線形代数

線形代数学演習第二 O クラス(10/24)
担当:柴田 将敬
演習問題 1. 次で定まる R5 の部分空間 W について、次元と一組の基底を求めよ。






 
x1



{


x2 

x1 − 2x2 + x3 + 2x4 + 3x5 = 0
x3 
W = 
∈ R5 ;



2x1 − 4x2 + 3x3 + 3x4 + 8x5 = 0

x4 



x5





演習問題 2. 次のベクトル
 
 
 
 
 
1
1
1
−2
−1
1
2
3
−4
−4

 
 
 
 
a1 = 
3 , a2 =  0  , a3 = −3 , a4 =  1  , a5 =  7 
−1
−2
−1
0
0
の組で生成される R4 の部分空間を
W = ⟨a1 , a2 , a3 , a4 , a5 ⟩
で定める。W の次元と基底を求めよ。
演習問題 3. 次の R4 の二つの部分空間 W1 , W2 に対して、W1 ∩ W2 , W1 + W2 の基底をそ
れぞれ求めよ。
 

 
x
x






y
x
=
y
y
 
 
x+y−z =0
W1 =   ∈ R 4 , W 2 =   ∈ R4 
z = 2w 

y + z − 3w = 0
 z

 z
w
w





.
演習問題 4. 次の R4 の二つの部分空間 W1 , W2 に対して、W1 ∩ W2 の基底を求めよ。
     
⟨ 1
2
1 ⟩
 0   2  2
W1 =   ,   ,   ,
−1
−1
1
1
2
3
     
⟨ 0
1
2 ⟩
0 2 2
W2 =   ,   ,   .
2
2
0
1
1
2
1
以下では、簡単のため、全て Rn やその部分空間における説明をしているが、一般の線形空
間を考えても同様である。
■ベクトルの張る空間・基底・次元 RN のベクトル a1 , a2 , . . . , ak の線形結合で表されるもの
全体を、a1 , a2 , . . . , ak の張る(部分)空間 といい、span {a1 , a2 , . . . , ak } や ⟨a1 , a2 , . . . , ak ⟩
などと書く。つまり、
span {a1 , a2 , . . . , ak } = ⟨a1 , a2 , . . . , ak ⟩ = {c1 a1 + · · · + ck ak ; c1 , . . . , ck ∈ R}
である。
線形(部分)空間 W = ⟨a1 , a2 , . . . , ak ⟩ について、a1 , a2 , . . . , ak が一次独立である時、
ベクトルの組 {a1 , a2 , . . . , ak } を W の 基底 という。基底を構成するベクトルの個数を k を
W の 次元 といい、dim W で表す。ここで、次に注意。
• 一つの空間 W について、いろいろな基底が取れる。
• 空間 W が決まれば、次元 dim W は基底の取り方に依らない。
• 次元 dim W は、W のベクトルの一次独立な最大個数となる。つまり、k = dim W の
時、k + 1 個のベクトル a1 , . . . , ak+1 ∈ W を考えると、これらは一次従属となる。
■Rn の部分空間の次元・基底の求め方
W = ⟨a1 , a2 , . . . , ak ⟩ の時、
実線形空間 Rn と、その部分空間 W を考える。
dim W ≤ k
となっている。なぜ等号が成立しないのかというと、a1 , . . . , ak が一次独立でない可能性が
あるからである。このような場合、




a11
a1k
 a21 
 a2k 
 


a1 =  .  , . . . , ak =  . 
.
.
 . 
 . 
an1
ank
を並べて出来る、n 行 k 列の行列の階数が W の次元となる。つまり、

a11
 ..
dim W = rank  .
an1
···
..
.
···

a1k
.. 
. 
ank
である。そして、a1 , . . . , ak の中から、dim W 個の一次独立なベクトルの組を選べば、それ
が、W の基底となる。
2
■部分空間の共通部分と和空間 Rn の 2 つの部分空間 V , W があったとき、共通部分 V ∩ W
はやはり部分空間となる。また、
V + W = {a + b; a ∈ V, b ∈ W }
で定まる V + W を、和空間 と呼ぶ。和空間はやはり部分空間となる。ここで、これらの空
間の次元について、次の等式(次元公式)が成立する。
dim V + dim W = dim(V ∩ W ) + dim(V + W )
これをふまえて、共通部分や和空間の基底を求めてみる。
V = ⟨a1 , . . . , ak ⟩, W = ⟨b1 , . . . , al ⟩ の場合、V ∩ W の元 c は、
c = x1 a1 + · · · + xk ak = y1 b1 + · · · + yl bl
と表されるようなもの全体となる。特に、後ろ側の等式が x1 , . . . , xk , y1 , . . . , yl を未知数と
する方程式になっているので、
(i) 方程式 x1 a1 + · · · + xk ak = y1 b1 + · · · + yl bl を解く。
(ii) 解を c = x1 a1 + · · · + xk ak に代入して整理すれば、c が全て表される。
という仕組みになっている。求めるものは c であることを忘れてはならない。
和空間については、
V + W = ⟨a1 , . . . , ak , b1 , . . . , bl ⟩
なので、成分を並べた行列の階数が dim(V + W ) となり、{a1 , . . . , ak , b1 , . . . , bl } から
dim(V + W ) 個の一次独立なベクトルを選べば良い。
しかし、共通部分を求めた後であれば、先ほどの次元公式より、dim(V + W ) = dim V +
dim W − dim(V ∩ W ) であるから、和空間 V + W の次元が求まるので、階数の計算をしな
くても、dim(V + W ) 個の一次独立なベクトルを選べれば、それで良い。
次に V = {x ∈ Rn ; Ax = 0}, W = {x ∈ Rn ; Bx = 0} と表されている場合を考えてみ
る。方程式 Ax = 0 を解けば V の基底が求まり、方程式 Bx = 0 を解けば W の基底が求
まる。共通部分については、先ほどと同様にしても求まるが、
A と B を縦に並べて、方程式
( )
A
B
x = 0 を解けば、共通部分 V ∩ W の基底が求まる(何故だか考えよ)。あとは、先ほど
と同様に、V と W の基底を並べて、階数分だけ一次独立なベクトルを取り出せば、V + W
の基底が求まる。
3