数理科学特論 B2 §1 ベクトルの内積と外積 1.1. ベクトル解析とは. 関数の基本 y = ax (1変数1次関数) 微分積分 1次とは限らない一般の関数を, 微分係数に より1次関数のように理解 • 1変数関数 y = f (x) • 多変数関数 z = f (x, y) 線形代数 多変数 (ベクトル) から多変数 (ベクトル) への 1次関数 y1 x1 a11 · · · a1n . . . .. = .. .. ... yn xn an1 · · · ann ベクトル解析 多変数 (ベクトル) から多変数 (ベクトル) の一般の関数の微分積分 注. この講義では主に 3 次元ベクトルを扱う. 1.2. ベクトルとスカラー. • ベクトルとは, 変移 (移動), 速度, 力, 加速度のように, 向きと大きさを持った量であり, 有向 線分 (矢印) で表される. • スカラーとは, 質量, 長さ, 時間, 温度のように, 大きさを持つが向きを持たない量, つまり単 なる数のことをいう. 1.3. 空間のベクトル. 原点を O とする xyz-空間の, x 軸, y 軸, z 軸の向きの大きさ 1 のベクトルをそ れぞれ i, j, k で表す. これらを [ ] とよぶ. z ベクトル A の始点を原点, 終点の座標を (Ax , Ay , Az ) とするとき, A =[ ] と表せる. Ax , Ay , Az をそれぞれ A の x 成分, y 成分, z 成分とよぶ. 成分を用いて, さらに A を次のようにも表す. Ax A = Ay あるいは, A = (Ax , Ay , Az ) Az ベクトルにおいては始点のちがいを区別しない. 特に原点 O を始点 とするベクトルのことを [ ] とよぶ. y x ベクトルは A, B, C, . . . , a, b, c, . . . のように必ず太字で表す. 一方, スカラー量は普通の書 体 A, B, C, . . . , a, b, c, . . . で表す. これらを必ず区別すること. 1 2 A = (Ax , Ay , Az ) とする. √ • |A| = A2x + A2y + A2z を A の [ ] とよぶ. • o = (0, 0, 0) を [ ] とよび, スカラーの 0 とは区別する. ] とよぶ. • |A| = 1 であるようなベクトル A を [ ベクトルの和と差 A = (Ax , Ay , Az ), B = (Bx , By , Bz ) とするとき, 和と差が次で定義される. A + B =[ ] ] A − B =[ B B A A ベクトルのスカラー倍 A = (Ax , Ay , Az ) と実数 (スカラー)k に対して次で定義する. kA =[ ] A 例題 1.1. A = (1, −4, −2), B = (2, 5, 1) とする. A+B = A−B = 2A = 1.4. ベクトルの内積. A = (Ax , Ay , Az ), B = (Bx , By , Bz ) とするとき, 内積を次の式で定義する. A · B =[ ] A ̸= o, B ̸= o のとき, A と B のなす角を θ とすると, 次のように表すこともできる. A · B = |A||B| cos θ B A 特に A ̸= o, B ̸= o のとき, A · B = 0 ⇐⇒ [ ] 3 例題 1.2. A = (1, −4, −2), B = (2, 5, 1) とする. A·B = 内積の公式 • A·B =B·A √ • |A| = A · A • (A + B) · C =[ • (kA) · B =[ ] ] =[ ] 1.5. ベクトルの外積. A = (Ax , Ay , Az ), B = (Bx , By , Bz ) とするとき, 外積を次の式で定義する. A × B =[ ( Ay Az , = By Bz i j k = Ax Ay Az Bx By Bz ] ) Az Ax Ax Ay , Bz Bx Bx By (行列式は形式的表現) 例題 1.3. A = (1, −4, −2), B = (2, 5, 1) とする. A×B = A×B 外積の図形的意味 • 大きさ: • 向き: B A 4 外積の公式 • A × B = −B × A =⇒ [ ] • (A + B) × C =[ • (kA) × B =[ ] ] =[ ] 基本ベクトルの外積 成分から計算すると次が成り立つ. • i × i = o, j × j = o, k × k = o • i × j = −j × i = k, j × k = −k × j = i, k × i = −i × k = j これらと公式を用いて, 外積の定義式を導くこともできる. A × B = (Ax i + Ay j + Az k) × (Bx i + By j + Bz k) = · · · = (Ay Bz − Az By )i + (Az Bx − Ax Bz )j + (Ax By − Ay Bx )k ここで定義した演算 A ± B, kA, A · B, A × B はすべて図形的意味を持つことを確認した. すな わち, 座標系や成分表示に寄らず定まる量である. 1.6. 3 重積. A = (Ax , Ay , Az ), B = (Bx , By , Bz ), C = (Cx , Cy , Cz ) とするとき, Ax Ay Az B Bz + Ay Bz Bx + Az Bx By = Bx By Bz A · (B × C) = Ax y Cy Cz Cz Cx Cx Cy Cx Cy Cz で定まる積をスカラー 3 重積とよぶ. 行列式の性質から, 次の公式が分かる. A · (B × C) = B · (C × A) = C · (A × B) また, A × (B × C) はベクトル 3 重積とよばれ, 次が成り立つ. A × (B × C) = ̸ (A × B) × C A × (B × C) = (A · C)B − (A · B)C (A × B) × C = (A · C)B − (B · C)A 上から分かるように, ベクトル 3 重積では結合法則が成り立たないので ( ) を省略できない. 例題 1.4. A = (2, −3, 0), B = (1, 1, −1), C = (3, 0, −1) とするとき, A · (B × C) =
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