AO-trauma course-Advanced Principles of Fracture Management に

AO-trauma course-Advanced Principles of Fracture Management に参加して
文責 川村 孝一郎
2014 年 2 月 13 日~15 日の 3 日間、横浜で開催された「外傷学に関する集中講義・実習」を目的とする
AO-trauma の Couse Lecture (Advanced)に参加してきました。前回 2010 年 3 月に Principal course に参加時と同様
に新横浜プリンスホテルでの開催です。前回は基礎的なものが多かったのですが、今回は応用編ということで、内容
も高等・参加者も高レベルでした。日本の外傷センター等で活躍されている AO-Faculty の Dr.の皆様、海外からの
AO-Faculty が講師陣となり、各人の症例提示・手術の説明についてのプレゼンを拝
聴しました。年 1 回の開催で、同コースは約 70 名の参加、15 年目以上 Dr.は全体の
15%しかいません。実習パートナーの Dr.も 10 年目の先生で、若い先生たちとの勉
強会でしたが、若い先生といえど経験豊富な先生が多く、外傷学への熱き情熱に最
初は圧倒されてしまいました。
内容は、各部位別の骨折の分類・診断・治療・後療法のレクチャーと、少人数
による Case Discussion、そして肩関節、肘関節、膝関節、足関節周囲骨折に対する
模型による手術実習を 3 日間に分けて実施しました。内容は毎年少しずつ改変され
ているとのこと、また新たな固定器具が汎用されると実習に導入されているとのこと
で し た 。 内 容 は 多 岐 に 渡 わ た り 、 この レ ポ ー ト に 活 気 き れ な いほ ど の 情 報 と
Discussion を得ることができました。今回は各日で最も勉強になった点をいくつか紹
介したいと思います。
第 1 日目
第一日目は AO-Concept の復習と、上肢各部位の骨折についての講義・実習でした。
もっとも勉強になったのが、肘関節周囲骨折の一つである、Terrible Triad すなわち鈎状突起骨折+橈骨頭骨折
(+LCL 損傷)の件です。この損傷は橈骨頭の再建(ORIF or Implant)も大切ですが、鈎状突起の処置が最も重要で
あることを強調されました。骨片自体は Tip 状のものもあれば大骨片なもの
もあるも、大切なのは前方関節包が断裂していることである点、放置すると
屈曲 30~60°で脱臼してしまい不安定性を残存させてしまうということでした。
鈎状突起骨折
と関節包断裂
これは、過去に骨片が小さいことから放置し同様の経験したことが、脳裏に
過りました。橈骨頭の再建の前に前方の関節包修復(骨折の固定よりも)をす
ることが大切であるとのことでした。鈎状突起骨折を診た際は、さらに注意し
なければならないと感じました。
Case Study では、骨折全般の整復操作の件でしたが、当院で当たり前
のように使用している Distractor や Pusher が、むしろ他の施設ではほとんど
装備していないこと、使用経験が無いことに驚きました。また、Dr.Schelkun
(USA)からは、手術前の Planning が非常に大事であることを強調され、かな
らずスケッチを描くようにとのことでした。同席の先生方で、術前スケッチを実践している人は全くいない(私だけ)こと
に、かなり憤慨されており、終盤には何回も念を押すように勧めていました。
実習では PHILOS プレートで、当院でもおなじみのものです。私の同年代の先生方は Delt-Pectral Approach で
行っていますが、若い Dr.はそろって Direct Lateral で施行していることに驚きました。我々年寄は、腋窩神経損傷を恐
れて昔からの方法(今回の実習も Delt-Pectral)でやっていましたが、同席の多くの若い Dr.からは、確かに腋窩神経
を損傷するが、それが臨床上特に問題となったことはないとの意見が大半でした。展開がやり易いとのことで、むしろ
Delt-Pectral は初めてだという Dr.も居ました。私的には TSA で汎用していたアプローチですが、新たなアプローチも
挑戦する必要があるかと思いました
第2日目
主に下肢の大腿骨~下腿骨折の講義がありましたが、特に印象深かったのは、
若年者の大腿骨頸部骨折に対して DHS で整復固定し、経過良好の症例提示でした。
見た感じ GardenII~III のような骨折でしたが、Compression が Hansson’sPin より掛かる
からでしょうか?とりあえず驚きです。
また人工骨頭周囲骨折に対して、Distal Femur Plate をひっくり返して使用している
症例が多く、Implant 周囲には Wiring 等を使用していたが、欧米ではアタッチメントプレ
ートなる、プレートの上からさらにプレートを合わせ、Screw は Trans-cortical に挿入す
るというものでした。
Case Discussion では大腿骨骨幹部骨折で、骨幹部 TypeC や開放骨折について
が印象的で、感染兆候が強い場合の Masquelet 法、骨欠損の強い症例において RIA
(Reaming irrigaton aspiration system)による補填が効果的である点でした。実際 RIA 法をやるには健側大腿骨果部
の髄腔内から吸引しなければならないため、相当必要がなくては実勢できずかつ煩雑ではありますが、液性骨増殖
因子(BMP や BNP など)が豊富で、骨新生に有効であるとのことでした。
実習では上腕骨果部骨折で、わたくしが最も苦手とするところです。海外を含めた多くの先生が肘頭を Chevron
で骨切りをし、背側展開するとのこと、これは TEA とやや展開が異なります。内側は側面、外側は後面にプレートを設
置すること、プレートの長さは両側同じにしないこと(応力集中を防ぐため)、最近は外側も側方に設置するプレートが
あるとのことなど、十分な解説の元に、理論やプレート使用経験も含め、苦手意識がやや薄まった印象でした。この設
置法を 90X90(ナインティーナインティー)と呼ぶようで、ソチ五輪のハーフパイプの技の名称のようでした。
変えるころには新横浜の駅周囲にはうっすら雪化粧。電車は通常通り動いていたため、とりあえず帰宅の途につ
きました。後になり、この選択が誤りであったことを後悔することも知らずに・・・・・・・・。
第3日目
前日より降り続いた雪は止むも、早朝から強風が吹き荒れ、東海道線・小田急線が全線で止まっているという情報が
あり、残雪により車は使えず、とりあえず駅に行こうと AM6:00 には駅で待機していましたが、やはり相模川を列車が
渡れず、AM7:50 にようやく運転再開、結果的には 50 分遅刻してしまいました。朝から実習でしたが、何とか中盤に参
加できました。(疲労困憊でしたが・・・)
講義・Case Discussion では距骨や踵骨骨折、Lisfranc 関節周囲の骨折について再確認させていただきました。
実習では Pilon 骨折のORIFについてのプレート固定を、途中から参加しました。
■最後に。
全体を通じて、通常当院で使用している Distractor や Pusher 等を使用できていることはかなり優位であったことを再
確認させて頂きました。また術前計画でのスケッチも、欧米の専門医ですら実施している訳で、もちろん今後も良き習
慣として、安全に手術を遂行できるために、そして助手や Co-Medical への意図統一という意味でも有意義なことであ
ることを確認できました。今後、ここで学んだことを実施していければ幸いです。
2014 年 2 月