, z = (g ◦ f )(x) = g(f (x)). この合成関数 g ◦ f に対し,x = a における微分係数はどのようにして求まる かを春学期には勉強した.即ち,x を a から a + ∆x に変化させたときに y は f (a) から f (a + ∆x) に変化し,それがさらに,z の変化を引き起こし,z は g(f (a)) から g(f (a + ∆x)) に変化する.従って,∆y = f (a + ∆x) − f (a), ∆z = g(f (a + ∆x)) − g(f (a)) と書くことができる.これらの関係を関数 y = f (x) と z = g(y) の微分式を使って書くと, ∆z ≈ g ′ (f (a))∆y ′ ∆y ≈ f (a)∆x (55) (56) (57) となる.ここで後者を前者に代入すると, ∆z ≈ g ′ (f (a))f ′ (a)∆x (58) 微積分 II 2014 31 となり,合成関数 g ◦ f の a における微分係数は,g の f (a) における微分係数 と f の a における微分係数の積として求めることができるのであった.即ち, (g ◦ f )′ (a) = g ′ (f (a))f ′ (a) が成立した.以上が復習. さて,今度は問題となっているのは 4 つの変数 t, x, y, z としよう.独立変 数 t よりその従属変数である x と y がそれぞれ別々の規則によって定まり, さらに,変数 x と y を独立変数とする 2 変数関数によって従属変数 z が定ま るという状況を考えよう.即ち,式で書くと x = f (t), y = g(t), z = h(x, y) という状況を考える.このとき,t の値が定まると,x は f (t),y は g(t) に定 まり,それから z は h(f (t), g(t)) に定まるので,z は t の従属変数となってい る.この t から z を定める関数を l と書くと, z = l(t) = h(f (t), g(t)) と表記できる.この l を,f, g と h の合成関数といい,h ◦ (f, g) と表記する. この合成関数 l = h ◦ (f, g) は 1 変数関数であるが,t = a における微分係数 はどのように表現できるだろうか. t を a から a + ∆t に変化させたとき,x は f (a) から f (a + ∆t) に変化する ので,∆x = f (a + ∆t) − f (a) であり,同様にして,y は g(a) から g(a + ∆t) に変化するので,∆y = g(a + ∆t) − g(a) である.このとき,z は 2 変数関 数 h を介して h(f (a), g(a)) から h(f (a + ∆t), g(a + ∆t)) に変化するので, ∆z = h(f (a + ∆t), g(a + ∆t)) − h(f (a), g(a)) となる.ここで,t = a にお ける f と g の,そして,(x, y) = (f (a), g(a)) における h の微分式を書くと, ∆x ≈ f ′ (a)∆t ′ (59) ∆y ≈ g (a)∆t (60) ∆z ≈ hx (f (a), g(a))∆x + hy (f (a), g(a))∆y (61) となる.∆x, ∆y の式を ∆z の式に代入すると, ( ) ∆z ≈ hx (f (a), g(a))f ′ (a) + hy (f (a), g(a))g ′ (a) ∆t (62) 微積分 II 2014 32 従って, z ′ (a) = hx (f (a), g(a))f ′ (a) + hy (f (a), g(a))g ′ (a) をうる.導関数を問題にするのならば,a を t に変えて, z ′ (t) = hx (f (t), g(t))f ′ (t) + hy (f (t), g(t))g ′ (t) となる.別の表記をとるならば, dz ∂z dx ∂z dy = + dt ∂x dt ∂y dt この表記では独立変数を表示していない.丁寧に明示すると, ∂z dx ∂z dy dz (t) = (x, y) (t) + (x, y) (t), dt ∂x dt ∂y dt x = f (t), y = g(t) となる.以上の考察をまとめて定理の形にしておこう. 定理 4 [合成関数の微分] 三つの関数 z = h(x, y),x = f (t),y = g(t) の合 成関数 z = (h ◦ (f, g))(t) = h(f (t), g(t)) の導関数は以下の式で与えられる. z ′ (t) = hx (f (t), g(t))f ′ (t) + hy (f (t), g(t))g ′ (t) dz ∂z dx ∂z dy = + dt ∂x dt ∂y dt 問 3 z = log(x2 + y 2 ), x = 2t + 1, y = t(t − 1) のとき,合成関数の微分法 の公式を使う方法と,x と y の式を z の式に代入し合成関数の具体的な形を 求めそれを直接微分する方法の二通りについて z ′ (t) を求めることにより同じ 答になることを確認しなさい. 問 4 z = xy, x = f (t), y = g(t) についての合成関数の微分法を考えること により積の微分法の公式を導きなさい. 問 5 上と同じ方法で商の微分法の公式を導きなさい. 微積分 II 2014 33 演習 7 1. z = x2 + 3xy + y 2 , であるとき, x = 1 + t, y = t2 dz を求めよ. dt dz = (2x + 3y) + 2t(3x + 2y) dt 2. z = x3 − xy 5 , であるとき, x = 3t2 − 1, y = 4 − 5t dz を求めよ. dt dz = 6t(3x2 − y 5 ) + 25xy 4 dt 3. z = x2 + y 2 , であるとき, x = 2t, y = log t dz を求めよ. dt dz 2y = 4x + dt t 4. f (x, y) = x2 − y 2 , であるとき, x = 4t2 , y = 1 − 3t df を求めよ. dt df = 16tx + 6y dt 5. f (x, y) = xy 2 − x3 , であるとき, x = e−t , y = t2 df を求めよ. dt df = (3x2 − y 2 )e−t + 4txy dt 微積分 II 2014 34 6. f (x, y) = x/y, であるとき, x = log t, y=t df を求めよ. dt df 1 x = − dt ty y 2
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