情報数学基礎論演習問題解答

情報数学基礎論 演習問題解答
木村泰紀∗
2014 年 5 月 26 日出題
問題 1. 有界な実数列の全体 X = l∞ (R) = {(xk ) : supk∈N |xk | < ∞} は, x = (xk ) ∈ X に対するノルムを
kxk = supk∈N |xk | と定義すると実バナッハ空間となる. u = (1, 1, 1, . . . ) ∈ X とし, f : X → R を線形連続
作用素とするとき, 次の条件は同値であることを示せ.
(1) kf k = 1 = f (u);
(2) 任意の x = (xk ) ∈ X に対して inf k∈N xk ≤ f (x) ≤ supk∈N xk .
解答
最初に (1) を仮定する. (2) が成り立つことを示すために, 任意の k ∈ N に対して y k ≥ 0 が成り立つよ
うな y = (y k ) ∈ X に対して f (y) ≥ 0 が成り立つことを示す. 任意の k ∈ N に対して y k ≤ supk∈N |y k | = kyk
であることを用いて
f (kyku − y) ≤ kf kkyku − y = kyku − y = supkyk − y k ≤ kyk
k∈N
となる. また
f (kyku − y) = kykf (u) − f (y) = kyk − f (y)
であるから, kyk − f (y) ≤ kyk となり, f (y) ≥ 0 が示された. ここで, x = (xk ) に対し a = inf k∈N xk ,
b = supk∈N xk とし, y = (y k ) = x − au, z = (z k ) = bu − x とすると
y k = xk − a ≥ 0, z k = b − xk ≥ 0
であるから,
0 ≤ f (y) = f (x − au) = f (x) − af (u) = f (x) − a
0 ≤ f (z) = f (bu − x) = bf (u) − f (x) = b − f (x)
となり, a ≤ f (x) ≤ b が得られ, (2) が示された.
次に (2) を仮定すると,
−kxk = − sup |xk | = inf (−|xk |) ≤ inf xk
k∈N
k∈N
k∈N
≤ f (x)
≤ sup xk ≤ sup |xk | = kxk.
k∈N
∗
k∈N
東邦大学理学部情報科学科. http://www.lab2.toho-u.ac.jp/sci/is/kimura/yasunori/
1
よって, |f (x)| ≤ kxk が任意の x ∈ X で成り立つので, kf k ≤ 1 である. 一方, 明らかに inf k∈N 1 =
supk∈N 1 = 1 であることから f (u) = 1 も成り立つ. また kuk = 1 であることから
kf k = sup |f (x)| ≥ |f (u)| = 1
kxk=1
となり, kf k = 1 も示され, (1) が得られた.
問題 2. 有界実数列 {xn } に対するバナッハ極限を LIMn→∞ xn であらわすとする. このとき,
(
)2
LIM xn
n→∞
≤ LIM x2n
n→∞
が成り立つことを示せ.
解答 有界実数列 x = (x1 , x2 , . . . ) に対して LIMn→∞ xn = r とし,
(z1 , z2 , . . . ) = ((x1 − r)2 , (x2 − r)2 , . . . )
とすると, z = (z1 , z2 , . . . ) も有界実数列となる. このとき, 任意の n ∈ N に対して
zn = (xn − r)2 ≥ 0
より,
0 ≤ LIM (xn − r)2
n→∞
= LIM (x2n − 2rxn + r2 )
n→∞
= LIM x2n − 2r LIM xn + LIM r2
n→∞
n→∞
n→∞
= LIM x2n − r2
n→∞
(
)2
= LIM x2n − LIM xn
n→∞
を得る. したがって
(
n→∞
)2
LIM xn
n→∞
≤ LIM x2n .
n→∞
2