「解析概論第2中間試験問題解答例– 年 2005 月 12 16

「解析概論第2中間試験問題解答例–2005 年 12 月 16 日」
井上 淳
1 (a) Dirichlet 関数 χQ
χQ (x) =
x ∈ Q ∩ [0, 1],
otherwise
1
0
は [0, 1] 上 Riemann 積分可能ではないことを示せ。
証明:(i) Lebesgue の R-可積分関数の特徴付けを用いる方法。χQ は至る所不連続(実際、x ∈ Q ∩ [0, 1]
をとると、任意の近傍に無理数 y があるので |χQ (x) − χQ (y)| = 1、x ∈ Qc ∩ [0, 1] についても同様)、即ち、
D = {x | o(χQ , x) = 0} とすると D = [0, 1] である。故に、χQ は「Lebesgue の R-可積分関数の特徴付け」に
より R-可積分ではない。
(ii) Darboux の上積分値と下積分値とが異なること。[0, 1] の任意の分割 {Ii}、任意の ξi ∈ Ii に対し
0 = σ(χ Q , {Ii }, {ξi}) =
inf χQ (η)|Ii| ≤ σ(χQ , {Ii }, {ξi}) =
η∈Ii
i
χQ (ξi)|Ii|
i
≤σ
¯ (χQ , {Ii }, {ξi}) =
sup χQ (η)|Ii| =
i
η∈Ii
|Ii | = 1.
i
(b) Dirichlet 関数 χQ は [0, 1] 上 Henstock-Kurzweil 積分可能なることを示し、積分値を求めよ。
解答例:[0, 1] 内の有理数を {rk | k ∈ N} と数え上げる。任意の > 0 に対して
δ (ξ) =
/2k+1
1
if ξ = rk ,
if ξ ∈ (Qc ∩ [0, 1]) ∪ {0}
と定める。P˙ = {(Ii, ξi )} を [0, 1] 上の任意の δ -細仕切りとする。
目印点 ξi ∈ Ii が無理数ならば χQ (ξ i) = 0 だから、そのような目印点を持つ分割からの Riemann 和への寄与
は 0 である。もし目印点 ξi ∈ Ii が有理数 ξi = rk ならば、δ -細仕切りなのだから、Ii ⊂ [rk −δ (rk ), rk +δ (rk )]、
即ち |Ii | ≤ 2δ (rk ) = 2 /2k となる。もし rk が P˙ の相続く分割の目印点ならば、それは端点にあり、この二つ
の重なり合わない被覆の長さは /2k 以下となるから、
n
|σP˙ (χQ , I)| ≤
qk
k=1
故に、f は HK- 積分可能で
1
χ
0 Q
2k
≤ .
= 0 となる。
注意:
『HK- 積分の積分値は測度ゼロでの被積分関数の値にはよらない』という事を用いて、χQ を Q ∩ [0, 1]
上では0と定義し直せば、
1
χ
0 Q
=
1
0
0
= 0 となる。しかし、この主張『——-』を証明するときに、上に述
べた論法を用いるので、殆ど「同義語反復」になるようだ。
2 [x] を x を越えない最大の整数とすると、ϕ(x) = [x] は単調増加関数となる。I = [−1, 1] とする。
f ∈ C(I : R) に対して f ∈ RHK (I ; ϕ) なることを示し、積分値
f dϕ を求めよ。
I
解答例:(i) Riemann-Stieltjes 積分としての計算。分割 {Ij }n
j=0 とし任意の ξj ∈ Ij をとる。[xn ]−[xn−1 ] = 1、
また xk−1 < 0 ≤ xk 、或いは xk−1 ≤ 0 < xk ならば [xk ] − [xk−1 ] = 1、それ以外では [xj ] − [xj−1 ] = 0 だから
n
σ(f, {I j }, {ξj }; [x]) =
f (ξj )([xj ] − [xj−1 ]) = f (ξk )([xk ] − [xk−1 ]) + f(ξn )([1] − [xn−1 ])
j=1
= f(ξk ) + f(ξn ).
1
さて、f は連続だから [0, 1] 上では一様連続である。即ち、任意の > 0 に対して δ > 0 があって
x, y ∈ I, |x − y| ≤ δ =⇒ |f (x) − f (y)| ≤
が成立する。任意の j に対して |Ij | ≤ δ となるようにとると
|σ(f, {I j }, {ξj }; [x]) − (f (0) + f (1))| = |f(ξk ) − f (0) + f (ξn ) − f (1)| ≤ 2 .
(ii) HK 積分としての計算。( > 0 に対し)δ (x) を {0, 1} が目印点になるように取る。例えば、


(−1 ≤ x < 0),
−x/2
δ(x) = 1/2
(x = 0, 1),


min{x/2, (1 − x)/2} (0 < x < 1)
とし、P˙ = {(Ij , ξj )}n
j=1 を任意の δ -細仕切りとする。
● 0 ∈ Ik = [xk−1 , xk ] とすると ξk = 0 でなければならない。実際、ξk − δ(ξk ) ≤ xk−1 ≤ ξk ≤ xk ≤ ξk + δ(ξk )
であるが、もし ξk < 0 ならば 3ξk /2 ≤ xk−1 ≤ 0 ≤ xk ≤ ξk /2 より 0 < ξk となり矛盾、更に ξk > 0 ならば
ξk /2 ≤ xk−1 ≤ 0 ≤ xk ≤ 3ξk /2 より ξk < 0 となり矛盾するからである。
● 1 ∈ In = [xn−1 , xn ] (xn = 1) とすると ξn = 1 でなければならない。実際、もし ξn < 1/2 ならば 1 ≤ 3ξn /2
であり 2/3 ≤ ξn となり矛盾、もし ξn ≥ 1/2 ならば 1 ≤ ξn ≤ 1 となるので ξn = 1.
上の k,n 以外の j に対し [xj ] − [xj−1 ] = 0 だから、
n
f (ξj )([xj ] − [xj−1 ]) = f (ξk )([xk ] − [xk−1 ]) + f (ξn )([xn] − [xn−1 ]) = f (0) + f (1).
σ(f; ϕ) =
j=1
注意: > 0 はでる幕がなく、更にこの積分値が確定するためには f(0), f (1) が有限確定値をもつ [−1, 1]
上の関数 f ならば良い。
正関数 δ の別の取り方もある。例えば、


(−1 ≤ x < 0),
−x/2
δ(x) = 1/2
,
(x = 0, 1),


min{x/2, (1 − x)/2} (0 < x < 1),


 −x/2
δ(x) = 1/2


min{x/2, (1 − x)/2}
(−1 ≤ x < 0),
(x = 0, 1),
(0 < x < 1).
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˙ Q˙ に対して、|σ ˙ (f, I, ϕ)−σ ˙ (f, I, ϕ)| <
f ∈ RHK (I ) ⇐⇒ ある δ があって、任意の δ -細 P 仕切り P,
P
Q
∀ の証明で、『|σP˙ (f, I, ϕ) − σQ˙ (f, I, ϕ)| = |σR˙ (f, I, ϕ) − σS˙ (f, I, ϕ)| < なので σP˙ (f, I, ϕ) は
Cauchy 列だから、…』という様な部分があるのですが、 σP˙ (f, I, ϕ) が Cauchy 列とはどういう事
なのですか?
という質問を感想文に書いた人は、11 月 4 日第 4 回の講義録をもう一度見て下さい!この質問自身はもっとも
なのですが、普通数学者はこのような疑問が起こらないように心がけて説明するものなので、私も老人といえ
ども数学者のつもりなのです。何故、この疑問を書く前に、前の講義録を調べることをしなかったのかが問題
でしょう。多分、講義録をちゃんとは読まなかったし、講義にも出ていなかった可能性が強いのですが、違い
ますか!
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