2次元近似サンプリング定理に向けて

2次元近似サンプリング定理に向けて
不規則配置の場合
岡田 正已
(首都大学東京)∗
1. 研究の背景
1次元の整数点(規則格子)全体で観測された値から、元々の帯域制限関数を忠実
に再現する定理が所謂シャノンのサンプリング定理である。帯域制限条件なしでも近
似的に再現する方法の研究もある。ところが、多次元で、しかも、不規則配置の無限
集合で観測された値からの再現方法については、あまり研究がなされていないように
思われる。本講演では、この再現問題にむけて、[1] による方法を基にして、一応の理
解と成果が得られたと思うので、それを発表させて頂く。Prof. G.Kerkyacharian と,
同僚の村上 弘 先生には、stimulating discussions でお世話になったことを記して感謝
します。
2. 記号と定義, 目標
簡単のため2次元のユークリッド空間 R2 において、内部には集積しない可算無限
の離散集合 X = {xk ∈ R2 | k = 0, 1, · · ·} を考える。画像の濃度などを表す、R2 上の
2変数関数 f が未知であるとし、その観測値 {f (xk ) | k = 0, 1, · · ·} が知られていると
する。 このときに、ある正定型関数 φ の平行移動で定まる基底 {φ(x − xk )}∞
k=1 の一
∑
次結合 (無限) 和 S(f, X)(x) = k ak φ(x − xk ) で書ける関数で、X 上では f と同じ値
になるように近似を、つまり補間近似をしようというのである。
3. 考慮すべき問題
まず、等式 S(f, X)(xk ) = f (xk ), k = 0, 1, · · · を満たすように、上のような係数値
{ak | k = 0, 1, · · ·} が求まるのか、そのための X , φ の条件は何かというのが問題であ
る。次に、元々の関数 f が どの程度いい関数と仮定するかが問題である。我々は、し
かるべき滑らかさを持った、ベゾフ空間に属するものとする。最後に、関数 S(f, X) が
f に R2 全体でどれだけ近いのか?という誤差評価を問題とする。
4. positive definite function
φ が正定型関数ならば、与えられた点集合
X が N 個の点からなる有限集合のと
(
)
きには、N 次正方行列 φ(xj − xk ) が正則行列になるので X 上で一意に補間がで
きる。即ち、各 xj で与えられた観測値 f (xj ) に等しい関数 S(f, X) を S(f, X)(x) =
∑
k ak φ(x − xk ) の形で探すことが可能で、連立の線形方程式を解いて未知の数ベクト
ル (ak ) が一意に求まる。そこで φ としては、Bochner の定理により、フーリエ変換 φb
が非負の関数を考えればよい。ここではフーリエ変換像が至る所で真に正であるもの
を考える。関数 φ および、そのフーリエ変換像が滑らか、かつ無限遠で急減少なるも
sin(πx)
x
や sinh(πx)
などがある。他に、そのフーリエ変
のとして、ガウス関数以外に、 sinh(πx)
本研究は科研費 (課題番号:24540184) の助成を受けたものである。
キーワード:Scattered data, Besov space
∗
〒 192-0397 東京都八王子市南大沢 1-1 首都大学東京 理工学研究科
e-mail: [email protected]
換像が、ある任意に与えられた、無限遠での減少度を持つものとして、ベッセルポテ
ンシャル関数があることに注意しておく。以下、そういう正定型関数を φ とする。
5. 無限集合の場合の可解条件
(
点集合 X が無限集合の場合に、その無限次元行列 φ(xj − xk )
の十分条件として次を得た:
)
が可逆であるため
定理: ある正の数 δ があって、R2 の可算無限集合 X に属する任意の相異なる2
b
点 xj , xk について δ ≤ |xj − x
p.d. 関数 φ のフーリエ変換 φ(ξ)
が
( k | とする。そのとき
)
2
2
R で正であれば、無限行列 φ(xj − xk ) は l から それ自身への作用素と考えて可
逆である。しかも、行列の条件数は、φ と δ だけで決まる。
証明のアイデアは、発表時に述べる。
6. ウェイトつきの L2 空間
b
φ(ξ)
が ξ の遠方で α 次の減少度を持つとする。但し、2 < α としておく。L2 (R2 )
に 元の内積よりも強い新たな内積を
∫
(f, g)H =
R2
−1
b
fb(ξ) gb(ξ) (φ(ξ))
dξ
で定め、ヒルベルト空間 H を定義する。元々の関数 f は、これに属するものとする。
特に、φ として、いわゆるベッセルポテンシャル関数を考えれば、H は ベゾフ空間
α/2
B2,2 (R2 ) に一致する。
7. 誤差評価
我々の得た誤差評価は以下のとおりである。
s
定理:H ⊂ Bp,∞
(R2 ) , 2/p < s, 1 < p < ∞ とする。このとき、H に属する関数 f
に対して,
∥f − S(f, X)∥Lp (R2 ) ≤ C(hX )s ∥f ∥H .
但し、hX = supx∈R2 inf j ∥x − xj ∥.
証明には [2] で与えた Z 2 上での誤差評価を用いる。
これによって、ある同程度の密度という以外はランダムに配置された点集合上で観測
値が知られておれば、規則正しく配置された格子上で観測された場合と同じオーダー
のサンプリング補間近似度が得られることが数学的に確認できたわけである。
参考文献
[1] H. Wendland, Scattered Data Approximation, Cambridge U.P., 2005.
[2] St. Jaffard, M. Okada and T. Ueno, Approximate sampling theorem and the order of
smoothness of the Besov space, RIMS Kyoto Univ., B18(2010), 45-56.
[3] 澤野 嘉宏, ベゾフ空間論, 日本評論社, 2011. [4] A.P.Prudnikov, Yu.A.Brychkov and O.I.Marichev, Integrals and Series vol.1, Gordon and
Breach, 1986.