求積法 (つづき) 2 1 階の線形微分方程式 2.3 1 次の微分方程式 y 0 + P (x)y = Q(x) (1) を 1 階線形微分方程式 (linear differential equation of first order) という。二つの場合に分けて、解き方を紹介 する。 • Q(x) = 0 のとき、方程式は同次、または斉次 (homogeneous) であるといい、 y 0 + P (x)y = 0 という形になる。これは変数分離形であるから容易に解くことができて、一般解は y(x) = Ce− ∫ P (x) dx C∈R , (2) と表される。 • Q(x) = 0 でないとき、方程式は非同次、または非斉次 (inhomogeneous) であるという。この場合は、方程 式を解くためにまず Q(x) = 0 とした同次の方程式を解く。次に、上で求まった一般解 (2) の積分定数 C を x の関数とみて、y(x) が方程式 (1) の解になるように C(x) の具体的な形を決める。つまり、(2) の定数部 分を x の関数で置き換えた ∫ y(x) = C(x)e− P (x) dx というものをもとの方程式 (1) に代入して、C(x) を求める。解であるためには y 0 (x) = C 0 (x)e− ∫ P (x) dx + C(x)(−P (x))e− ∫ P (x) dx = −P (x)y(x) + Q(x) が成り立たなければならない。y(x) に解の形を入れると、 C 0 (x)e− ∫ P (x) dx + C(x)(−P (x))e− ∫ P (x) dx が得られる。従って、 C 0 (x) = Q(x)e ∫ = −P (x)C(x)e− ∫ P (x) dx + Q(x) P (x) dx という C に対する方程式を得る。これを積分し、 ∫ ∫ C(x) = Q(x)e P (x) dx + C˜ (2) に代入すると、 y(x) = e− ∫ P (x) dx {∫ ∫ Q(x)e P (x) dx + C˜ } が (1) の解になる。以上の解法を定数変化法 (method of variation of constants) と呼ぶ。 例. y 0 = −y cos x + e− sin x • まず、同次方程式 y 0 = −y cos x を解く。 ∫ ∫ dy = − cos x dx y log |y| = − sin x + C1 y(x) = 1 Ce− sin x • 定数変化法を用いて、解を次の形で求める: y(x) = C(x)e− sin x (3) この微分は y 0 (x) = C 0 (x)e− sin x − C(x) cos xe− sin x であるので、方程式に y と y 0 を代入すれば、 C 0 (x)e− sin x − C(x) cos xe− sin x = −C(x) cos xe− sin x + e− sin x ˜ がわかる。これ という条件になる。これを整理すると、C 0 (x) = 1 という条件に帰着され、C(x) = x + C を (3) で使うと、微分方程式の一般解が得られる: ˜ y(x) = e− sin x (x + C), 2.4 C˜ ∈ R 2 階定数係数線形微分方程式 y 00 + py 0 + qy = r(x) (4) という形の方程式を扱う。ただし、ここでは p, q は定数で r は関数である。 2.4.1 同次方程式 1 階方程式と同様に、最初は同次方程式 y 00 + py 0 + qy = 0 (5) を解く。ここで、y(x) = eλx と置いてみよう。 y 00 + py 0 + qy = eλx (λ2 + pλ + q) を得る。つまり、λ が λ2 + pλ + q = 0 (6) を満たせば、y(x) = eλx は (5) の解になる。方程式 (6) を微分方程式 (5) の特性方程式 (characteristic equation) とよぶ。特性方程式は一般に2つの解 λ1 , λ2 をもつ。つまり、y1 (x) = eλ1 x と y2 (x) = eλ2 x という2つの独立な 解を得る。 そこで、次の重ね合わせの原理に注目する。つまり、y(x) が (5) の解であれば、その定数倍 Cy(x) も解である。 また、y1 (x) と y2 (x) が (5) の2つの解であれば、y1 (x) + y2 (x) も解になる。より一般に、y1 (x), y2 (x) が (5) の 解であれば、その任意の 1 次結合 C1 y1 (x) + C2 y2 (x) も (5) の解になる。 さらに、(5) のすべての解を C1 y1 (x) + C2 y2 (x) の形で表されるということが証明できる。そういう意味では、 y1 (x), y2 (x) はすべての一般解が成すベクトル空間の基底である。基底を与える解の組を基本解 (fundamental solution) という。 注: 2 階定数係数線形方程式の場合、基本解が2つあって、一般解の空間は 2 次元の空間であるが、一般に m 階定数係数線形方程式を考えた場合、解空間は m 次元のもので、m 個の独立な基本解が存在することになる。 解の公式 以上の考察から、方程式 (5) の解の公式を得る。(5) の一般解は次のように与えられる: 1. p2 − 4q > 0 のとき、2 次方程式 (6) が2つの異なる実数の解 λ1 , λ2 をもつので、一般解は y(x) = C1 eλ1 x + C2 eλ2 x となる。 2 (7) 2. p2 − 4q < 0 のとき、(6) の解を α ± iβ (互いに共役な複素数)とすると、一般解は y(x) = eαx (C1 cos βx + C2 sin βx) (8) である。 (この形は (e(α+iβ)x + e(α−iβ)x )/2 と (e(α+iβ)x − e(α−iβ)x )/2i という二つの解の線形結合として得 られる。) 3. p2 − 4q = 0 のとき、(6) の重解を λ = −p/2 とすると、 y(x) = eλx (C1 x + C2 ) (9) 例. 単振動の方程式 y 00 + ω 2 y = 0, ω>0 の一般解を実数値関数として求める。 特性方程式は λ2 + ω 2 = 0 であり、この解は ±iω である。従って、方程式の2つの解を次のように書ける: y1 (x) = eiωx = cos ωx + i sin ωx y2 (x) = e−iωx = cos ωx − i sin ωx しかし、方程式が実数範囲で与えられているので、解も実数値関数が望ましい。そこで、上の二つの関数の任意 の 1 次結合が解になるので、次の関数も方程式の解であることに気づく。 z1 (x) = z2 (x) = 1 {y1 (x) + y2 (x)} = cos ωx 2 1 {y1 (x) − y2 (x)} = sin ωx 2i 一般解はその線形結合 y(x) = C1 cos ωx + C2 sin ωx で与えられる。 例. 微分方程式 y 00 + 3y 0 + 2y = 0 の一般解を求める。 特性方程式は λ2 + 3λ + 2 = 0 であり、これは (λ + 1)(λ + 2) = 0 と因数分解されるので、λ1 = −1, λ2 = −2 が根である。一般解は eλ1 x と eλ2 x の 1 次結合 y(x) = C1 e−x + C2 e−2x で与えられる。 2.4.2 非同次方程式 微分方程式 (4) において、r(x) 6= 0 の場合について考える。(4) の一般解を y(x) とし、(4) の一つの解 y0 (x) が 何らかの方法で見つかったとする。そのとき、 z(x) = y(x) − y0 (x) という関数がみたす方程式を導いてみよう。 z 00 + pz 0 + qz = (y 00 + py 0 + qy) − (y000 + py00 + qy0 ) = r(x) − r(x) = 0 3 従って、z が同次 2 階線形微分方程式 z 00 + pz 0 + qz = 0 を満たす。その一般解は計算でき、基本解 y1 (x), y2 (x) の線形結合 z(x) = C1 y1 (x) + C2 y2 (x) で与えられる。よって、(4) の一般解は y(x) = C1 y1 (x) + C2 y2 (x) + y0 (x) となる。すなわち、非同次方程式 (4) の一般解は次の手順で計算できる: 1. 何らかの方法で非同次方程式の一つの解 y0 (x) を計算する(これを特殊解という) 2. r(x) = 0 とおいた同次方程式の一般解 C1 y1 (x) + C2 y2 (x) を求める 3. 一般解は y(x) = C1 y1 (x) + C2 y2 (x) + y0 (x) となる 特殊解を求める一般的な方法はないが、計算法が知られている r(x) の特別な形はある。例えば、 • r(x) = a = 定数 のとき、y0 (x) = α = 定数 という形で求めることができる • r(x) = aekx , a, k ∈ R のとき、y0 (x) = Cekx という形で求めることができる • r(x) = ax + b のとき、y0 (x) = αx + β という形で求めることができる • r(x) = ax2 + bx + c のとき、y0 (x) = αx2 + βx + γ という形で求めることができる 例. 微分方程式 y 00 + 3y 0 + 2y = e2x の一般解を求める。 1. 特殊解を計算する。y0 (x) = Ce2x という形で求める。方程式に代入すると、 y000 + 3y00 + 2y0 = 4Ce2x + 6Ce2x + 2Ce2x = 12Ce2x = e2x よって、C = 1/12 と置けば、y0 は解になる。 2. 右辺を 0 にした同次方程式の一般解は C1 e−x + C2 e−2x である(上の例を参照) 3. 一般解は y(x) = C1 e−x + C2 e−2x + 1 2x 12 e となる 4
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