2014 年 数学通論 I 演習解答 1 (津川 光太郎) 間違いを見つけたら教えて下さい. 1 (1) 初めに帰納法により 1 ≤ an ≤ 2 を示す. (i)1 ≤ a1 ≤ 2 は明らか. (ii)1 ≤ ak ≤ 2 と仮定すると, √ √ √ 1 + 1 ≤ ak + 1 ≤ 2 + 1 よって 1 ≤ ak+1 ≤ 2. よって (i),(ii) より全ての n について 1 ≤ an ≤ 2. これより {an } は有界. 次に, 単調増加であること ( an+1 ≥ an ) を示す. √ (i)a2 − a1 = 2 − 1 ≥ 0 (ii)ak+1 − ak ≥ 0 と仮定すると, ak+2 − ak+1 = √ ak+1 + 1 − √ ak+1 − ak √ ak + 1 = √ ≥0 ak+1 + 1 + ak + 1 (i),(ii) により全ての n に対して an+1 ≥ an である. √ (2) (1) により {an } は有界な単調列なので極限が存在する. これを α とおき, an+1 = an + 1 にお √ いて (*)n → ∞ とすると α = α + 1 が得られる. これの解で, 1 ≤ α ≤ 2 に当てはまるものは, √ 1+ 5 α= 2 注 1 この問題のように存在を示すのが難しく, それさえ得られればその値は容易に得られるような 場合が良くあります. よって数学では解や最大値などが存在するかどうかや存在する場合にはその個 数に関する議論が主で, 解の値や最大値などの具体的な計算方法はあまり問題とされないことが多い です. 注 2 連続関数の定義は次のセクションで学習する内容ですが, 実は (*) において √ x + 1 が連続関 数であることを用いています. 2 すみません. 「数列 {an } が α に収束する」の定義についてはより厳密に, 「任意の ε > 0 に対 して, ある N ∈ N が存在して, 任意の n ∈ N について, n ≥ N ⇒ |an − α| < ε が成立する.」 や「∀ ε > 0, ∃ N ∈ N s.t. ∀ n ∈ N, n ≥ N ⇒ |an − α| < ε」というように下線部を付け足した方が分 かりやすかったかもしれません. 下線部が省略されていても意味は通じますが, このように付け足し てあると否定文が作りやすいです. 記号を用いた表現で否定文を作る規則である「∀ と ∃ を入れ替え る」, 「A ⇒ B の否定は A かつ not B 」を用いると「数列 {an } が α に収束しない」を意味するのは 「∃ ε > 0, ∀ N ∈ N, ∃ n ∈ N s.t. n ≥ N, |an − α| ≥ ε」となります. 日本語による表現では 「ある ε > 0 が存在して, 任意の N ∈ N に対して, ある n ∈ N で, n ≥ N かつ |an − α| ≥ ε を満たす ものが存在する.」 となります. ただし, これでは文章のつながり方が分かりにくくて少し読みにくいです. より自然な 日本語で書くならば「以下を満たす正の数 ε が存在する. “任意の自然数 N に対して, n ≥ N かつ |an − α| ≥ ε を満たすような自然数 n が存在する.”」 となります. 3 こちらも 2 と同様に「任意の M ∈ R に対して, ある N ∈ N が存在して, 任意の n ∈ N について, n ≥ N ⇒ an > M が成立する.」や「∀ M ∈ R, ∃ N ∈ N s.t. ∀ n ∈ N, n ≥ N ⇒ an > M 」 と下線部を付け足した定義を紹介した方が良かったですね. これらの否定文はそれぞれ 「ある M ∈ R で以下を満たすものが存在する.“任意の N ∈ N に対して, ある n ∈ N が存在して, n ≥ N, an ≤ M が成立する.”」や「∃ M ∈ R, ∀ N ∈ N, ∃ n ∈ N, s.t. n ≥ N, an ≤ M 」となります. a1 + a2 + . . . + an とする. an → α (n → ∞) より, 任意の ε > 0 に対して, ある N1 ∈ n N が存在して, n ≥ N1 ⇒ |an − α| < ε/2 が成立する. ここで M := max{|a1 − α|, · · · , |aN1 − 4 Sn := α|} とおき, N2 ∈ N を 2M N1 /ε < N2 となるよう十分大きくとる. N := max{N1 , N2 } とすると, 任意の n ≥ N に対して, 三角不等式を繰り返し用いると (a − α) + (a − α) + · · · + (a − α) 1 2 n |Sn − α| = n |a1 − α| + · · · + |aN1 − α| |aN1 +1 − α| + · · · + |an − α| ≤ + n n N1 M n − N1 ε ≤ + n n 2 ここで N1 M N1 M N1 M ε ≤ ≤ < , n N N2 2 n−N ≤1 n より |Sn − α| < ε よって題意が示された (上記の 4 か所の下線部に着目せよ). 上記解答を良く読んで理解したうえで, 自分の答を添削して欲しい人は (例えば模範解答と違う答 えだけどこれで正しいか知りたいなど), 答案を作成し来週以降の 講義時間後 に提出して下さい.
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