De la réformation du théâtre, 1767 [1743], pp. 329-337.

ルイ
(ルイージ)
・リッコボーニ「劇場の構想とその他の規則」
Louis (Luigi) Riccoboni, «Plan du théâtre et autres règlemens»
De la réformation du théâtre, 1767 [1743], pp. 329-337.
日本語訳 奥香織
Japanese translation by Kaori Oku
都市の費用負担によって、パリの劇場が収容している観客の少なくとも二倍を収容するこ
とができるような、新たな劇場を建てるべきであろう。モデルとしては、もしそれが良いと思
われるなら、メディチ枢機卿が建てさせたフィレンツェの劇場を取り上げることができるだろ
う。それは、枢機卿が、性別を異にする観客がそれぞれ別個に着席することを望んだ劇場で
ある1。この劇場は五層構造のボックス席を持つだろう。一層目から四層目は通常の大劇場
の五階、四階、三階、二階席にあたるものであるが、
[最も下にある]五層目はヴェネツィア
で「レ・ド・ショセ」
(地上階)と呼ばれるものである。なぜなら、この席は第一(二階)ボック
ス席の下にあるからであり、それはイタリアの諸劇場において平土間の周りにあって平土間
全体を包み込むような席である。第一(二階)ボックス席は貴族、第二(三階)ボックス席は
ブルジョワジーに向けられ、四階、五階席は庶民およびかつて平土間にいた人々のための席
になるだろう。これと同様の配置によって、二つの利点を引き出すことができよう。一つは、
平土間[17-18世紀の一階立見席]の観客の気ままな行動に頻繁に悩まされていた紳士たち
が、平土間からもっと遠ざかれるであろうということ、もう一つは、暴動者たちを、もっと容易
に、かつ騒ぎを起こすことなく捕まえられるであろうということである。舞台上に長椅子や
椅子が置かれることも二度となくなるだろう。誰も立っていることはなくなる。こうした点にこ
そ、上演にとって多くの不都合があるのだから。観客は決してオーケストラボックスに立ち入
らず、そこには楽団員だけが迎え入れられることになる。平土間は、オーケストラボックスか
ら客席奥まで階段状に上がっていくことになり、とても快適な、全ての席のうちでも最良の
席となるだろう。それは「レ・ド・ショセ」のボックス席と同じくらいよいものであり、やがて紳
士・淑女のかたがたは第一ボックス席よりもこの席を好むようになるだろう。ボックス席が五
層構造であるにもかかわらず、劇場の高さは現在の劇場の高さを超えることはないだろう。
この劇場は、劇団の男優と女優たちだけでなく、引退の許可を得た俳優たちをも住まわせ
ることができる建物の一部をなすことになる。この建物は、さらに会議のための部屋も備え
ている。要するに、劇場と俳優たちの仕事に必要な全ての場所を備えているのである。免税
を享受する店が並ぶ中庭もある。
この改革劇場を建てれば、自らの意志で引退した、あるいは解雇された旧劇場の女優た
1 フィレンツェにて1689年に出版された Delle poesie dramatiche di Giovann Andrea Monigliaの序文、第一巻、13頁を
参照。
早稲田大学「新しい演劇人<ドラマトゥルク>養成プログラム 未来のアートマネジメントに向けて」
(平成25年度 文化庁 大学を活用した文化芸術推進事業)
1
ちに妥当な生活費を与えないことは不当なことになるだろう。女優たちは、共同体の中に、あ
るいはむしろ、彼女たちが選ぶ共同体の中に、生活するのに十分な年金[手当]とともに、し
かるべく位置づけられる。俳優たちもまた同様に位置づけられ、年金を受けとる。そして、こ
の一時的な年金に必要な資金、時間の経過後の建物の維持と劇場の修理に必要な資金に
ついては、国の財源(ロトリーによる収益)のうちに見出されるか、あるいは、行政官によっ
て庶民への負担が少なくなるように考慮された別の種の税金、あるいは引き上げることがも
っと容易な種類の税金に見出されよう。
この改革劇場の俳優と女優たちは、既に述べたようなかたちで住み込み、それぞれが、各
自の仕事に見合った年金を享受するであろう。彼らはその年金と宿泊場所を、引退後も保持
するだろう。しかしながら、当然、彼らが仕事に従事しているときは年金はより多く、引退後
は少なくなる。同様に、事故や病気によって俳優のうちの誰かが働けない状態になったとき
は、予め定められた時間を働いた場合と同じように年金と住まいが与えられる。
改革劇場が開場した一年後には、地方の俳優たちも同様の改革に従わなければならなく
なる。この職業[俳優業]に従事し続けたいと望む者たちは、すべての点において首都の劇
場に従うよう留意しなければならない。首都の劇場はそこで採用された全ての戯曲の写し
を、新旧を問わず、使用が終わった都度、彼らに提供することになる。 劇場が人材不足にならないように、
ほとんど当てにすべきではない地方の俳優たち、首都
[パリ]
の子どもたち以外に、
6人くらいの男子、
それと同数の女子を改革劇場のために育て、
教
育するのが賢明となるだろう。
元女優のうちの誰かと元男優のうちの誰かが、
別々の住まいにお
いて子どもたちを育成する。
子どもたちには同時に宗教と信心の原則を教え、
予期せずしてある
年齢になってから演劇に必要な才能がないと分かった場合、
あるいは劇場で演じるこが無理で
あるような欠陥が彼らに生じた場合のために、
資金を得るための職も身につけさせる。
これら二
つの場合においては、
彼らが受けたはずである良き教育、
ならびに彼らに与えられる救済の措
置によって、
彼らが劇場とは別の施設を見つけることを可能にする。
君主あるいは上院が新劇場の会計に相応の額の資金を繰り入れることは、欠くべからざる
必要性にもとづくことであるように思われる。
この資金は、
元俳優たちから、
舞台装置、
道具置き
場、
道具など、
その後継者にとって有益となる全てのものを買いとることに役立つだろう。
その一
方で、
パリ市は旧劇団の財産を買いとることになる。個々人の衣装の代金は新劇場の資金から
支払われる。旧劇団から買いとるものは全て現金で支払われるのが適切である。引退する俳
優たちも彼らの後を継ぐ俳優たちも、
それを必要とすることはなく、
また新たな道具置き場に必
要なものは全て見つけられるのだから、
なおのことそうすべきである。
新劇場の建設とその良き秩序のために結ばれる全ての取りきめについて、
これ以上詳細に
踏み込むことは不要であると思われる。
これらの取りきめは、
この構想が君主によって承認され
たならば、
国務会議の賢明な人々の目を逃れることはないであろう。
早稲田大学「新しい演劇人<ドラマトゥルク>養成プログラム 未来のアートマネジメントに向けて」
(平成25年度 文化庁 大学を活用した文化芸術推進事業)
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